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防災インタビューVol.24

事前の備えで安心・安全な暮らしを

放送月:2007年11月
公開月:2008年6月

山口 豊 氏

(社)日本技術士会 防災支援委員会

緊急事態への準備

人は危険情報に鈍感だ

災害時に避難指示や命令が出て避難行動する人は5割もいません。人間には、ある程度の異常までは、正常の範囲として遊びを持たせて処理をする「正常性バイアス」が働くからです。ところが、この「正常性バイアス」が、時として、避難のタイミングを奪うのです。先ほどの、豪雨時の意識にもありました。

事例として、韓国のテグ市で起きた地下鉄放火火災は、死者196人、負傷者147人の犠牲者が出ました。死因のほとんどは、窒息死及び焼死です。多くは、有毒ガスを吸い込んだ中毒死です。火災の状況は、放火された車両の噴出炎の温度は、500度に達し、反対ホームの電車の窓ガラスが瞬時に割れ、炎と煙が一斉に入り込み、数十秒で充満した。そして、出火から4分で駅構内が黒煙に包まれたのです。

車掌が「しばらくそのままで待ってください」と状況にアナウンスしたので、乗客は、侵入してくる煙にじっと我慢して、そのままでいたため大惨事になったのです。正常性バイアスが支配したためです。

大災害時に起こる危険な心理状態
国道17号川口町天応 集水地の盛土崩壊

大災害時には、被災者の多くは、「失見当」の状態に陥ります。経験したことのない悲惨な状況を目のあたりにして、ここはどこで、今何が起きているか、どうしたら良いか分らないという一種の心理パニック状態に陥ります。阪神・淡路大震災では、あの状況の中で、多くの大学受験生が受験に向かったといいます。アメリカの同時多発テロの救援に駆けつけた消防士にも「失見当」の状態になったと言います。二次災害の危険性もあります。被災現場の人々が互いに気をつけて声を掛け合うことで、もとに戻ります。

もうひとつは、パニックです。災害時に人々が異常行動を起こす社会的混乱です。自分の行動が最善と信じ、自分で意思決定し、行動するわけです。

  1. 信頼する情報源からウソの情報が流された関東大震災の虐殺事件
  2. 危険から脱出するため狭いところに多くの人が集中した明石市歩道橋圧死事件
  3. 用意された資源に多くの人が殺到した金融機関の取付騒ぎ、石油ショック買いだめ等などもあります。

パニックの防止には、次の条件のうち、いくつかを成立させないことです。第一に、実際の状況より危険の切迫度を強調しない。第二に、避難路、非常口を分りやすく表示、第三に、利用可能なことを知らせる。第四に、防災訓練を行い、適切な情報と正しい誘導ができるようにする。

火災時の対応について

火災死亡は、高温ガスの呼吸が大半です。気道熱傷死亡率が100%になるのは、呼気温度70度で15分、80度では12分、90度では9分といわれています。

木造家屋の火災実験では、数分で200度、6分後には600度以上となります。このため、逃げ道を複数考え、高温ガスを吸わずに火災現場からは一刻も早く脱出することが重要です。

日常生活の危険性について

日常利用する施設の問題
川口町西倉 道路崩壊 風化して脆い表層

新幹線
P波検知後、ユレダスシステムが作動しても列車が止まるまで、1.5km走行します。神戸では震度7の場所で93%の列車が脱線しています。震度7では、脱線、転覆の危険性は高い。新潟県中越地震では脱線しました。一方、岩手宮城内陸地震では、ユレダスが機能し、安全に停止しました。

地下鉄
地下の揺れは地上の半分といわれますが、地盤の条件にもよります。神戸では、条件の悪い所では、震度7では中柱の破壊、側壁損傷が続出しています。また、地盤条件の悪い場所、固い地盤との境界箇所も危険性は高いと考えられます。

