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防災コラムVol.157

企業もクロスロードゲームで新型インフルエンザ対策

公開月:2006年6月

「クロスロードゲーム」が、新型インフルエンザ対策として企業でも実施された。今回はその模様をリポートする。

事業継続を考える上で重要なこと

真剣な表情で耳を傾ける参加者

2009年4月下旬以降、メキシコから始まった一連の新型インフルエンザ禍。日本国内でも感染者が急激に増えている。特に乳児~高校生までの若年層に感染者が多いことが大きく報道されている。企業内においても社員や家族が感染するケースが相次ぎ、事業を継続する上で、新型インフルエンザの感染拡大は大きな脅威といえる。そのため、新型インフルエンザに対応した事業継続計画(BCP)を策定する企業が増えている。BCPを策定する上で重要なことは、想定された事態に対してどのような対応が最も有効なのかを見極めることである。こうした見極めを考えることによって、その企業に即したBCPを策定することが可能となる。そのための1つのツールとして「クロスロードゲーム」が注目されている。

「クロスロードゲーム」とは

「クロスロードゲーム」とは、ゲーム形式による防災教育教材のことである。遊び方は至ってシンプルで、設問に対して各自がYes(○)かNo(×)で自分の意見を示し、多数決によって勝者を決定するというものである。

勝者はポイントを獲得し、その数を競うというものだ。なお、少数意見も貴重であるという観点から、その意見が1人のみだった場合には、その人にもポイントが与えられる。

大手物流会社でも実践される

談笑の中にも顧客第一を貫いて議論が交わされていた

2009年10月、大手物流会社の株式会社バンテック(本社:神奈川県横浜市西区)において、各部署のBCP策定を見据えた「新型インフルエンザ対策クロスロードゲーム」が実施された。この企業では既に会社全体としてのBCPは策定されていたが、各部署に落とし込んだ細かいBCPが必要であるとの判断から、各部の部長クラス30人程が、5つのグループに分かれて参加した。

このクロスロードゲームは「楽しみながら考える」ことを目的にしているため、各グループのテーブルにはお茶が用意され、ポイントも「カジノチップ」を使用するなど、場の雰囲気を和らげる工夫がなされていた。

一方で参加者の様子は、新型インフルエンザという重大なテーマであるためか、真剣な面持ちで司会進行役の話に耳を傾けていた。

そして司会進行役から「インフルエンザの感染を恐れて出社拒否をしている社員に出勤を命じるか」、「翌日の取引先との会議資料を作成していた社員がインフルエンザの症状を訴えた。すぐに帰宅を命じるか」、「強毒化したインフルエンザの流行国にいる海外派遣社員の帰国を認めるか」など、想定される場面について設問が出された。

会場からは、「訴訟問題になったらどうするのか」「他の人間でカバーできないのか」「本当に現地採用従業員だけで事業継続できるのか」「○○人ぐらいなら事業を継続できる」「○○人いないと事業は継続できない」などと、具体的なイメージをもった議論が行われた。最も印象的だったのが、どのグループも当初見られた固い表情がなくなり、終始一貫して「お客様に迷惑をかけないためには何ができるのか」を、明るく前向きに議論がなされていたことだ。

クロスロードゲームでみえてくることとは

参加者は一斉に自分の意見を○×で表明する

クロスロードゲームの特徴は、設問で出される想定の情報量が少ないということだ。つまり、参加者自らが条件を付与して結論を導かなければならないということだ。ただ、新型インフルエンザに限らず、危機が発生した直後というのは情報不足に陥る。その不足分をいかに埋めていくのかを考えることが危機管理のポイントであり、その気付きを促すのがクロスロードゲームの狙いでもある。

参加者はクロスロードゲームを通じて、正しい意思決定するためには多くの情報が必要であること、それを実現させるためには「情報を上げる文化」を構築することが重要であることを確認していた。また、各部の担当者が参加することによって、部門ごとに様々な業務があり、各部門でさらに細かいBCPを策定しなければならないことも改めて確認していた。

新型インフルエンザを含めた危機管理の入り口として、クロスロードゲームを活用してみてはいかがだろうか。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)

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