2011年3月2日
2010年12月から、日本列島は例年にない大雪に見舞われている。地震や集中豪雨のような突発事象ではない自然現象で、なぜ多くの車が立ち往生し、救助される事態になったのか。交通心理学・自動車工学に詳しい中日本自動車短期大学大脇教授に聞いた。
車列の立ち往生が頻発

ラニーニャ現象の影響なのか、2010年末以降、中国・北陸の日本海側、東北地方などで、大雪により身動きの取れなくなる車列が発生している。長期間車内に閉じ込められ、自力では脱出できなくなった車両を県や自衛隊が救助し、食料や燃料を供給する事態が頻発しているのだ。では、なぜ多くのドライバーが立ち往生したのだろうか。
Q 立ち往生するまで、その場に車が居続けるのはなぜでしょうか?
「曖昧な事態、正解がどれかはっきりしないような事態に直面すると、人は、他者の行動を参考にしようと周囲の人の行動を観察します。周囲または前後の車のうち3台くらいがそのまま待っている状態であれば、右にならえと考えて待つわけです。すると、交通量のある道路なら、あっと言う間に渋滞の列ができあがります。」
Q 雪がある程度積もるには、それなりに時間がかかると思いますが?
「降雪現象を観察していると、特に気温が下がっている時、みるみるうちに降り積もっていく様子が分かります。これは、激しい降雨の際に、排水が不十分な駐車場などの水かさがあっと思う間に上昇するのに似ています。したがって、雪が降り積もるには時間がかかるという認識は、改める必要があります。それに、状況判断に時間を費やすため、時間的な余裕もなくなりますので、大雪とは集中豪雨的なものだと考えるべきでしょう。
さらに、地形的、道路交通的な原因もあります。このような事態が発生する場所・地域は山間部であることが多く、当該道路の他に代替となるような幹線道路がないため、たとえ引き返したとしても相当なロスタイムを覚悟しなければなりません。降雪のリスクを考えながらも当該道路を走り続けることになり、気がついたときには、どうにもならなかったということになりがちです。」
Q 雪道を運転する際に必要なことは何でしょうか?
「一番の問題は燃料の補給です。雪道の走行は、非常に燃費が悪いものです。想像以上に燃料の減りが早く、このことがいろいろな判断を迷わせる原因にもなります。こうした状況下で燃料が少なくなってくると、不安、焦りが出てきます。不安や焦りは、ドライバーの判断を鈍らせます。また、同乗者が居た場合は、状況の判断をめぐって険悪な事態を引き起こすこともあります。燃料があれば、車内の暖房は問題ありませんし、不安や緊張もずっと少なくなります。自身の車については、燃料計の値と走行可能距離との関係を知っておいてください。大雪の際は、当該道路の管理者による早めの道路閉鎖を検討してもらいたいですね」
もし身動きが取れなくなったら……

大雪の際は交通の状況も非常に悪いため、最悪の場合、救援が来るまで丸一日を要する例もあるという。燃料が切れてしまうと、真っ先に襲ってくるのは寒さだ。車を持つ人は、どんなことも起こりうるという認識を持ち、そのための備えを積極的にしておくべき。まずは、防寒ができるブランケット、水、食糧、簡易トイレなど、最小限の防災用品から揃えよう!
(取材&文・レスキューナウ危機管理情報センター)
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