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防災コラムVol.59

宅地の安全性を知るには

公開月:2006年3月

大地震で怖いのは住宅だけではない。住宅が建っている「宅地」もチェックしよう。

1000の危険箇所

2004年10月に発生した新潟県中越地震は、「地盤災害」と呼ばれている通り、多くの宅地が被害を受けた。地震直後に住宅などの安全性をチェックする「被災建築物応急危険度判定」は、同じように宅地についても専門家が「被災宅地危険度判定」をする。中越地震では「危険」「要注意」と判定された宅地、またその後の調査で同様に危険と判断された宅地は1000ヵ所を超えた。

阪神・淡路大震災では住宅の倒壊があまりにも多く目立たなかったが、宅地の被害も数多く報告されている。その中で周囲の住宅は無事だったのに、ある「列」の住宅だけが、軒並み宅地ごと被害を受けている箇所があった。

地下水が起こす地滑り

2007年3月の能登半島地震で崩れたがけ

平坦な土地が少ない日本の国土。戦後、郊外の山林部を開発して多くの「ニュータウン」ができた。昭和30年代、造成した「がけ」が集中豪雨などで「がけ崩れ」を起こしたことから「がけ」をなるべく作らないように、また「がけ」は壁できちんと押さえることをうたった宅地造成等規制法ができた。これにより「がけっぷち」に宅地ができることは少なくなり、その代わり、緩やかな坂の斜面に「ひな壇」のように宅地を整備するニュータウンが主流になった。山の尾根を削って見晴らしを良くし、削った土で谷を埋めて平坦な宅地を造る。これが「谷埋め盛り土(もりど)」である。「○○が丘」「△△台」などと呼ばれるニュータウンの多くがそのような手法で開発された。

阪神・淡路大震災や新潟県中越地震での宅地被害は、こうした「谷埋め盛り土」に集中していた。「谷埋め盛り土」は緩い傾斜の谷を埋めている場合が多く、急傾斜な「がけ」ではないため、雨などでがけ崩れを起こす心配はない。しかし、盛り土と、もともとの地山(じやま)との間に地下水がたまっていると、大きな地震で強く揺れた時に地下水が「潤滑油」になって、盛り土全体が緩い傾斜に沿って「地滑り」を起こすことがある。ある列だけ被害を受けるのは、そこが「谷」や「沢」だったからだと考えられる。しかも、1軒や2軒ではなく、谷筋の宅地が軒並み大きな被害を受けることとなる。

地名から分かる危険な土地

地盤が弱いと家屋が傾いたり倒壊の危険が高まる。写真は能登半島地震の時の輪島市内。

危ないのはニュータウンだけではない。まったく平坦な住宅地なのに、「○沢」「△谷」などの地名ならば、その昔に沢や谷だったところを埋め立てたか、自然に土砂が堆積してできた土地である可能性がある。深いV字谷を埋めたのであれば、谷の両サイドの摩擦で「地滑り」が防止されるが、浅い「スープ皿」のような谷を埋め立てた場合が危ない。

2005年3月の福岡県西方沖地震では、福岡市の中心部でも住宅・建築物に被害が出ているが、それらは警固(けご)断層の東側沿いに集中している。実は、ここは旧福岡城の堀や古い川を埋め立てた地域といわれている。谷や沢を埋め立てた土地は数百年たっても安定しない。同様に田んぼ(湿田)を埋め立てたところも危険である。「田町」という地名があるが、歴史的な経緯から要注意だろう。

国土交通省は2006年、宅地造成等規制法を実に45年ぶりに改正し、「宅地の耐震化」に本格的に取り組むこととしている。一方、都道府県などは今後、「宅地ハザードマップ」を作成するという。「谷埋め盛り土」がどこにあるかは、昔の航空写真と今の地形を比べるだけで簡単に分かる。その上で、地下水の有無などを調べて危険度を割り出す。特に危険な土地は、法律に基づいて「造成宅地防災区域」に指定する。指定された区域内で宅地の耐震化工事を行う場合は、工事費の半分を国と都道府県が助成する。

ヒラ、サコ、クサなども注意

「谷埋め盛り土」の地滑りは規模も大きくなりがちである。民間の宅地であり、公共事業で復旧することも原則としてできない。やはり、住宅と同様に事前の予防策が大切となる。皆さんの土地は大丈夫だろうか?最近は地名が新しくなったりしているが、古い地名で、例えばヒラ(平らを意味すると思われがちだが、実は坂や傾斜地だった場合が多い)、サコ(谷底のこと)、クサ(湿地のこと)などは要注意だ。そこまでピンポイントではないが、内閣府が「表層地盤のゆれやすさマップ」を作成している。一度チェックしてみてほしい。

(監修:レスキューナウ 文:渋谷和久 国土交通省九州地方整備局総務部長。内閣府防災担当企画官などを経て、2006年7月より現職)

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