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防災コラムVol.240

大津波からの教訓

公開月:2011年9月

2011年9月7日

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による大津波からまもなく半年。この大津波から学ぶこととは何か。

津波警報発表の改善を検討

津波は大きなタンクまでも押し流してしまう(宮城県女川町/撮影:レスキューナウ災害特派員 冨田きよむ)

気象庁では津波警報(大津波・津波)や津波注意報について、津波による災害の発生が予想される場合、地震発生から約3分で発表することを目標としている。
今回の東北地方太平洋沖地震でも、地震発生から3分後の14:49に、岩手県・宮城県・福島県の沿岸に大津波警報、北海道から九州にかけての太平洋沿岸と小笠原諸島に津波警報と津波注意報を発表した。ただ、この第1報では岩手県と福島県で予想される津波の高さは「3m」となっていた。つまり、実際に押し寄せた津波の高さよりも過小に発表されたことになり、これが避難の遅れにつながった一因とされている。また、大津波が沿岸に到達する前に「第1波 0.2m」との津波観測結果が発表されたことも、避難の遅れや中断につながったとされている。
こうしたことを受けて、気象庁は津波情報の発表について改善検討を行い、このほど中間のとりまとめが公表された。
それによると、マグニチュード8.0を超える巨大地震などが発生した場合には、予想される津波の高さの発表は行わず、「巨大な津波のおそれ」などの表現にすることが検討されている。また、津波第1波の観測結果についても、第2波以降の高さが第1波の10倍になることもあるため、避難行動を抑制しない発表方法を検討することとなった。
この気象庁で現在運用している「予想される津波の高さ」についても、0.5m・1m・2m・3m・4m・6m・8m・10m以上の8つに区分されているが、今回の大津波を受けて、予測誤差を勘案した「5段階程度の区分」に改善することで検討されることとなった。なお、この区分の見直しには、各自治体で広報しているハザードマップや避難所の指定とのリンクが必要であることから、気象庁では内閣府中央防災会議の議論を踏まえて検討することにしている。

住民の心構え

木造の建物はすぐに流される。鉄筋コンクリートできた建物の高い階に避難しよう(宮城県女川町/撮影:レスキューナウ災害特派員 冨田きよむ)

気象庁で津波警報発表の改善を検討している中、私たちにも心掛けなければならないことがある。それは最大限の避難行動を徹底するということだ。
2010年2月、南米チリで発生した巨大地震に伴い、日本列島にも津波が押し寄せた。この際にも、東北地方の太平洋沿岸に大津波警報が発表された。
総務省消防庁は、このときの住民避難についてアンケート調査を実施した。調査は、大津波警報が発表された青森県・岩手県・宮城県の36市町村の中で、避難指示または避難勧告が発令された地域の住民に対して行われた。
その結果、全体の98%の住民が「大津波警報を見聞きした」と回答。ところが、全体の57.3%の住民が「避難しなかった」と回答した。避難しなかった理由として、「自宅が高台にあり津波による浸水のおそれがないと思った」・「自分のいる所が2階以上の高さのあるところだったので、安全だと思った」などがあった。

今回の大津波とチリ地震に伴う津波を単純に比較することはできない。ただ、気象庁や各自治体から発表される避難の呼びかけに従うことは、助かる可能性を高めることにつながる。一方で、「自治体で備えをしているから」・「過去の津波のときも大丈夫だった」と考えることは、自分の命を失いかねないということを、今回の大津波被害で誰もが強く実感したはずだ。
また、自身で危ないと判断した場合は、より安全な場所へ避難する判断力も求められる。この判断力を身につけるには、事前に避難経路を確認するとともに、途中に危険箇所がないか、避難場所が危なくなった場合の代替避難場所を確認するなど、ひとつひとつ頭の中でシミュレーションしなければならない。

津波による被害軽減は、気象庁・自治体・住民の歯車が上手くかみ合ってこそ実現できる。情報を受け取る側の私たちも、今回の大津波被害を風化させることなく後世へ伝え、「揺れがおさまったらすぐ避難」を実践しなければならない。

 

(文・レスキューナウ危機管理情報センター 三澤裕一)

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