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防災インタビューVol.221

チリと日本の防災

放送月:2024年1月
公開月:2024年6月

渋谷 和久 氏

前 チリ大使
前 特命全権大使

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

チリのサーモン養殖

実はチリは様々な面で日本と関係があります。サーモンの養殖の話をさせていただきましたが、実は南半球ではサーモンの養殖は難しいと言われていたのです。日本の場合は、川の上流に稚魚を放流して、大人になって川を登ってきたところを捕まえますが、南半球は稚魚を放流しても何故か1匹も帰って来ないそうです。そうすると育てようがないので、囲って生け簀で育てるしかありません。しかし、どうしても狭い空間ではうまく育たなかったり、あるいは海が汚れるということがありなかなかうまくいきませんでしたが、日本の技術指導で上手にサーモンを育てることができるようになり、今ではチリ最大の輸出産業になっています。

日本のシャケ弁当や回転寿司のサーモンなどはチリ産のものが多いと思います。日本での評判が良く需要も多いのですが、残念ながらこれ以上チリは生産を増やせないといいます。何故なのかと聞いてみると、やはりチリは日本と一緒で、海洋国家であり海洋の環境にとてもセンシティブです。海で養殖をするとどうしても餌の食べ残しが溜まったり、糞が溜まったりして海が汚れてしまう。海を掃除機で清掃すると巻き上げてしまい環境に悪いということでした。従ってこれ以上はもう増やせないということでした。

なんとかならないかと色々考えているうちに、JICAという組織の紹介で、日本の長崎県の中小企業が海の砂を巻き上げずに海底を掃除する掃除機を開発したということで、これはチリでも使えるのではないかと、2024年の初めにJICAの支援で長崎県の中小企業の人がチリのサーモンの養殖で使えるかどうか、実証実験をしているところです。これがうまくいくと、サーモンの生産が増えて日本でもたくさん食べていただけるのではないかと思い期待をしているところです。

チリの気候

私がいたチリのサンティアゴという都市は盆地で天気が非常にいいところです。1年間で雨の降る日が10日あるかないか位です。日本のスーパーで販売されている野菜の種はかなりの部分がチリで作られています。山頂の郊外に種を製造している日本の会社が所有する農場があり、カボチャなど日本の野菜を育てています。そこでできた野菜から種を取って日本に輸出しているのですが、日本で作るよりもいい種が取れるそうです。それは何故かというと、やはり日当たりが良くて大雨が降らないというチリの気候が生産に適しているからです。日本では収穫期に台風などの被害を受けることが多いのですが、チリの場合はそのような不安がありません。

ところが、2023年は異常気象でチリでも6月に雨が結構降りました。日本では普通の雨量ですが、チリではこの程度の雨でも川が大氾濫してしまいます。チリでは水不足で川には水がちょろちょろとしか流れていないので、まさか氾濫するとは思いませんでした。元々雨が少なく山もハゲ山だらけのため、ちょっと雨が降ると川が溢れてしまいます。

サンティアゴ市内は無事でしたが、郊外の方では水が溢れて様々な被害が出ていると連日テレビのニュースなどで報道されていました。

この程度の雨でと思ってしまいますが、被害を受けた人にとっては、やはり大変な大災害なのです。我々もすぐにチリの担当部局に支援の申し出をしたのですが、この程度の雨で国際的な支援は結構ですと言われてしまいました。いずれにしても、堤防のない川が非常に多いので、堤防を整備するなどの指導をこれから行っていこうと考えているところです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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