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防災インタビューVol.159

人と輪を ~防災のまちづくり~

放送月:2018年12月
公開月:2019年6月

葛西優香 氏

HITOTOWA
執行役員/防災士

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

サッカー防災

私たちHITOTOWAでは、防災をいろんな手法を使って伝えたいということで、いろいろなプロジェクトを立ち上げていますが、その中で大変ユニークなのが「サッカー防災」です。もともとのきっかけは、社長がサッカーが好きということもあるのですが、真っ向勝負で防災を伝えても、なかなか皆さん受け入れてくれないので、ちょっと楽しく、世界中で愛されているサッカーを使って防災を伝えることができないかということで立ち上げたプロジェクトです。

これはどういうものかというと、サッカーをしながら同時に防災の知識も身に付けられる「ディフェンスアクション」というワークショップのプログラムで、今開発しているところです。ディフェンスというのはサッカーでいえば守備、アクションというのは行動ですので、防災視点でいうと「自分を守る行動」ということで、サッカーをしながら防災の行動を学ぶというものです。例えば、今メニューが15個ぐらい出来上がったのですが、まず1つ目に、「パスストック」というゲームがあります。これは、サッカーでいう対面パスをするのですが、パスを普通にポンポンと相手に渡すのではなくて、「パスストック」ですので、ストック、備蓄品の名前を言いながらパスしたり、蹴ったりします。渡すたびに「簡易トイレ」「サランラップ」というように、備蓄品を言っていくわけです。最初は何も見ずに言い合いますが、そうすると5回ぐらいで止まってしまいます。その後にこんな備蓄品がありますよという一覧を見ていただいて、ちょっと覚える時間を設けます。それを覚えて、またパスを始めていただいて、どこのチームが一番多くパスを回せたかということで競い合います。そういうふうに体を動かしながら覚えると、頭に入りやすいという利点もあります。参加された方が、「楽しかった。そういえば備蓄品の用意をしなきゃね」と言ってくれるような一石二鳥なプログラムになっています。  

この「サッカー防災」は、最近は多国籍防災ということでテーマを設けたりとか、要配慮者用のテーマを設けてゲームを作ったり、いろいろなテーマで行っています。特に、多国籍防災は2020年のオリンピックに向けてのもので、最近では、外国人の働く環境も変わってくるだろうと言われていますが、どんどん外国人が日本に増えてきています。北海道の胆振東部地震の際にも、外国人の方が避難所で、「ノーイングリッシュ」と言われて非常に焦ったという記事も出ていましたが、やはり外国人の方も災害時に焦らずに行動できるように、日本人がきちんとコミュニケーションを取れるような土台作りを今からしないといけないと思っています。英語によるコミュニケーションを取る方法やジェスチャーなど、外国人の方が分かるような伝え方や一緒に逃げる方法をディフェンスアクションで考えるというようなこともしています。

先日もマレーシアから来た留学生と防災のことについて話をした際に、ジェスチャーで「避難所では大声を出して話してはいけません。周りの方の迷惑になるから」というようなことをメッセージとして伝えたら、「なぜ大声でしゃべったら駄目なのか?マレーシア人はそれぞれが個々で生きているので、周りで誰かがしゃべっていても何も気にしない」という答えが返ってきました。日本人はやはり近くで他人が大声でしゃべると眠れない、周りを気にしてしまうというような文化的な違いがあったり、価値観の違いもあるので、サッカーを通して、ディフェンスアクションをしながら会話をしていくことでお互いの文化の違いを学んでいくことを繰り返し行うのが、このサッカー防災になっています。

このようにいろいろなテーマを設けてディフェンスアクションを開発しながら、それと同時に、一緒にやってくれる企業や行政も探していたところ、最近、文京区の防災訓練でブースを設けていただいて一緒にやったり、兵庫県でJリーグのチームと一緒になって、Jリーグの試合の前にこの防災のディフェンスアクションをやって、Jリーグのサッカー選手の方々ともコラボレーションをして取り組みを進めたりしています。

チャリティーイベント「コロカップ」

サッカー防災のひとつとして、現在「コロカップ」という大会を年に1回やっています。この「コロカップ」は、ボールがコロコロ転がるという意味でコロと付けているのですが、これはチャリティーイベントになっていて、参加してくださった方々からお預かりした参加費をそのまま復興支援ということで、福島や南三陸に送っています。

このプロジェクトの中で、陸前高田のグラウンド整備ということもしています。陸前高田で津波の被害にあった所に、みんなが運動できるグラウンドを作ろうということで、加藤久さんという元サッカー選手の方がグラウンドを作られましたが、その整備をHITOTOWAのこのプロジェクトがお手伝いさせていただきました。せっかく作ったグラウンドも放っておくと芝生が乱れてきたりするので、このコロカップで集めたチャリティー金をそのままお送りして、グラウンドの清掃や整備に使ってもらっています。

このように、サッカー選手の方と一緒にコラボレーションすることで、私たちが単に「防災、防災」と言うよりも、「あのサッカー選手に言われたから」ということで皆さん本当にメッセージをしっかりと受け取ってくださっています。小野伸二選手や秋田選手や小倉隆史さんと、たまたま昨日、このコロカップを一緒にやらせていただきました。小倉さんがサッカーのトレーニングをコロカップの中でやってくださった際に、「ドリブルをするときは自分の真下だけを見ていても絶対に駄目なんだよ、周りを見渡しながらちゃんとパスをする方向を考えなさい」ということを教えてくれましたが、このことは、サッカーだけでなく、防災についても言えることです。災害時も自分のことばかり考えているのではなく、きちんと周りを見渡せる人になることが大事ですので、やはりサッカーと防災は結構リンクするということを実感しました。このように、私たちもこのコロカップを通していろいろ学ばせていただいています。

この防災サッカーでは、サッカーを通してディフェンスアクションをするということで、特に女性の方など、サッカーをしたことがない方にとっては難しそうにみえるかもしれませんが、トレーニングを含めて行いますし、軽くパスをしながら備蓄品の名前を言ったりというアクションなので、楽しく体を動かす程度で参加できます。実は72歳のおばあちゃんも参加してくれて、「私サッカーしたことはなかったけど楽しかったわ」と言って帰られましたし、多世代に、男女問わず受け入れてもらえるコンテンツだと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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