気象情報をビジネスに活用する
気象情報を高度に利用しようということで、官民共同で「気象ビジネス推進コンソーシアム」という組織を立ち上げています。私もメンバーとして活動しています。気象情報は防災だけではなく、例えば生産調整や店舗の来客予想に活用できるなど、様々な使い方が広がってきています。
特に人間の行動というのは気象情報に左右されます。例えば、寒くなってくると「そろそろ鍋が食べたいな」と思ってスーパーに行くと、入り口のところに鍋の材料が陳列されていることがあります。これは、気象情報をうまく使って商品の陳列方法や品揃えを変えているからです。当然、そのような対策をするには事前に仕入れる商品の発注をしなければなりません。ということは、寒くなる前に準備するために気象情報が使われています。
さらに遡ると、商品の生産者が今年の冬はどのくらいの量を用意しておけばいいのかと考えます。暑い日がしばらく続くのであれば、もう少し夏向けの商品の生産を続けようと判断できますが、生産を続けている間に急に寒くなって商品が余ってしまった場合は廃棄ロスになってしまいます。シーズンの終わりを見極めて商品の生産終了の判断をする際にも気象情報が結構使われています。
しかし、様々な分野で気象情報を活用するためには気象情報だけでは難しく、例えば商品がどの程度購入されたのかなどの気象以外のデータと上手く掛け合わせることによってはじめて分析が出来るようになります。 「気象×〇〇」という形で、様々なビジネスも手掛けています。具体的には、来客数の判断、アパレル等の商品の生産量の分析、自動販売機の商品切り替え時期の判断等です。夏から冬にかけて、いつ頃からホットドリンクを入れるのかについては、冷たいドリンクと違い、ホットドリンクは品質劣化があるため、販売側ではあまり早く切り替えたくないのですが、寒くなると温かいものが飲みたくなって自動販売機で探しますよね。そのタイミングでホットドリンクが販売されていると売れるわけです。切り替え時期の判断については10日から2週間程度先までの気温の上がり下がりを推測しながら準備されています。
長期気象予測データ提供による今後の展望
2024年から、日本気象協会は2年先までの予報を提供できる許可を得ることができました。このことは今後社会を大きく変えていくと思います。というのも、様々な企業では秋から冬にかけて翌年の生産計画あるいは経営計画を考えられます。その際には売り上げデータを基に、今年はこれくらい売れたから来年も売れるだろう、今年は猛暑だったけど来年はどうだろう、今年が異例だったのなら数を少し減らす必要があるな…など、なかなか決められなかった点もあったと思います。
そのような経営計画に関しても気象情報を使用した方が、長い目で見ると効果的であることが分かってきています。エルニーニョやラニーニャという海水温の大きな変動については1~2年先まである程度は分かります。気象データは海外の気象予測もできますので、海外からの輸入が多い日本では商品や材料の調達先を多角化するなどの判断にも活用できます。私共も力を入れていますので、気象情報の活用について企業経営者の方にぜひ検討いただきたいと思います。
さいごに
気象情報は、防災も含めて情報化社会の中で比較的その未来が信用できる情報であると言えます。予測に関しては外れることもありますが、気象情報を意識してどの程度まで許容するかというのが大切だと思います。気象情報が外れたからと言ってクレームで終わらせるのではなくて、逆に外れそうな時にはそのような情報をうまく活用し、予想よりもこうなっていますというのを含めて情報提供していきたいと思っています。