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防災コラムVol.179

動物との交通事故、そのときどうする?

公開月:2010年1月

運転中に動物をはねてしまったとき、いったいドライバーはどう対処したらいいのだろう。また、動物との接触を安全に避ける方法はあるのだろうか。知っておきたい、「そのとき」の対処法。

標識に描かれる動物は地域によって多種多様

地域によってはおなじみかとも思われるが、黄色地に黒縁、黒模様のひし形の道路標識をご存じだろうか。「警戒標識」と呼ばれ、道路上で警戒すべきことや危険を知らせることによって、注意深い運転を促すために道路管理者が設置する標識だ。これが全部で27種類ある。そのうちの1種類が「動物が飛び出すおそれあり」というもので、文字通りその地域に生息する野生動物が道路上に出没する恐れがあることを注意する目的で設置される。 さらに、そこに描かれる動物の多様さには驚く。「シカ」「タヌキ」「サル」「ウサギ」など全国各地で見られる動物のほか、「キツネ」「クマ」「ウシ」「ネコ」「カメ」「カニ」など、各地域特有の図柄が表示された標識がある。旅先などで、ついついその標識に目を引かれたという人も多いだろう。
しかし、いくら珍しい標識であっても警戒標識として設置されている以上、ドライバーとしては対象動物の飛び出しに注意をして運転する必要があるのは、言うまでもない。動物との衝突はもとより、衝突を避けようとして行った急ハンドルや急ブレーキなどによって思いもよらない事故が起こり得ることを理解し、慎重なドライビングを心がけたい。

野生動物の死亡事故を取り巻く状況

草葉の陰からいつなんどき動物が飛び出すかわからない。動物注意の標識があるところでは特にスピードを落として慎重な運転を。

道路上で発生する野生動物の死亡事故は「ロードキル」と呼ばれ、道路に動物が侵入することによって発生する。2002年に日本道路公団がまとめた資料によると、高速道路におけるロードキル件数は年間35933件にも上り、その4割をタヌキが占めているというデータがあるが、一般道での発生も含め、全国的にどの程度の事故が発生しているか把握できていないのが現状だ。絶滅が危ぶまれる希少動物もまた、ほかの多くの動物と同様に交通事故の被害に遭っていることが問題視されており、長崎県のツシマヤマネコ、沖縄県のヤンバルクイナやケナガネズミなど、特定の動物については環境省が調査を行っている。かくいう私も、過去に北海道釧路市郊外を運転中、国の特別天然記念物であるタンチョウヅルと衝突しそうになった経験がある。
これらのロードキルが発生する主な原因には、道路が建設されるなどして動物の生息域が分断されることにあると考えられており、道路への侵入を遮るためのフェンスの設置のほか、高速道路を中心に道路の下や上に動物が通行できる専用の設備を設置するなど、交通安全確保だけでなく野生動物保護の面からも様々な対策が研究、実施されてきている。

運転中に動物と接触してしまったら

沖縄にある「カニ注意」の標識。かわいい笑顔で「ひかないで」と訴える。提供/FM沖縄・吉田鉄太郎

どんなに注意をしていても相手は動物。どこに潜んでいて、いつ飛び出してくるか予測することは非常に難しい。自動車のライトを見て立ちすくむタヌキ、1頭飛び出してきたらその後に2頭目、3頭目と続いて飛び出てくるエゾシカなど、動物の種類によってその行動特性も異なる。では、実際に動物との事故に遭った場合、どうしたらよいのだろうか。
自分が事故を起こしてしまった場合、事故の発生を警察に連絡することが第一となる。その後は、現場の警察官の指示に従うという点では、一般の事故の場合と同じだ。人の死傷がなく器物(動物を含む)損壊のみの交通事故については、物損事故として扱われるため「免許証の減点」や「反則金」などの法的罰則は適用されていない。ただし、単独で発生した事故であっても人の死傷が伴う場合や、当然ながら無免許や飲酒などの悪質な違反行為がある場合は、この限りではない。なお、物損事故の被害補償については自賠責保険の対象外となるため、すべて任意保険から賠償される。事故に遭った動物については、現場の警察官によって自治体や道路管理者などの関係機関へ連絡がされ、動物保護と危険防止措置の観点から迅速に処置されるだろう。
また、事故にあった動物を道路上で見つけた場合も、ドライバーはその所有者や保健所、道路管理者などの関係機関へ速やかに通報をする必要がある。そのままにしておくと、事故の原因にもなりかねない。道路管理者への連絡先は道路標識などにも表示されていることも多いが、分からない場合は、警察や自治体へ連絡しても構わない。

注意したいのは、飼い主がいる動物と接触した場合だ。例えば、飼い主を簡単に特定できる鑑札や迷子札などをつけている動物に被害を負わせた場合、飼い主への報告や警察への通報を行わないと当て逃げとなってしまうほか、動物は飼い主の所有物という扱いになるため、損害賠償の請求を受ける可能性もあることを知っておきたい。

動物との事故を避けるためには

自動車と野生動物との事故は、その動物にとってはもちろん自動車を運転する側の人間にも大きな危険を及ぼす。筆者の出身地でもある北海道では、大型動物であるエゾシカとの事故が多く、その被害も車両の損傷だけに留まらず、最悪の場合は人の命を奪うこともある。また、たとえ小動物でも、衝突を回避しようとして思いもよらない大きな事故につながることがあるため、その危険性が小さくなるものではない。 私たち人間と野生動物の生活圏を明確に切り分けることができない以上、不意に接触をしてしまう機会は避けられないのが現状だ。自動車の速度を落としたり、場合によっては停車したり、他車にもその存在を知らせたりして、動物が無事に道路を横断できるよう配慮ができるような視野と心の広さをもって運転を行いたいものである。 タンチョウヅルとの出会いやエゾシカとのスキンシップの経験がある私は、夜間運転時、ライトに反射する空き缶の光を見るたびに、「動物の目だ!」と騒いでは「出てくるなよー…」などとぶつぶつ言いながら、これ以上ないくらいの安全運転モードに切り替える習性を持ってしまった。しかし、実はこれが一番有効な事故回避策だと思っている。

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 朝倉一昌)

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