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防災インタビューVol.969

阪神・淡路大震災から学ぶ日本の防災

放送月:2025年3月
公開月:2026年4月

渋谷 和久 氏

関西学院大学 総合政策学部 教授

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

阪神・淡路大震災が残した宿題 ②住宅の再建支援

阪神・淡路大震災では建物が全壊、半壊になった家は25万棟もありました。住宅を失ったら再建しなければならないのですが、これには多くのお金がかかります。大きな災害があると全国から義援金が寄せられることはご存知だと思います。例えば、平成2年の長崎の雲仙普賢岳の噴火による災害で家をなくした方がたくさんいらっしゃったのですが、1世帯あたり3000万円の義援金が集まりました。それから、北海道南西沖地震で津波の被害があった北海道の奥尻島では、1世帯あたり2500万円程の義援金が集まり大体の家を再建することが出来ました。

しかし、阪神・淡路大震災では被害者の数がものすごく多かったので、義援金は一世帯あたり40万円程になりました。40万円では家が建てられませんので、行政が支援するべきではないかという議論が起きました。住宅の耐震化についても同じなのですが、住宅は私有財産に当たります。個人財産である住宅の建て替えに税金を使う事が出来ないという問題が立ちはだかりました。

1995年に阪神・淡路大震災が起きた後、支援できるような制度を作るべきだと多くの声が上がり、議員立法で見舞金のような形で100万円配るという制度を作る事ができました。しかしこれでは住宅の再建には全然足りませんので、住宅の再建そのものを支援する制度を作るべきだということが宿題になっていました。

私自身、その宿題の担当になったので、毎週のように神戸に行って被災者の方にお話を伺いました。新しい制度をぜひ作って欲しいと言われましたが、既に震災が起きた後なので本人たちには適用されません。「自分たちはいいけれども、これから大きな災害が起きた時に被害を受けた人たちのために、100万円ではなく、せめて300万円支援するという制度を作ってください。」と涙ながらに言われました。

財務省とずっと議論してきたのですが、最終的に住宅の再建について支援することは出来ないとの結論でした。被災者が居住する住まいの確保をすることは政策として大事なことだと感じましたので、住宅再建の支援ではなくて居住安定のための支援なので、家をなくした人だけでなく賃貸住宅に住んでいた人がまたアパートを借りる時の費用も支援すればいいのではないかと、災害直後の政策としてすごく大事なことであると話をして、最終的に政府提案の法律で「被災者生活再建支援法」という、住宅が全壊した人には300万円支援されるという制度ができました。これはその後、東日本大震災や能登半島の地震でも適用されていて、この時に作ってよかったなと本当に思います。

被災者生活再建支援法の課題

被災者生活再建支援法はその後、私の後輩たちが適用条件の緩和をしてだいぶ使いやすい制度になっているのですが、支援額の上限が300万円というところは変わっていません。300万円では家を建てられないからもっと増やすべきだという議論が一部にあるのですが、これは専門家によっても意見が分かれているところです。

本来ならば、兵庫県が作っているような住宅共済という保険などでカバーするべきものであり、また家がつぶれないように耐震改修を本来するべきであるので、事後に支援金がたくさん出ると分かると事前の備えをしなくなるのではないかと、特に経済学者の方が心配されているそうです。それから、この被災者生活再建支援金というのは、全国の都道府県、47都道府県が基金を作り基金から支出をして、そのうちの半分を国が補填するという形を取っています。これから南海トラフのような巨大地震が発生した場合にものすごい数の住宅被害が出る事が想定されているのですが、支援額が700万円などに上がってしまうと、基金ではとても足りないということで、全国知事会でもただ金額を上げればいいということではないのではないかと、とても難しい問題になっています。

私自身も大学の授業で学生たちにどう思うか聞いてみたのですが、やはりみんなこれはすごく難しいと答えていました。能登半島の地震の時にも国会で支援金をもっと上げるべきだという議論になりました。岸田総理の時代ですが、最終的には住宅再建支援金そのものは300万円のままにして、新しく住宅を作る際に住宅ローンが組めない、借り入れができない方(高齢者や収入が不安定な方)向けの交付金として別途支給するという形で折り合いをつけました。

阪神・淡路大震災が起きた後、兵庫県が住宅再建共済制度というのを作って、これを全国に広げようと言っていたのですがこれがなかなか広がっていません。
兵庫県の中でも加入は17万戸で、持ち家の1割しか制度を利用していないので本来ならばこういう制度こそ広げるべきであるのですが、これからの課題だと思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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