寒いときは温かくなり、暑いときは涼しくなる。魔法のような防災用品を一人一枚は用意しよう。
寝巻きのまま外に出た阪神・淡路大震災
ひとたび大地震が襲うと住宅の壁や屋根・窓ガラスなどが破損したり、外気が入り込んで家の中は寒くなったりする。あるいは、ガラスの破損でけがをしてしまうかも知れない。夏であれば炎天下の日差しを直に受けたり、冬であれば寒風吹きすさむ中に身を置くことになるかも知れない。阪神・淡路大震災では冬の早朝、寝巻きのまま屋外へ出た方も数多くいたという。
このように一瞬にして困難な状況に陥った場合、どのような防災用品を用意しておくとよいだろうか。「エマージェンシーブランケット」や「サバイバルシート」などと呼ばれるアルミ製のシートは44グラム程度と軽い上に、大きさが広げたときは2メートル×1.3メートル前後だが、畳んだ状態では12センチ×7センチ程度と手の平サイズにして持ち運ぶことができる。エマージェンシーブランケットは、このような厳しい場面で活躍する防災用品として注目したい。
寒さ対策も万全
最も大きな特長は防寒効果だろう。人間は体温が低下すると体力を消耗してしまう。雨が降っていればなおさらだ。以外と知られていないが、寒さへの備えは災害に備えた欠かせないポイントだろう。エマージェンシーブランケットは繊維毛布の約5~6倍の保温力を持っており、体に巻き付けるだけで体から反射される熱の約8割を反射し、氷点下に近い外気温でも体温の低下を防ぐ。
では実際にどのようにエマージェンシーブランケットを使うのだろうか。雨が降っていれば、レインコートのように頭や体にまとい、雨具として使える。逆に、断熱効果もある。炎天下ではエマージェンシーブランケットの片側(金銀2色の商品なら銀色側)を外側に向けると熱をシャットアウトする。金色は熱を吸収し、銀色は熱を反射する性質があるため、こうした使い分けができる。この点は毛布ではできないだろう。
かさばらない手の平サイズ
避難所で生活する場合、就寝時はだだっ広い体育館の床に横になる可能性がある。各地から善意の毛布が寄せられることと思うが、配られるまでには多少の時間がかかることも考えられる。冬場は寒い空気が床を支配する。そこで、あらかじめエマージェンシーブランケットを用意しておくと配布されるか心配をせずに済む。毛布のようにかさばらない手の平サイズのため、非常用持ち出し袋に入れておいたり、普段から通勤かばんに入れたり、自動車の中に置いている人もいるようだ。
避難所が開設された当初は、女性のための着替えや洗濯物、授乳をするスペースなどは確保されていないことが多い。女性同士がエマージェンシーブランケットを使い、こうしたスペースを確保したり目隠しをするという使い方もできる。
トイレについても仮設トイレでは夜間に明かりを灯すと中の様子が見えてしまうことがあったが、エマージェンシーブランケットを使って覆いをすることで、プライバシーが確保される。
けがの箇所の固定も
エマージェンシーブランケットは折りたたむことができ、三角巾のようにケガをした部位を体に固定したり、包帯のように巻くことができる。製品にもよるが、100~160kg程度の重さに耐えられ、そのまま広げて災害時にけが人の搬送用担架の代わりとしても使える。また、絞れば非常用ロープとしても利用できる。さらに、血液が付着した担架などが2次感染を起こさないために担架の上に敷かれることもある。
レジャーにも活用
エマージェンシーブランケットは非常時に限らず、登山やアウトドア、コンサートやスポーツ観戦などのレジャーでも敷物や急な雨天の時の防水シートとして使うこともできる。軽量で手の平サイズとコンパクトなエマージェンシーブランケット。宇宙服の開発過程で生まれた防寒、防水、断熱の可能なシートは米軍や沿岸警備隊、レスキュー隊などに導入されている。プロ集団が認めたスグレモノを是非、この機会にお一人に一枚、家族分ご用意されてはいかがだろうか。
(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大脇桂)
copyright © レスキューナウ 記事の無断転用を禁じます。