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防災コラムVol.56

高層マンション居住者の地震対策

公開月:2006年2月

大きくゆっくりとした揺れが高層マンションを襲うかも知れない。地上から孤立しないための対策を立てよう。

都心は高層マンションの建設ラッシュ

東京都内では高層マンションが続々と建設される予定だ

不動産経済研究所によると、2007年以降に完成予定の高層マンションは16万戸超で、そのうち東京23区は約半数の8万戸余りが建設される予定だという。一世帯に2~3人が入居すると仮定すると、新たに約16万人が高層マンションに住むことになる。このような状況を考えると、今後は災害時の居住者への影響について考えてみる必要があろう。今回は高層マンションの建設が23区内でも特に多い中央区が日本で初めて高層住宅の居住者向けに作った地震対策パンフレットを参考に、これまでの地震災害とは異なる危険性について紹介する。

 

長周期地震動による被害

振幅が1秒以上のゆっくりとした揺れを「長周期地震動」という。2003年の北海道十勝沖地震では震源から遠く離れた苫小牧市の石油タンクが原油のゆっくりとした揺れの影響を受け、大きな波になり、炎上する災害を引き起こした。2004年の新潟県中越地震でも約200km離れた六本木ヒルズ(東京都港区)のエレベーターのケーブルを切るなどの障害をもたらした。

ピアノは動き回る

高層マンションに長周期地震動が伝わると、屋内では1~数メートルを往復するような揺れが数分にわたり起きる。家具やテレビなどが倒れたり、ピアノやキャスター付きの家具などの場合はそれらが空間を動き回ったりするという。マンション居住者は動き回る家具やガラスの破片でけがを負う危険が高くなる。L字金具や固定ベルトなどを使い、家具を柱にしっかりと固定しておこう。長周期地震動の特徴は観測された震度以上の被害が起きているところにある。

一週間分の飲料水を用意

高層難民の問題に、マンションの建築業者や管理組合も具体的な取り組みを始めた。高層建築の問題の一つである階段の上り下りの大変さに注目し、食料や簡易トイレなどの備蓄を5階ごとに置くことで物資を運ぶ負担を少しでも和らげようとしたり、家具が固定しやすいよう壁に補強材を備えたり、一般向けに提供が始まった緊急地震速報を各家庭のインターホンで受信し、長周期地震動に数十秒の猶予を持つようにした物件もある。また、短い距離や軽い荷物でも移動や運搬が困難な人をサポートしようと管理組合で要援護者の支援リストを作り、いざという時に各世帯の見回りや食料を運ぶという例もある。

今後30年以内に発生する確率が87%とされている東海地震では、静岡県や周辺の県は震度7~6弱となり、大きな被害が出ると考えられている。東京や名古屋の中心地でも震度6~5程度と想定されているが、そういった強い揺れと同時に発生する長周期地震動が高層マンションに観測された震度以上の被害を及ぼすのではないかと専門家は警告している。

高層難民にならないために

長周期地震動が震度以上の被害をもたらすかも知れない

このように長周期地震動は震源地との距離に関係なく起きる可能性があり、マンション居住者には大きな問題である。例えばエレベーターが止まれば居住者は帰宅のために何十階も階段を登らなければならないかも知れない。過去の災害では自衛隊や行政・ボランティアなどによる支援は基本的に地上で行われており、高層階に取り残された人のために食料などを届けるという事態は想定されておらず、孤立する人も出かねないという状況もある。

一生を過ごすかもしれないマンションでは、日々の快適さだけを求めるのは十分ではないことはお分かりいただけただろう。マンション販売元による地震対策に加えて、家具の固定や災害時の備蓄など自身の備えも安心のために欠かせない。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大脇桂)

参考文献:渡辺実『高層難民』(新潮新書)

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