プロフィール
NPO法人日本トイレ研究所の加藤と申します。トイレを通して社会を良くしていこうというのが我々の団体のミッションなのですが、主に力を入れていることは3つあります。まずは災害時のトイレ衛生のこと。次に、主に子供たちの便秘や学校のトイレの環境のこと。そして最後は街中のトイレのバリアフリー、このようなことに力を入れて取り組んでいます。
私がトイレのことに関わり始めたのは1997年からなので、27年になります。元々まちづくりに関わりたいと思い建築を勉強していました。まちづくりをどういう切り口でやるのかを考え、「建物をひとつずつ作っていけばそれがまちになる」という思いのもと、建築に携わっていました。そんな中で「建物においてもっと暮らしに根源的に関わるものってなんだろう」ということがとても気になり、それを自分なりに追求した結果、お風呂・台所・トイレの3つがそれぞれの暮らしにとても生活感が感じられるところであると考えました。
中でもトイレというのはそれぞれの家庭の生活感が凝縮していて、その家庭ならではの大切な部分がそこにあるのではないかと思ったのです。トイレが良ければ生活や暮らしが良くなるし、逆にトイレが悪いとすごく不幸になったりするのではないかと感じました。そこで、トイレを切り口に暮らしや社会を考えていこうと思いこの活動に取り組み始めました。
災害発生直後のトイレ確保の必要性
私たちが使っている水洗トイレというのは実はシステムです。電気、給水、さらに流した後の排水・処理、この全てのシステムが成り立たないと水洗トイレは機能を発揮しません。ですから、災害が起きて給排水設備等が機能不全に陥ると水洗トイレは使えなくなります。中高層マンションは電気の力で水をポンプアップして給水しているため、停電と同時に断水してしまう場合が多くなります。
多くの人は災害が起きると、まずは水の確保・食事の確保と考えると思います。ただ、私たちの調査では大きな地震の発生後3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなっています。よく考えれば当たり前のことで、日頃私たちはおおよそ2~3時間に1回トイレに行っています。
大きな災害が発生した時は過緊張になります。避難したり、命を守らないとならなかったり、そのような時は基本的には排泄はしたくなりません。ただ、人間は緊張状態を長時間続けられないので、「命が守れた」「安全な場所まで逃げることができた」「家は大丈夫だ」と思った時などに少しホッとすると思います。この瞬間にトイレに行きたくなる可能性が高いです。3時間というと、水や食料はまだ必要がないタイミングです。それよりも早くトイレに行きたくなるので、水や食料も大事なのですが、どっちを先に災害時対応しなければいけないかというと、それはトイレなのです。