プロフィール
大学を卒業以来、一般財団法人日本気象協会で40年近く気象の仕事をさせていただいています。入社当初は台風予測に関わる業務に携わっていました。
2004年頃、新聞社の方から誘われて台風の取材として飛行機に乗って台風の目に入った経験があります。気象予報士としては第1号だと思っています。最近では大学など様々な研究機関で台風の観測をしていますが、私はどちらかというと「台風の中を見たい」という個人的な興味で見てきました。スタジアムのように雲が取り囲んでいて、下の方に台風の目があり海面が見えました。半径約10kmから20km程の台風の目に入ったと思いますが、強い台風ですと目がそれほど大きくなく、だんだん大きくなっていきます。私の入った目は強くて、飛行機で旋回するよりも大きな目だったと記憶しています。
2024年の台風について
2024年は7月の間、台風の発生数が非常に少なかったのですが、8月になって次から次へと台風が発生しました。それには理由がありまして、モンスーンジャイアと呼ばれている台風を生み出す低気圧の渦が南の方にあります。モンスーンジャイアが出来ると、その周辺で次から次へと台風が生み出されます。そのため、今の台風の予測は非常に難しいです。
台風の予報について、個人的には本当によく当たると思っているのですが、2024年8月に発生した台風に関しては、上陸する場所が近畿・東海と予測されていたものが、四国に変わり、さらに九州になってしまう位ブレが大きかったですし、台風の通過速度についても各国の気象モデルを見ても、あっという間に通過する計算結果の国もあれば、場合によっては長い期間影響を与えるような結果を出した国もあり、予測がとても困難だったと思います。
気象災害と交通流の制御
台風が発生した時、新幹線などが計画運休を実施していることは皆さんもご存知だと思います。計画運休を判断する際には私たちが提供している気象情報が使われています。
鉄道の場合は計画運休、道路の場合は事前に通行止めをします。昔は、一定の条件以上の雨が降る、あるいは風が吹いた時に初めて通行止めにしたり、運休にしたりしていましたが、今は予測をフルに使って事前に止める判断をしています。
4、5年前から始めて、今では世間でも常識になっています。そのくらい気象情報が信頼され当たると思われていますし、気象情報でいろんな防災の事前対策が出来るようになっています。
また、物流関係についても台風や大雨の影響を受けています。物流事業の2024年問題があり、時間外労働の上限規制が適用されています。今までは、台風が来ると分かっていても荷物の運搬依頼があればやむを得ず対応していました。特に雪が降った時には、1日から2日間、高速道路上に閉じ込められてしまった事例などもあり、苦労されていました。そこで、物流業者に気象情報の提供をして、場合によっては「早めに荷物を運びましょう」「台風が通過してから荷物を運びましょう」などの判断が出来るような取り組みを広めていきたいなと活動をしているところです。