気象観測の最新技術
線状降水帯がいつ発生するのか、これは防災の観点から非常に重要なことです。今の「ひまわり」では上層の水蒸気量しか計測できていないのですが、中層、下層の水蒸気を計測するためのサウンダと呼ばれているセンサーを積んだものを次回打ち上げようとしています。日本には大気の川と呼ばれている水蒸気帯が熱帯地方から川の如く流れ込んできます。それが線状降水帯を引き起こすということは分かってきているのですが、まだまだどれだけの水蒸気が入ってきているのかをリアルタイムで観測するのはとても難しい状況です。現在サウンダは、気象衛星、静止気象衛星ではなくて極軌道気象衛星という、くるくると北極・南極と赤道を周回して、地球の回転と共に1日2回程度観測する衛生の中でしか観測できていないので、今の「ひまわり」のように細かく観測できるような衛星の中で、線状降水帯の影響を与えるようなデータを検出しようと準備しています。そこで観測できたデータをシミュレーションの中に入れることによって、降水予測の精度がより上がるだろうと言われていますので、期待できる技術であると思っています。
もう1つ、フェーズドアレイレーダーと言う雨雲レーダーでの観測についてお話します。現存のレーダーは、上下方向に首振りをして360度回転しながら雨雲を検出していますが、フェーズドアレイレーダーは平板状のレーダーで、1回転するだけで雨雲の立体構造が観測できます。今、関東では、埼玉大学や気象研究所で試験的に複数設置しています。フェーズドアレイレーダーを使えば、上空に雨粒ができた段階で、雨が降るタイミングや精度の高い雨雲の情報が提供されるようになってくると思います。もちろん情報の信頼度が高くなりますし、強い雨が降る前にアラートなどで知らせることが出来るようになります。
防災教育の重要性
気象や大雨の話をしてきましたが、自分の命を守るためにはやはり避難することが大切です。学校教育でも火災発生時の避難や地震発生時の避難訓練が行われます。例えば海岸沿いの学校では津波発生時の避難訓練が行われています。岩手県の「釜石の奇跡」と言われているように、普段から避難訓練をしていた学校では、津波が来る前に多くの方が避難出来ていました。
一方、雨についてはまだそのような避難訓練が出来ていません。防災関係者の中で有名なのは「兵庫県佐用町の悲劇」と呼ばれている豪雨災害で、雨が降っていない夜間に避難しようとした住民が濁流に飲まれるなど、多くの方が犠牲になりました。それ以来、放送などでの避難の案内が変わりました。今までは地震でも何でも「避難所に行きましょう」と呼び掛けていましたが、「2階に避難しましょう」と垂直避難を誘導したり、「より安全な所へ移動してください」「命を守る行動を考えてください」という案内をするようになりました。
どうすれば命を守れるのかということをぜひ小学校から教育してほしいなと思います。特に水に対する教育は自治体によって異なりますが、まだ十分ではないと思われます。近年では台風やゲリラ豪雨が多くなってきています。2000年の東海豪雨では400ミリの雨が降り、名古屋の地下街が浸水しました。東京では現在まで地下街の浸水はありませんが、浸水する可能性はゼロではないので、大雨が降った時の地下街の安全性についても今一度考えていただきたいと思います。