携帯トイレの活用
多くの人は、外にトイレを探しに行ったり、水を確保しなければと考えると思いますが、建物が無事であれば便器に取り付けて使う携帯トイレが使用できます。携帯トイレというのは、袋式のトイレで袋の中に凝固剤もしくは吸収シートが入っています。用を足したらシートで吸収、もしくは凝固剤で固めて安定化し、袋を縛って、各市町村のルール確認も必要ではありますが、基本的には可燃ごみで捨てます。ごみが収集されるまでは各自で保管することが必要となります。
携帯トイレは便器に取り付けて使いますが、便器には水が溜まっています。ですから、そのまま袋式の携帯トイレを取り付けてしまうと、交換するときに水が滴ってしまいます。それなら水を取ってしまえばいいかというとそれは出来ません。なぜかというと、封水といって水で便器に蓋をしているので、水を取ってしまうと下水道からの悪臭や虫が逆流してきます。
そこで、ぜひやっていただきたい方法があります。まず便器の蓋を上げ、続けて便座も上げます。そうすると、便器だけが残ります。便器に45リットルぐらいのゴミ袋を被せます。私の経験上、45リットルのポリ袋は便器をすっぽり覆うことが出来る大きさです。ポリ袋を取り付けたら便座を下ろして動かないように挟みます。その上から携帯トイレを取り付ければ携帯トイレだけを交換すればいいという状態になります。とても単純ですが、被災地に行かれた知り合いの記者の方などは意外と思いつかなかったとおっしゃっているので、ぜひ知っておいてほしいなと思います。
携帯トイレは衛生面から考えて、1回ずつ取り換えた方がよいです。用意しておく個数は人数によって変わりますが、ひとり分の場合は、一日でトイレに行く回数を数えてその分必要となります。私自身で数えてみると7回でしたが、一日に5回の人、10回の人と様々だと思います。国のガイドラインを参考にすると、目安としては5回です。ひとりで1日5回×最低3日分、できれば7日分を用意すると、3日で15個、7日では35個必要となります。これを多いと感じるかもしれませんが、被災地に何度も行っている私からすると、災害時にトイレがないというのはとても辛いことです。
携帯トイレがないと、外のトイレに行かなければいけません。例えば、真っ暗闇、もしくはものすごく寒い時期だとしたら。能登半島地震が発生し、私は2024年1月6日に現地に行きましたが、雪がちらついたり、吹雪いていてとても寒かったです。そんなとき、ご自身もしくは女性やお子さんが外のトイレに行きたいと思うでしょうか。
避難所でのトイレ事情
1月6日に能登半島の避難所に行き、85歳のおばあちゃんにお話を伺いました。金沢から近い避難所の話で、仮設トイレは来ていました。とは言っても、1月6日ですから1週間が経過しています。そこに設置されていた仮設トイレは、工事現場にあるようなトイレで和便器でした。足腰が悪くてしゃがむことができないと使えませんし、最近のお子さんは和式トイレが使えないのではないでしょうか。
その85歳のおばあちゃんに話を聞いてみると、やはり外のトイレは寒いので行きたくないとおっしゃっていました。「では、どうしているのですか?」とお聞きしたら、「避難所となっている学校の施設にあるトイレに携帯トイレを取り付けて使っています」と回答されました。過去の震災では「携帯トイレを使っている」という言葉を耳にする機会はほとんどありませんでしたが、ようやく機能し始めたと思いました。このことは、今後のトイレ対策の可能性に少し光が差したかなと思っています。
災害時、寒い時もあれば、暑い時もありますし、また真っ暗の中一人で外に出るというのも不安です。日本でも残念ながら災害時の性犯罪が起きてしまっています。建物内のトイレは水が出ない・排水ができないだけですから、自分を守る・家族を守るためにも、鍵がかけられて、座り慣れた便器があり、プライバシーを守れる空間を有効活用するためにも携帯トイレはマストアイテムです。
ただ、携帯トイレを使った後、多くは可燃ごみ扱いになると思います。すべてを携帯トイレで対応しようとすると、使用期間が長くなった場合にごみを保管しておくことがとても難しくなります。ですから、足腰が悪い方、もしくは夜間や悪天候の時は携帯トイレを使い、昼間で天気が良ければ、仮設トイレやマンホールトイレなども組み合わせて使用するのがおすすめです。