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防災コラムVol.116

「CSR型避難誘導標識」の誕生!| 防災コラム

公開月:2006年4月

企業の社会的責任(CSR)活動の一環として、協賛型避難誘導標識(商品名「しるべにすと」、以下「しるべにすと」)の普及を促進する新しい取り組みを紹介しよう。

CSR型避難誘導標識とは

協賛型避難誘導標識「しるべにすと」

2009年1月、株式会社リソウズ(以下、リソウズ)はCSR型避難誘導標識「しるべにすと」の提供を開始した。「しるべにすと」は、蓄光式の誘導標識と協賛企業のロゴが一体となった協賛型の消防設備である。施設管理者が、リソウズに蓄光式避難誘導標識を含む「しるべにすと」の設置を要請すると、リソウズが広告代理店等を通じて、協賛企業を募集し設置する。「しるべにすと」には、蓄光式避難誘導標識と現在地情報が同じパネル内に取付けられている。現在地情報は「しるべにすと」が設置されている場所から、最寄りの避難出口を基準にした位置情報が記号で表されており、現在地情報を消防などへの通報時に用いることで、地下空間でも通報者がどこにいるのかを把握できる機能がある。加えて、救助をする際、最寄りの出口から迅速に現場へ駆けつけられるという相乗効果もある。これらの避難誘導や救助に役立つ機能を持ち合わせた「しるべにすと」に協賛することが、協賛企業のCSR活動の一環と成り得ることができるのである。

協賛企業は、「しるべにすと」のパネル内に自社の企業ロゴが記載されたプレートを取り付けることが出来る。いわば「しるべにすと」はCSR型広告媒体であり、協賛企業としては広告宣伝費を利用してCSR活動をPRできるビジネスモデルとなっている。

2003年2月18日、韓国・大邱(テグ)市で発生した地下鉄火災を契機に、東京都などでは地下施設における蓄光明示物の設置が義務化されている。しかし、義務化されていない地下鉄駅舎や地下街、地下通路、テナントビルの共有スペースなどにおける施設や利用者の安全向上を考慮することが必要となるが、費用や管理の面から単独の事業者ではなかなか蓄光式避難誘導標識の導入、設置に取り組むことができない。そのような施設や予算措置が難しい公共施設に対して、CSR活動を積極的に行っている企業の理解と協力を得ることにより、普及の促進を目指している。

施設の事業継続(BC)として

活用イメージ(停電前)

避難誘導標識は、火災や地震などの際、施設内部の利用客や職員を速やかに避難させるため、建築基準法や消防法で設置が義務付けられている。この避難誘導標識には、内照式標識(電源の必要な非常口表示誘導灯 等)と非発光方式(白地プレート等)の2種類がある。しかし、複雑な多層構造を持つ地下街や、外の光が届かないほどの広いフロアがあるビルなどでは、停電時など非発光方式の避難誘導標識が見えなくなったり、停電が長期にわたってしまうと、蓄電池を備えた一般的な内照式標識でも20分程度で消灯してしまう事が懸念されている。こうした懸念を補完するために、蓄光式の避難誘導標識の設置が法的に認められている。

蓄光式の避難誘導標識の場合、自然採光できる場所や蛍光灯のあたる場所に日頃から設置されていれば、蓄光顔料が光を蓄え、発光する働きを維持できるため電源などは不要だ。この「蓄光」と「発光」する機能により、停電時でも避難誘導標識を確認できる。蓄光顔料による発光時間は各社によって性能が異なるが、「しるべにすと」はJIS規格で定められている残光輝度ランクで最も高いJDを満している。これは、視力による個人差はあるものの、一般的に停電して60分後の暗闇の中でも避難誘導標識を確認することが可能になる。これにより、企業が取り組みを検討している事業継続(BC)にも役立つ。

導入時までの課題

「しるべにすと」は、リソウズがCSR型広告媒体事業を行うことで、施設管理者の導入する負担を軽減できるメリットがある。また、リソウズが施設周辺の企業やテナント企業の関連会社、取引先などに、CSR活動の一環として協賛を得る仕組みが施設を取り巻くステークホルダーの協調によって、地域の防災、減災への取り組みやBCにつなげていくことができる。

企業広告として見れば、避難誘導標識という施設利用者からよく見える場所(視認性の良い場所)に、アイキャッチ効果の高い新たな広告媒体として出稿できるメリットがある。  さらにそれが公的施設や私企業施設に及ぶところが斬新である。

建物の構造によっては、避難に予想以上の時間を要したり、時間帯によって避難を誘導してくれる人が少ない場合も考えられる。「しるべにすと」のような避難誘導標識が積極的に設置されるメリットは大きいといえる。

今後の展開

活用イメージ(停電から20分が経過しても標識を確認できる)

蓄光式避難誘導標識を導入するには、大きなコストが必要となる。特に財政面から公的施設においては、必要最低限の設置になりがちになってしまう。さらに、それらを維持管理し、必要に応じて更新するのは非常に手間がかかる。一方で、危機管理の面からいざという時に役立つ重要な避難誘導標識という消防設備の観点からも、利用者の多い地下空間や公共施設にとって導入の必要性は高い。「しるべにすと」はそういった相反する問題をもつ避難誘導標識について、導入を希望している施設管理者とCSR活動を積極的に行いたいという企業の互いのメリットをつなぐことができる。こうしたつながりによって、避難誘導標識の設置を促進させ、施設の安全と施設を利用する不特定多数の人々の安心を向上させる取り組みを行うことができる。このような取り組みによって、一社ではなく地域の企業がまとまって協賛するという形で、協賛各社のコストを抑え、地域に密着した施設の安全性を高めることができ、企業にとっても出退勤の社員の安全を確保することにもつながる。

こうした取り組みが、CSRを活かす経営に一石を投じる事例になるのではないだろうか。
現在、数箇所の施設管理者と導入にあたって調整を行っているとのことであり、導入実績ができることを期待したい。また、導入後の施設管理者や協賛企業への追跡レポートも、今後掲載していく予定である。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター専門員 大脇桂)

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