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防災インタビューVol.229

気象予測と防災~気象データの利活用~

放送月:2024年9月
公開月:2025年3月

平松 信昭 氏

一般財団法人日本気象協会
社会・防災事業部 調査役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

降雪時の交通制御

私は、高速道路に関する仕事に多く携わってきました。例えば、高速道路で雪が降る際に、高速道路の管理をする事務所へ伺い、除雪のタイミングや雪の積雪を予測して通行止めのアドバイスなどを行った経験があります。

東名高速道路の御殿場付近はなかなか雪の難所です。南岸低気圧という言葉を聞いたことがあると思いますが、南岸低気圧は気象予測の中では非常に予測が外れやすい現象です。低気圧そのものが発生予測は外すことはないのですが、雨か雪かの判断が微妙な温度の加減で変わります。雨であれば対策をしなくても良いのですが、ちょっと気温が下がるだけで雪になってしまいます。太平洋側を走るトラックは冬場でもノーマルタイヤが多いので、雪が降ってしまうとちょっとした坂道が登れなくなり、そこで渋滞が発生して高速道路に車が滞留してしまいます。

高速道路に車を滞留させると、トイレの問題や、車のガソリンが無くなってしまうなど大変なことになります。また、車がたくさん滞留していると除雪もできませんので、通行止めにする判断にも繋がります。高速道路に車を滞留させずに、うまく制御するということが非常に大事ですし、物流の確保といかにコントロールさせていくのかが重要だと思っています。そのようなサポートを15年程させていただきました。

今は、どれだけ車が走っているのかというのを、リアルタイムに監視しながら、特に高速道路と一般道ですね。高速道路だけ通行止めにすれば、今度は一般道が溢れてしまいます。なんとなく一般道なら通行止めにしなくてもいいのではないかと思いますが、一般道でも峠道になると周りにお店がないことがあります。そのような場所に車が滞留してしまうと大変なことになってしまいますので、近年では一般道でも事前通行止めを始めました。しかし、まだ理解されていないということもあり、雪が降る時には通過する車両そのものを減らそうということで、マスコミを通じて一生懸命宣伝しています。

最近は、気象庁と国土交通省の方が記者会見を開いて「大雪が降るので首都圏に車で出掛けるのはやめましょう」「トラックの運用をやめましょう」などと呼び掛けていますが、少しでも交通量を減らそうという努力のもとに行動されているということです。

線状降水帯による大雨

線状降水帯という言葉が学術で使われるようになったのはまだ10年程度です。マスコミでも線状降水帯について大雨の大きな原因、集中豪雨の原因であることを一生懸命伝えられています。実は、線状降水帯が発生した際には事前に、気象庁あるいは気象台から大雨に対する気象情報を発表し、注意を呼びかけています。やはり、人が亡くなるような大きな雨の時は必ず線状降水帯が出来ています。

2024年も梅雨期の末期である7月の終わり頃、秋田と山形の県境で大雨が降り、助けに行こうとした警察官の方が乗ったパトカーが流されてしまったという悲しい事件がありました。気象データで見ると、やはり線状降水帯が出来ていたため、そのような大雨になったということが分かりました。線状降水帯が出来た時には、今どこで雨が降っているのかを確認いただいて、特に線状降水帯に含まれる地域の方は、非常に危険な状態になっていることを認識し最大限警戒していただきたいと思います。

「大雨の中、本当に外に出ていった方がいいのか」「屋内に残って2階などに垂直避難をした方がいいのか」とよく聞かれますが、きっちり情報を得て判断しながら身を守る行動をして欲しいと思います。

ハザードマップを使えば、もし浸水したらどれぐらいまで水が来るのかを知ることができます。例えば浸水エリアが3メートルだった場合、もし自宅が2階建て以上だったら、「場合によっては、自分の命を守るためには2階に上がろう。」「1階に大事なものを置いておくと危ないので、2階に持っていこう。」という判断が出来ます。

また、5メートルぐらいの浸水エリアであれば「早めにどこか安全な場所へ避難しよう。」と判断し、近くにマンションがあればそこの方にお願いして、場合によっては避難させていただく、また最近は24時間の施設もありますので、そのような場所を活用することもできます。

今、国が1番力を入れているのは線状降水帯の雨予測です。気象観測の中で「アメダス」というシステムがあるのをご存知だと思いますが、新しいアメダスは、湿度を測ります。空気中にどれだけ水蒸気が含まれているのかを計測し、線状降水帯のシミュレーションに活かしています。また、気象衛星「ひまわり」の次回打ち上げでは、大気に含まれる水蒸気の量を上下方向に計測できることを目指しています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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