エレベータ問題
千葉県北部地震で、震度5弱で、多くのエレベータが止まり、閉じ込め騒動が起き、その後、多くのビルでは、地震感知装置を付け、地震を感知すると最寄階で自動停止し、ドアが開きます。しかし、すべてのビルに設置されているわけではありません。誤操作や閉じ込めの可能性もあります。エレベータ内の閉じ込めは深刻な問題になります。閉じ込め時間の長期化に備え、トイレ対策などエレベータ内の非常用品の設置が必要です。また、エレベータが最寄階に停止した場合、ドアが被災すれば脱出できません。エレベータホールの雑壁の強化も必要になります。

石油タンク群
海溝型のような長周期地震の場合、スロッシング現象で火災が発生します。化学消防車、消火剤の不足で消火が困難となることが予想されます。タンクが被災すると、地域住民の避難など地域への重大な影響が予想されます。

建物からの落下物
これには耐震化が及ばないものが多くあります。建物の外装材、外壁、屋外広告物、窓ガラス、大空間建築物の吊物、天井照明、音響設備、天井パネル、エレベータの錘、電柱・信号機の倒壊、変圧器等々多くの危険物があります。

マンションの防災上の問題
長岡高専内  盛土石積みブロック崩壊

マンションの被害は、RC建築物は、1971年建築改正前では、一般建築で10数%、ピロティ付で30%以上が倒壊を含む大被害を受けています。特にピロティ付は、どの時期の建築でも一般の建築の2~3倍の被害があり、防災上のリスクが大きいといえます。1981年の新耐震設計により、被害率は一般建築で4%、ピロティ形式で7%に改善されています。

マンションの建物構造体の耐震性の問題とともに、非構造部材であるエレベータホール、玄関まわりの「雑壁」、給排水設備などの設備機器の耐震性が重要です。建物の被害が少なくても、非構造部材や設備機器が支障あると生活できないわけです。エレベータホールの壁が損傷すると、閉じ込め事故になります。

阪神大震災による設備機器の被害は、給排水設備75%、照明器具74%、電気配管類25%、電話・通信施設20%以下です。また、エレベータ被害は、調査した約半数が被害を受けています。錘の落下、ロープ損傷、ガイドシュー変形、ドア周り損傷などですが、東京でも震度5弱の千葉北西部地震で6万4千機のエレベーターが止まり、78件の閉じ込め事故が起りました。東京湾北部地震の想定では、9100件の閉じ込め被害が予想されています。

マンションは、プライバシーが高いようですが、1枚の壁や床があるだけで全世帯が同居する1戸建て住宅の性格を持っています。水道も電気もガスも共有していることを理解する必要があります。災害発生時には、公的な救助・救援は期待できないことから、日頃からプライバシー抜きに助け合う体制が欠かせません。

電気、水道、ガスなどマンションのライフラインは、マンションの縦方向の各階の住戸につながるパイプシャフトが共有部分であり、その存在がマンション特有の管理上の問題とともに大地震発生時に上下階の各戸に被害を及ぼします。トイレについても、上層階の排水管が使えても、下層階の排水管や下水本管がやられていると、汚水が溢れることになり、損傷状況を調べてからでないと使えません。マンション敷地内の下水管の修復は、管理組合で対応しなければ行けません。行政の対応は、公道区間となりますから、事前に工事業者と緊急時の復旧対応について、協議しておくことをお薦めます。

マンションと家具倒壊について見ると、マンションは上層階ほど地表の揺れより激しくなります。1階が震度6弱の場合、8~9階では震度7となる。家具の転倒・落下、散乱が激しくなり、負傷者も多くなる。阪神淡路大震災では、マンション下階(地下、1階)の被害は家具転倒20%、負傷率7%に対して、中階(2~8階)で40%が転倒、負傷率17%、上階(8~9階)では家具転倒率60%強、負傷率25%と高くなります。このため、上層階ほど家具の転倒による被害が大きくなります。阪神大震災では、本震が10秒あり、その後、余震は比較的少なかった感じがします。中越地震(M6.8、震度7、死者40人)の余震は、阪神大震災の2倍の数がありました。マンション居住者は、何時まで続く余震に避難所の生活を余儀なくされた方が多いのです。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。