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防災インタビューVol.220

被災者の自立へ向けた支援の在り方

放送月:2023年12月
公開月:2024年5月

北川 進 氏

日本社会事業大学 大学院 専門職大学院 講師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

災害ボランティアセンター

ボランティアというのは自由な取り組みですから、気持ちや価値観、滞在する期間、できる取り組みなど、本当に様々です。その様々な力を持っているボランティアの方々が、とても大切ではありながらも、望まないかたちで、逆に被災住民の方々の力を奪ってしまったという事例があります。夏休みなど長期休みの期間、遠方から学生が大学単位でボランティア活動をしに来ていただきますが、その際にこんな事がありました。

とある大学の学生30名ぐらいで被災地のボランティア活動をさせていただきたいというお願いがありました。しかし、被災者の皆さんは、仮設住宅で暮らしている状況で、災害直後のようないわゆる瓦礫の撤去や清掃活動がほとんどない状況でしたので、大人数でまとめていらっしゃった時に出来る活動がなくなっていました。そんな中、これは仲介するボランティアセンターも、非常にお粗末なやり方になってしまったという反省がありますが、ある仮設住宅の自治会長さんに、その学生ボランティアの皆さんを是非受け入れて、仮設住宅で何か手伝うようなことを調整してもらえないかというお願いをしました。自治会長さんは、若干渋々ではありましたが、受け入れることを了承してくださいました。

私たちはその活動に同行することができず、送り出しただけで終わってしまったのですが、学生ボランティアの皆さんの活動が終わった数日後に、自治会長さんが私たちのところに来て、「この間の学生さん30人受け入れたよ。本当は自治会活動でやろうと思っていた草むしりを中止して、その草を取っておいて、学生さんたちにむしってもらったんだ」とおっしゃいました。私はこの時に、本当にやってはいけないボランティアコーディネートをしてしまったということを痛感しました。

本来、草むしりは住民同士のコミュニティ活動のひとつとして行われるものです。こういった取り組みが、住民同士の繋がりを作ったり、共に生活していくためにとても大事な要素があるはずだと思うのですが、それをボランティアが来るが故に、ボランティアにやらせるというような形で、自治コミュニティの取り組みを阻害してしまったひとつではないかなと気づきました。これに対して自治会長さんも、おそらく何も気づいてはいらっしゃらないと思います。せっかく遠くから来てくれたのだから、何かやってもらわなきゃいけない、だから草むしりをやらずにとっておいた。こういったことをコーディネートする側が気付かなければ、住民同士のその後の支え合いにも悪い影響を与えてしまうなと感じました。

このような事例について、改めて念を押しますが、ボランティアの方が悪いのではないと思っています。遠くから来る人たちをコーディネートする調整役の力の問題であり、とても大事なことなのです。

調整役・調整機能

口で言うのはとても簡単ですが、調整役・調整機能というのは本当に奥が深く難しいと感じています。

災害時のボランティア支援を考えた時、この力を調整するのはいわゆる災害ボランティアセンターであることが多いのだと思いますが、この災害ボランティアセンターは、阪神・淡路大震災の経験から、ボランティアの人たちを調整するセンターが重要だと言われ、その後の災害でも様々な失敗を重ねながら、社会福祉協議会を中心に災害ボランティアセンターとして洗練されていったのだと思います。確かに、多くのボランティアの人たちを必要とする泥かきや清掃のようなフェーズの時に、ボランティアをより多くの被災地に届けるというようなコーディネート力は向上したなと思っています。

ただ、被災された方々というのは、例えば、泥かきや清掃時にお手伝いを必要としていたとしても、その世帯、そのお1人お1人によって、状況というのはみんな違います。この状況というものを、果たして現在の災害ボランティアセンターという機能の中で、どれぐらい丁寧に見られているのだろうかと。少なくとも、東日本大震災の時には、そういった、お1人お1人の状況に丁寧に向き合うということができないまま、むしろたくさんのボランティアの人とたくさんのニーズに追われてしまい、パンクをしてしまったというような状況でした。最も調整力を発揮しなくてはならない、この災害ボランティアセンターという機能がパンクを起こしてしまったわけですから、当然ここに色々なミスマッチ、お粗末な対応が、たくさんあったなという気がしています。

実は、東日本大震災の時にも「災害ボランティアセンター」と銘打たなくても、ボランティアさんをコーディネートする機能というのはたくさんありました。社会福祉協議会を中心とした災害ボランティアセンターはもちろんのことなのですが、例えば、宗教団体が中心になってボランティアコーディネートを行ったということもたくさんありましたし、NPO法人などが被災地外でネットワークを組んで、被災地外からボランティアの方々を送り届けるような取り組みをしたり、大学が中心になって学校間の連携のもとに、学生さんを送り届けるようなボランティアコーディネートがあったり、被災地の住民同士が自分の集会所を拠点として、とにかく来てくれるボランティアさんをコーディネートしたという事例など、様々なボランティアコーディネート機能がたくさんありました。

ですから、社会福祉協議会が中心になって立ち上げることはもちろん必要なのですが、大規模災害であればあるほど、それだけではない小さなボランティアセンターをたくさん機能させるということが、調整機能を高めていくという意味でも大事なところなのかなと思っているところです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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