プロフィール
横浜市立大学国際教養学部都市学系でまちづくりなどを教えております。建築や都市計画をベースに参画協働論についても教えていて、こども環境学という基本的には都市づくり・まちづくりに関することですが、こどもの成長、こどものライフステージとまちの関わりについて実践型の調査研究をしている、フィードバック型の研究者です。
机で論文を書いているというよりは、外に出て行きながら地域課題の解決方法につながるような、調査研究を通した政策提案などをしています。特に、弱者とされるこどもなどのまちの中でのステージを上げるというか、主役化するというような観点で研究しようと考えています。
実は出身は建築学で設計もしていました。阪神・淡路大震災が発生した時は大阪の設計事務所に勤めており被災しました。その後、復興に向けた様々な仕事、例えば復興住宅や集合住宅などの設計をしていたのですが、とても短いスパンでまちが大きく変化していく様子や人々の復興に向けた力強い動きなどを目の当たりにしながら、一方でこどものまちとの関わりについての研究しておりましたので、もう1度研究者として戻りたいと思い学位を取りに大学へ戻りました。
そこで、もう少し都市の中でのこどもの主体性を育むにはどういうまちであるべきなのか、それはハード的なこともソフト的なこともですが、そのような関心で研究の道により深く入っていったという経緯があります。ですので、振り返ってみるときっかけは阪神・淡路大震災のまちの大きな変革、人の変革、制度の変革であると思います。
こども環境学とは
「環境学」と言うと、どうしても緑や水などの考え方をするかもしれませんが、人の周りにあるもの全てがいわゆる環境です。物的資源や人的資源という表現をすると思いますが、それらとの関係性がこどもの育ちにとても大事であるということを、学問領域を超えて研究・提言していくなかで「こども環境学」を確立していくため、新しく立ち上げたのが「こども環境学会」という学会です。私自身は副会長をしているのですが、こどものことを考えようとすると、どうしても社会福祉分野や学校教育など、専門領域がすごく閉鎖しているように思えるかもしれませんが、そもそもこどもの育ちについて考えてみるとすべての学問の分野が関わります。
こども環境学会では、いわゆるこども学のような児童福祉や学校教育、幼児教育などの専門領域の先生だけではなく、建築学やディベロッパーのような方々、造園学など、一見すると関係なさそうな領域の方でも、こどものことについて研究している方もいらっしゃるので、そのような方々と「こども環境学」という領域を新しく整理しているところです。
今では、「こども家庭庁」の発足など、近年ではこどものことについてアンテナがすごく敏感になっていると思いますが、それよりも随分前から訴えていたのが、いろんな分野の先駆者の先生方であり、やはりこどものことを語るのにはいろんな領域から攻めていく必要があります。ようやく「こども家庭庁」のような全庁的な取り組みをするようになり、やっとスタートラインに立ったかなという感じがあります。
しかし、こどもといえばこの分野という考えは残っており、自治体ではこども未来局やこども青少年局というところが主となって舵取りをしています。舵取りも大事なことですが、舵取り役だけで進むものではなく、やはりすべての部局や施策の関係者がこどもに対して関心を持って、意識することが大事です。学者だけではなく、こども達と向き合っている現場の方々や政策を出している方々も必要です。分野を横断した、そして異業種間での横断をしていかなければ、より良いこどもの育ちを中心にした施策ができないという発想になります。