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防災コラムVol.61

ペットも一緒に災害から免れるには

公開月:2006年3月

今や家族同然のペット。しかし、災害時の備えは「人間サマ」だけになっていないだろうか。

一緒の避難を想定している?

ペットブームの昨今、現在どの位のペットが飼われているかご存知だろうか。2004年に内閣府が行った「動物愛護に関する世論調査」によると、例えば犬や猫の飼育数の推計値は1810万匹で、14歳以下の人口1763万人を上回っている。家族同様にかわいがっているペットだから、災害が来ても人間と一緒に生き延びたいと考えるのは自然なこと。ただ、災害時の避難や備蓄品など自分たち「人間サマ」だけへの備えになっていないだろうか。今回はペットと一緒に避難することを目的に開発された防災グッズを紹介する。

犬猫を抱いても負担にならない

けがをした場合は担架として使える

ペット用避難製品の製造・販売を行うサイデリアルの岡聖記社長は阪神・淡路大震災の当時、大阪府箕面市で揺れを感じたものの、けがもせず難を逃れた。だが、それ以来、自宅の居間には非常用持ち出し袋を常備している。治療や診察はできないが、獣医師とのコミュニケーションをスムーズに行い、ペットの救命を目的とする愛玩動物救命士という資格を持つ。動物への愛着は人一倍強く、災害時に動物と一緒に助かるにはどうしたらよいか頭を悩ませていた。というのも、ペットと離れ離れになった被災者を何人も目にしたからだ。

2007年3月の能登半島地震の被災地に足を運んだ時、ある被災者は「人間が素早く逃げられ、しかも愛犬や愛猫を抱いても負担にならないようにできないものか」「別れてしまったペットにはとにかく生きていてほしい」などの声を耳にした。獣医師や愛玩動物福祉協会などと会話するうちに、ペットと避難所に行くまでの防災グッズが必要だと思いついたが、まだ世の中にそうしたものは出ていなかった。それならばと自分で各方面の声を集めて作ったのが「避難ジャケット」だ。サイズは6種類あり、主に犬を想定しているが、猫やその他の動物でも対応できるという。水やビスケットなどペットだけでなく人間も使えるグッズ15点が入っているほか、様々な機能がついている。

あっという間の装着

「避難ジャケット」を着た犬

避難時は首と胴のマジックテープを留め、リード収納ポケットからリードを引き出すだけ。あっという間に装着できるため、素早い避難が可能。また、歩けなくなった時はジャケットを担架として使う。雨の日はレインコートにもなり多機能である。素材にもこだわり、難燃材と断熱材を使用したことで、火災の炎にも燃えにくいという。

さてジャケットの付属品をみてみよう。15種類の付属品があるが、食糧は「避難所に行ってしまえば、最悪なんとかなるのでは」として少なめの一方、保存水は水分補給のためだけでなく、消毒にも使えるとして1袋50mlを最低2袋とした。

暑さに弱い犬が多いため両脇に「保冷材」を挟む口がついている。「簡易口輪」は、犬が「興奮してかみつくと治療に支障が出る」との獣医師の意見で入れた。パニック対策では舌に数滴垂らすと落ち着く効果のある「アロマオイル」が入っている。同じくメンタル面では、飼い主のにおいが染み付いたハンカチなどを入れておくための「密封袋」も。飼い主の氏名や住所などを書いた「IDカプセル」は万が一、飼い主と別れてしまった場合、どこかで見てもらえれば、保護センターの職員や獣医師などに保護してもらえるとの思いから。

普段の散歩が避難訓練

岡社長は飼い主に対し、普段の散歩が避難訓練になると呼びかける。このジャケットを着て、散歩の時にたまに近くの一時避難所や広域避難場所などに行くことで、「避難ジャケットを着たらお散歩」という楽しい思い出を経験させられるので、いざという時もパニックを起こさずに済むのではと話す。

このように、ジャケットの中身の1個ずつにペットと人間の利便を考え、無駄のない工夫がこらされているが、この製品の特長はそうした「物」だけでなく、「メンタルケア」についても行き届いている点だろう。

バッグに入れて一緒に避難も

子犬なら2匹は入れられる「ライフバッグ」

姉妹品として、犬や猫をそのままバッグの中に入れて避難できる「ライフバッグ」(サイズ:大小2種類)もある。「いかに素早く逃げるか」を考え抜き、小さな猫や犬ならば人間が直接手にとってバッグに入れた方が早いことに着目した。飼い主にも負担にならずに首からぶら下げるだけなので両手があく。バッグ内には14点の非常用グッズが入っている。大きいサイズは子犬だったら2匹は入るという。

「災害対策は普段から」「生きていなければ、どんなに食品などを用意しても無駄になる」という当たり前のことを商品開発者が理解し商品化した。人間だけでなく、ペットの立場でも作られた無駄のない防災グッズといえる。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 水谷公郎)

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