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防災コラムVol.200

ボランティア初参加の政府総合防災訓練(後編)-気象情報を活用しよう-

公開月:2010年10月

2010年10月20日

2010年8月31日、9月1日の2日間にわたって行われた政府の総合防災訓練。前回に引き続き、ボランティアが初参加となったこの訓練のレポートをお届けする。

過去の積み上げがあってこそのネットワーク

訓練用ウェブページ「kouikinet.jp」に掲載された全国向けメッセージ

翌朝、9月1日午前9時15分、再び全国社会福祉協議会の会議室に集合。この日のメンバーは昨日のメンバーに5人が加わり、合計19人。
31日朝7時30分に東海地震発生前の「注意情報」が発表され、午前8時30分に東海地震が発生した想定で行われている訓練シナリオ。この日の訓練は、地震発生後すでに45分が経過しているところからスタートとなった。
昨日の訓練は、東海地震警戒宣言発令から、不足していた広域支援連絡要員の募集メールを発信したところで終えていた。(この訓練中に度々登場する「広域支援連絡要員」とは、被災地支援のための要員で、通称リエゾンと呼ばれている。)
この日はその応答状況を確認するところから始まった。「積極的に参加します」や「この段階では状況確認中なので要員は出せません」など、訓練ではあったが各団体からシナリオや実際の状況に基づいた返答が返ってきていた。集まったメンバーでその返答を確認しながら集計した。名古屋連絡所でとりまとめた西日本14名、東京連絡所に回答のあった東日本12名、計26名から参加申し出があったことになる。実際の「45分後」はこれほどスムーズにいかないとは思うが、静岡を支援するために県外から入る連絡要員にこれだけの申し出がすぐに入ってくるのは、やはり今までの活動の積み上げやネットワーク活動があってこそだと感じた。

支援にかけつけることすら難しい大地震

内閣府で行われた静岡との「テレビ会議」風景(写真中央が筆者)

東海地震規模(今回の訓練シナリオでは静岡県のほぼ全域で震度6弱以上)となると被害地域は広範囲にのぼる。ボランティアとはいえ「交通整理」なくしてすみずみまで支援が行きわたるような効果的な活動はできないだろう。おそらく、申し出のあった26名の広域支援連絡要員を県全域に効果的に送り込むことすら実際は相当困難だろうと思われ、仮に送り込めたとして、彼らの具体的な活動イメージは、ここに参加しているメンバー同様に幾分認識が異なる状況となることが予測される。

午前9時30分。静岡では政府現地対策本部の会議が開かれたと連絡が入る。おおよそこの時点になると「何か協力したい」といった被災地外からの想いを具体的な支援に結び付けるため、全国への広報が必要になる。もし「静岡県ボランティア本部」でそれが困難であれば「東京連絡所」がその役割を担う。全国の支援者向けに、これまでの状況を踏まえつつメッセージを書き起こす。

ここで、訓練シナリオの「東京連絡所」のイメージから少し離れて「広域支援連絡要員とはどういった人のことを言うのか」という、少し核心に触れる話をしてみた。各々の参加メンバーから、「先遣隊」「情報収集」「つなぎ役」など様々な言葉がでてくる。中にはこれまでの災害で活躍した具体的な人物の名前をあげて「**さんのような人」といった話も出てきた。近い将来に備えて先の26名より多くの要員が必要になるだろうし、後続も必要になる。自分たちは何となくわかっていても、ほかの協力者にその役割を依頼するとき、それを的確に説明する言葉が要る。いずれにしても現状は手探りに違いないが、ここはやはり被災地側の視点で考え、どういう機能や資質がふさわしいのか、今後きいてみるようなこともしたいという認識は共有できた。

訓練を通じて見えてきたこと

午前10時30分、内閣府に入った。会場からは850メートルほど離れていたが、ここの通信設備を使って静岡の現地本部に入っているボランティア本部のメンバーと「テレビ会議」をするためである。筆者を含め3名が静岡側の3名と会話した。訓練ではあるがまず互いの安否を気づかうところから始め、被害状況の共有やこの先のボランティア支援、そのための広域支援連絡要員を派遣してほしいといった要望があり、こちらからはとりまとめた派遣要員数を連絡した。最後に静岡側から全国の支援者に向けたメッセージを聴き、認識の共有をした。こういった会話も、アタマではわかっていたがこうして具体的に通信をつかって会話してみると随分リアリティを感じるし、足りない部分もよく見えてくる。

午前11時。再度「東京連絡所」の訓練会場である全国社会福祉協議会の会議室に戻る。書きかけだった全国向けのメッセージを追記・書き換え、ウェブにアップしたところで訓練としては終了。残りの時間を振り返りの時間にあてた。やはり話題は広域支援連絡要員(リエゾン)の話がほとんどではあったが、その一方でそれをバックアップする連絡所の機能についても幾つか意見があった。
政府訓練にボランティアが参加することの意味は大きい。ボランティアがこういった大規模な訓練に合同で、しかもダイレクトに情報のやりとりをする機会を持てたことは、今後に向けた課題抽出という意味でも大変貴重な機会だ。静岡や東海地震に限らず、ほかの地域での大規模災害への備えにもなるだろう。しかしながら課題も多い。前回からこうやって「広域支援」を主軸に今回の訓練をレポートしているが、こういった会話や用語そのものがいったいどの程度、近い将来知られることになるのか、どの規模や人数で共有できるものなのか不安でもある。そうは言っても、筆者は仮にも東京連絡所の訓練進行を担った身、今後も当事者の一人として引き続きこの課題に取り組みたい。

(文:レスキューナウ・岡坂健)

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