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防災インタビューVol.226

特別支援学校だからこそできる防災減災について

放送月:2024年6月
公開月:2025年2月

湯井 恵美子 氏

一般社団法人 福祉防災コミュニティ協会 理事
福祉防災上級コーチ

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

ひとり一人の個別の状況を大切にするために①

特別支援学校は、先生方も保護者も子どもたちも一生懸命防災に取り組んでいます。この障がい児者の防災対策については、国も行政も頑張っています。令和3年度に災害対策基本法を改正して、個別避難計画を市町村の努力義務としました。今、全国の市町村では丁寧に計画の検討が始まっています。

個別避難計画は、障がいがあったり、高齢や病気などで避難に支援が必要な人に対して、予めその人の適切な、健やかな避難生活を送るのに適した避難場所を決めておき、その避難場所までの避難を開始するタイミングや手段、一緒に付き添ってくれる人などの情報をまとめておくものです。先にお話しした、特別支援学校の個別の教育支援計画に防災情報を掲載する取組みというのは、この個別避難計画とよく似ています。特別支援学校では、在学中にまとめた情報はサポートブックとして卒業後の所属先に引き継がれることになっています。その情報をもとに、今度は住んでいる地域で個別避難計画を作ることができます。在学中から防災に取り組め、分からないことは先生と相談や指導が受けられ、学校で訓練も定期的に行われるので、ぜひ全ての特別支援学校で取組みが進めば良いなと思っています。

この個別避難計画ですが、これは当事者が主体となって、保護者や地域の役員さん、あるいは福祉関係者は当事者が自分で決める際のお手伝いの役割を担います。障がいや病気のことは日頃から様子をよく知っている福祉関係者は、実際の避難支援をしてくれる地域の人たちにとっては福祉情報の先生の役割です。

しかし、決して当事者を助けてもらう計画ではないと考えています。なぜなら、避難が必要な災害においては、障がいがあってもなくても、そこにいる人たちみんなに関係するからです。みんなが避難するのですから、ちょっとだけお互いに気を使いながら、防災情報を共有したり、一緒に車に乗せてくれたり、手を引いたり、荷物を持ったり、声をかけ合ったり、ということが最も大切な要素だと思います。なので、大阪の吹田市や東大阪市では、障がいや病気があってもなくても「みんなで助かる」個別避難計画、として取組みを進めています。

ひとり一人の個別の状況を大切にするために②

高知県のすずめ福祉会では、親が会が中心となって、この個別避難計画を当事者と地域の人をつなぐ情報共有カードとして、どんな情報ならば当事者とその家族は障がいや病気の情報を出せるかを調べてくださいました。現在この福祉会では、A4サイズの大きさのカードに、ニックネームと呼びかけの言葉、例えば、「ユキさん、一緒に逃げよう」という言葉。この人がどこに逃げようとしているのかが分かるように避難先の名前と写真、お手伝いしてもらいたい内容を載せています。生活上の支援内容はとてもデリケートな情報なので、避難所に入ってから責任者に見せられるよう、そのカードの裏側に記載されています。利用者は毎日、この情報が背中に貼り付けられたビブスやTシャツなどを着て作業をされています。

また、倉敷市真備町箭田地区のまちづくり推進協議会では、西日本豪雨災害では「あの時、みんな支援が必要だった」教訓をもとに、みんな支援が必要になるならば、個別避難計画として取組んでいたヘルプカードは地区全員で持とうという取組みがされています。やはり、人にあまり見られたくない情報は折りたたんだカードの内側に記載する工夫がされています。この箭田地区では、みんなで助かるためには好き勝手に避難しようとするとかえって危ないということで、先ずは自主防災会の末端の単位、30軒から50軒くらいで「情報をとりあい」一時避難場所のごみ置き場にあつまって、避難を開始する、というルールを設けています。なので、情報伝達訓練は新型コロナの間もずっと続けるなど、経験に基づいたとても実効性の高い取組みを行っておられます。

個別避難計画の取組みにおいては、支援を受ける側が負い目に感じることは何一つありません。要支援者がいるおかげで、みんなで助かる状態を常に考え、行動するための訓練までできる制度があるのです。みんなで気遣いあう、気付き合う状況をつくるきっかけとしての個別避難計画なのです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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