2011年10月5日
2011年9月21日の午後、台風15号が首都圏を通過。主要な鉄道網では運転がストップし、帰宅困難者が街にあふれた。
外には出ない!
2011年台風15号では、3月11日の東日本大震災同様、首都圏の主要鉄道網の運転がストップしたことによって、またしても帰宅困難者が出てしまった。帰路を急ぐあまり、暴風雨が吹き荒れる街中を歩く人も見られた。しかし、こうした状況下において外を歩くことは大変危険なことでもある。東京・渋谷では、倒れてきた街路樹がタクシーを直撃、落ちてきた看板も吹き飛ばされていた。また、骨組みだけとなった傘が道端に捨てられていることがあり、これが風で飛ばされると、恐ろしい凶器になってしまうことは想像に難しくない。つまり、暴風雨が強くなっているときには、屋内に留まっていることが何よりも重要なのである。
列車が止まる前に帰宅する判断材料とは
では、帰宅困難者とならないためにはどうすればよいのだろうか。
鉄道がストップしてしまう原因には、「雨量による運転規制」・「風速による運転規制」がある。またこれらに関連して、雨や風による線路への「土砂流入・倒木」・「架線支障」などがある。つまり、雨や風が「いつ」・「どこで」強くなるのかを事前に把握できれば、鉄道が動いている間に帰宅でき、帰宅困難者にはならないのである。では、今回の台風15号を例にみながら考えてみたい。
台風15号は9月21日の14:00に静岡県浜松市付近に上陸した。しかし、首都圏の鉄道に影響が出始めたのは12:00を過ぎた頃からで、東海道本線(東京~熱海)や京葉線などの一部路線で、遅延や運休が発生。上陸した14:00を過ぎると、総武本線・成田線・内房線・外房線など千葉方面の列車が相次いで運転を見合わせ。15:00を過ぎると、大手私鉄の京王・西武・東急・小田急の列車に影響が出始めてきた。
なお、前日(20日)の気象情報では「首都圏では台風の影響で、12:00を過ぎた頃から風雨が強まり、台風本体は21日夕方にかけて通過する」との予報が出ていた。
以上の情報を総合すると、「台風本体が首都圏を通過する以前から風雨が強まり、列車の運行に影響を与える」という結論を導き出すことができる。よって、「12:00を過ぎた頃から風雨が強まる」という予報をしっかりキャッチできていれば、遅くても「12:00頃には帰路へつく」という判断が可能だったのではないだろうか。企業の担当者であれば、社員を早めに帰宅させる判断材料になった情報ともいえる。
このことから、台風の影響が予想される場合には、気象庁などが発表する情報を逐一確認することが、帰宅困難者を出さない1つの対策といえよう。
あえて帰らないという判断も
帰宅困難者にならないための方法として「あえて帰らずに会社やお店に留まる」という選択肢もある。今回の台風15号の場合であれば、21日21:00には台風の中心が福島県付近と事前に予報が出されていた。そのため、この予報をもとに夜までオフィスで仕事を続けていた人、飲食店で食事をしていた人もおり、賢明な判断だったといえる。東京都の石原慎太郎知事も、社員に無理な帰宅をさせないなどの帰宅困難者対策を、企業に促す条例の制定を検討しているとの報道もあった。また、台風が通過したことによって、風雨が鉄道会社の定める規制値を下回り、列車の運行に支障がないことが確認できれば、列車は動き始める。
よって、インターネット等を活用して気象情報や鉄道運行情報を確認すれば、帰路につく大まかなタイミングを把握することができるだろう。
気象は地震の場合と異なり、風雨の強さなどの情報を事前に確認することができる。これは当たり前のことではあるが、気象情報を上手に活用できていれば、今回のような多くの帰宅困難者を出さずに済んだのかもしれない。私たちは「情報」の活用方法について、今一度考える必要がある。
(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)
copyright © レスキューナウ 記事の無断転用を禁じます。