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防災コラムVol.201

自宅での“もしも”の事態に備えて「救急医療情報キット」-気象情報を活用しよう-

公開月:2010年10月

2010年10月27日

高齢化が進む地域住民の安心・安全を守る取り組みの一環として、自治体による「救急医療情報キット」の配布が全国的に広がっている。

救急医療情報キットって何?

東京都港区の「救急医療情報キット」。(画像提供:港区)

「救急医療情報キット」は、筒状の容器に個人の救急情報を入れ、冷蔵庫に保存しておくというもの。個人の救急情報というのは、緊急連絡先、かかりつけ医、緊急時の対応情報(持病や既往症など)、本人写真、健康保険証・診察券・薬剤情報提供書・お薬手帳の写しといったものである。冷蔵庫にそれがあるということがわかっていれば、例えば自宅で急に倒れたりした際、かけつけた救急隊員が冷蔵庫を開くと、その人の医療情報がすぐ手に入る。そうすれば持病や既往症がわかるので、適切で迅速な救命活動ができるだろう。

< 救急医療情報キットに入れるもの >

  • 救急情報(緊急連絡先・かかりつけ医・緊急時の対応情報・持病や既往症など)
  • 写真(本人確認ができるもの)
  • 健康保険証(写し)
  • 診察券(写し)
  • 薬剤情報提供書(写し)
  • お薬手帳(写し)

全国で初めて東京都港区が実施

ともに配布される救命救急活動のシンボルマーク。(画像提供:港区)

医療情報を冷蔵庫に保管するシステムは、米・ポートランド市で20年前から実施されており、高齢者等の救急対応に効果を上げていた。2007年3月に開催されたWHO会議に出席した際にそれを知った明治学院大学の岡本多喜子教授が、高齢化が進む日本でも実施できないかと東京都港区に相談。日本でも取り入れられるきっかけとなった。
相談を受けた同区は、東京消防庁や医療機関等と連携し、2008年5月、希望する区民(高齢者と障害者)を対象に、「救急医療情報キット」の無料配布を全国にさきがけ開始した。
玄関の内側や冷蔵庫にキットがあることを示すシンボルマークが貼ってある場合、救急隊員は冷蔵庫を開けて医療情報を確認し、迅速かつ適切な救命活動を行えるようになっている。また、事前に外部に知らせる必要もないので、個人情報の外部流出の恐れが低く、本人が保管するため、最新の情報への変更も容易にできるメリットがある。

全国の自治体などに波及

65歳以上の高齢人口が全体の43%で独居高齢世帯も3割近くを占める夕張市でも、2009年、500人の市民に救急医療情報キットを試験的に配布した。東京都港区の配布事業を参考に、市民有志らでつくる「ゆうばり再生市民会議」が助成金等を活用したものだ。モニターとなった市民に実施したアンケートでは、96%が「必要」と回答していたことから、2010年度は同市社協が事業を受け継ぎ、申し込み順に新たに500世帯限定で配布、来年度以降も継続するという。同様の取り組みは、日の出町(東京都)、静岡市、相生市(兵庫県)、北九州市、中津川市(岐阜県)等で全国的に波及している。

2009年版の消防白書によると、全国の救急出動約510万回のうち、救急搬送に占める高齢者の割合は48.3%に達し、全国平均で現場到着までは7.7分、医療機関収容までは35.0分かかっているとしている。
1分1秒単位の差を争う救急医療の現場では、病状が正確に伝わらないことは大きな弊害となる。災害や病状を説明できないような一刻を争う事態に、持病や服用薬などの重要な情報を正確に伝えることができる「救急医療情報キット」は、大いに役立つはずだ。また、隣近所の付き合いが少なくなり、高齢者や独居世帯が増えた昨今、「救急医療情報キット」を配布するなどの自治体の取り組みは、これからの救急医療にとっても鍵となるのではないだろうか。

(文:レスキューナウ危機管理情報センター 原田貴英)

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