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防災インタビューVol.182

コミュニティを守る「地区防災計画」

放送月:2020年11月
公開月:2021年3月

金 思穎 氏

専修大学 人間科学部研究員
専修大学 社会知性開発研究センター客員研究員
福岡大学法学部 非常勤講師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

常識が通じない災害への備え

コロナの話からは少し離れますが、常識が通じない水害にどう備えるかということで、「祭りと防災」のお話をしたいと思います。祭りには先人の知恵によって、その中に防災機能が埋め込まれていることがよくあります。例えば、また福岡市の事例ですが、私の教え子たちも参加している「博多祇園山笠」というお祭りがあります。300万人以上の観客が訪れる日本最大のお祭りです。博多小学校区のコミュニティの伝統的な祭りで、毎年7月に開催されます。実は、これは「豪雨の時期に備えるためだ」と言われています。山笠を担ぐ「男衆」や、その男衆の妻である博多女性「ごりょうさん」たちが祭りに向けてコミュニティ内の連携を強めている時期ですし、この活動によって豪雨に対応しやすくなっています。実際1953年の大水害の際には、祭りの最中に男衆が法被姿で土のう積みを手伝い、2次被害を防いだという記録があります。常識が通じないような災害が続く中で、これまで意識されることが少なかった祭りの防災機能がこれから生きてくるかもしれません。

この博多祇園山笠は、実は1241年に疫病対策のために始まりましたが、現代ではお祭りを疫病対策に結びつけて考えることはないのかもしれません。コロナ禍のため、他のお祭りと同じように、大勢の観客を集めて見せるような祭りが中止になる中で、今年の博多祇園山笠も中止になりました。ただ、あまり知られていないのですが、例えば、毎年行われてきた疫病退散のために始まったと言われる「祇園大祭」や「注連(しめ)下ろし」のような神社やコミュニティの神事は、目立たない形で継続されています。このような年中行事の伝統を継続していくことの重要性を最近強く感じています。

地名にみる災害への備え

災害の名残を示す地名にまつわるお話をしたいと思います。神奈川と東京の境に、多摩川という川があるのをご存じだと思いますが、川の周辺の地名とか駅名には、結構似たような名前が多いことに気付きます。例えば「丸子」「瀬田」「野毛」「等々力」などがそうですが、これはなぜかお分かりでしょうか? 実はこれは多摩川が「暴れ川」であることが原因です。川が氾濫を繰り返して、川の流れが時代とともに変わったため、その名残で似た地名、同じ地名が各所に残っています。日本全国でも、同じような現象が見られます。私が教えていたある学生は、「同じ地名、似た地名がたくさんあるのは縁起がいい名前だからでしょう」と言っていましたが、知らないというのは怖いことです。地名にまつわる過去の災害との関係を知ることで、自分が住んでいる地域の特性、特に潜在的なリスクを知ることができますので、地名の由来も参考に、地域の特性を把握し、日頃からコミュニティで防災を考えることが重要だと思います。

実は2019年の台風19号の時も、この多摩川が氾濫し、神奈川から東京にかけて浸水しました。その際に世田谷区でも浸水が起きましたが、被害を抑えることができたと言われています。世田谷区は日頃から地区防災計画づくりをはじめとするコミュニティ防災の取り組みが盛んで、それが被害を減らすことに役立ったと言われています。日頃の備えが大事になります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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