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防災コラムVol.127

NPOの危機対応・防災への取り組みの社会的意義とは(第3回)| 防災コラム

公開月:2006年5月

今回も国際ボランティア学生協会(IVUSA)危機対応研究所の取り組みについて、IVUSA事務局長・宮崎猛志氏(以下、宮崎氏)の話を交えながら紹介する。

主な事業、取り組みについて(地域での講習や、防災訓練への参加等)

講習では真剣にメモを取る姿が多くみられた

◆高齢者と共に考える「防災」
世田谷区にある老人会館にて「減災・防災の世代間交流」というテーマで、講演とワークショップを行った。受講生は60歳以上の区民の約50名の方たち。講演では、災害救援活動や地域で行っている防災訓練、応急救命講習等、学生を中心とした若い世代と地域コミュニティとの協働現場についての講演を行った。
グループワークでは、集まった方たちと学生とが一緒に災害時の地域の協力体制について考え、「もし実際にこんな状況になったら、あなたはどう動きますか?何を考えますか?」と想定しながら、刻一刻と変化する周りの状況の中でそれぞれが最善だと思う対処方法について意見交換を行った。活発に意見を交わしていく中で、本当に災害が起こったときに「ひとりひとりが地域のリーダーとして動かなければいけない。」という意識の変化が見られ「一人の意見だけじゃなく、みんなで話し合って決めましょう。」などの声の掛け合いが多くなり、若い世代とはまた違う考え方や配慮などの視点があることも印象的であった。

◆地域や小学校での防災訓練、防災人形劇の上演
世田谷区の小学校でPTA主催の防災訓練が行われ、IVUSAの学生スタッフによる人形劇を上演。カラー軍手を使った人形で、大災害に見舞われた家族とその犬の行動を通じて、災害時の豆知識を子ども達に教えるというもの。低学年から高学年までの児童が喜びそうなテーマで行った人形劇は大変好評であった。楽しくかつ分かりやすく防災の知識を身につける良い機会となったと思う。

「危機対応マニュアル」の作成

これまで15年間積み重ねてきた様々なスキルや安全管理という考え方の蓄積を活かして、危機対応研究所(以下、IVUSA-CMT)の事業の一つとして、「危機対応」をテーマにした一冊の教本を編集・発行した。誰もが身につけておくことが必要と思われる応急救命措置や身の回りの危機に対処する方法などを載せており、IVUSA-CMTでもこの教本が使われている。

宮崎氏は「まず目の前の倒れている人に、『大丈夫ですか』と声をかけられる人材を増やし、すべての人が救助者となって、互いの命を守る社会の実現を目指していきたい」と話す。
具体的な内容としては、搬送法、外傷への応急手当、心肺蘇生法、災害時対応について、また罹災時行動シミュレーションなどが載っている。

スペシャリストチーム「飛龍」の育成

IVUSA-CMTでは、災害救援支援活動全般にわたるコーディネート集団の育成にも力を入れている。さまざまな人材が、自分の得意分野を発揮するスペシャリストチームが目指す姿だ。既に100人分の食事作り、工具など救援装備品の管理運用、車の運転やナビゲート、屋外でのサバイバルなどのスキルを身につけて、さまざまな救援現場で力を発揮していける。これらを前提として、さらなるコミュニケーション能力・判断力・交渉力の向上や、精神・心構えを身につけるように、外部講師を招いた研修や定期的な講習会を実施し、総合的な人間力の向上を図っている。ボランティアプロジェクトや災害救援活動の現場などでこのようなスペシャリストが様々な状況に柔軟に対応できるようになっている。

今後の展望

世田谷区立多聞小学校で開かれた防災劇

大規模災害時における災害時要援護者の避難支援に関する調査研究事業
本調査研究活動は、災害時要援護者を取り巻く地域の実態を調査し、その地域の特性を生かした災害時要援護者救助の方策を確立することを目的としている。実態調査を行うことで、次の5つの効果が期待される。

1.地域の特性を活かした対応の確立
2.災害時要援護者自身の災害への備えに対する意識の向上
3.災害時要援護者に対する近隣住民による救助避難支援体制、避難行動の確立
4.住民が応急処置を学ぶことによる、防災力と共助の力の向上が図られる
5.災害時救助活動及び、避難行動の確立

調査活動では、都市部(東京都世田谷区、京都府京都市)、地方都市(神奈川県小田原市)、過疎地域(新潟県関川村)の4 地域を中心にアンケート並びにヒアリング活動を行い、地域性などの傾向と実態について調査を行っている。

それは学生の夢から始まった

16年前、学生たちの「夢」から始まったIVUSAの活動。
「ボランティア」という手法で、自分たちの元気と笑顔を持って災害現場へ赴き、人との触れ合いの中で多くの学生が現場を通して様々なことを学んできた。NPOとして、活動拠点でもある世田谷区との連携も強まり、学生を中心にますます地域コミュニティが強化されていくことが今後も期待されている。

これまでのコラムでも書いてきたように、災害現場において、学生が自分たちの強みを生かしながら被災者と共に活動することで、共に復旧に向けて前を向いて進もうというメッセージを発信していくことを大切にしている。

IVUSA-CMTは、災害現場で活動する学生などの安全を確保するため、「危機管理」や「相互コミュニケーション」を学びながら、様々な状況に対して冷静に考え、そして大胆に行動できる人材育成を今後も目指していくという。

(監修:レスキューナウ 文・国際ボランティア学生協会 小野槙子)

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