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防災インタビューVol.220

被災者の自立へ向けた支援の在り方

放送月:2023年12月
公開月:2024年5月

北川 進 氏

日本社会事業大学 大学院 専門職大学院 講師

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

ボランティアの力

東日本大震災から、間もなく13年が経とうとしています。私自身、宮城の人間として全国・全世界のボランティアをはじめ様々な支援をいただいたということに、本当に感謝を伝えなければいけないなというのは、当時と変わらず今でもすごく感じています。

このボランティアの方々のお力がなければ、今の被災地での生活はなかったのではないかと言っても過言ではないと思っています。見ず知らずの関わりのない様々な方々が、支えたいという思いひとつで協力をしてくれるというのを、被災地で目の当たりにしてきて、やっぱり人って捨てたもんじゃないということを感じさせてくれました。

間違いなくボランティアの方に支えられてきたことは事実ですが、一方で、そのボランティアの方々が良かれと思ってやってきたことが、実は被災地側にとってはマイナスに働いたこともあったのではないかと感じています。私は、当時の職務上いわゆるボランティアセンターと呼ばれる、ボランティアの方々のお力を被災された方々のところへ届けるというような役割を担っていたので、ここで色々なミスマッチというものもよく目にしてきました。瓦礫の撤去などのいわゆる清掃という活動は非常に分かりやすく、人手を必要とする時にはとても有効ですが、タイミング的にそういった活動が必要ない時に、たくさんのボランティアの方がいらっしゃっていれば、被災地側の人は当然、「せっかく来てくれたのだから何かしていただかなきゃ申し訳ない」という気持ちになってしまいます。

そのため、本当は自分でできるであろうことまでもボランティアの方々にあえてやっていただくということが発生します。ボランティアの方々は少しでも被災された方々の力になりたいと思っていらっしゃいますから、当然頼まれたこと・求められることには100パーセントあるいは120パーセント頑張ろうという気持ちになってしまいます。そうすると、やりすぎてしまう、頼まれていないことまでやっていってしまうというような事があります。

このような事がたくさん行われていくと、知らず知らずのうちにいつの間にか被災された方々もボランティアにやってもらうことが当たり前、ボランティアにやらせるというような言葉や雰囲気が出てきてしまいます。

ボランティアの方々は、いずれ必ずいなくなります。地元で協力している方はまた別ですが、特に大規模災害の時は、遠方から来る方々がたくさんいらっしゃいますので、この方々は必ずいなくなります。いなくなった時に、本来であればいないことが当たり前の生活だったはずなのに「なんでボランティアの人たちがいないんだ」と、ボランティア依存と呼ばれるような体質が少なからず起こってしまったのではないかと思っています。

ボランティアの弊害

ボランティアの方々も良かれと思って行動しているため、誰も悪気を持ってやった人は1人もいないと思います。ただ、そのボランティアの方々の多くは自分が許される時間に短期間いらっしゃって、自分の都合で当然被災地から去らなくてはならないというような立場ですから、被災前の生活がどんな生活だったのか、自分がボランティアする前はどんな支援を得てきたのかなど、そういったことがわからないまま被災地にいらっしゃるわけです。そして、自分の許される時間の中で精一杯やろうとする。ですから、どうしても被災した方の生活とか、元々持っている力とのずれが起こってしまいます。「そこまで踏まえてボランティアしましょうね」というのは、特に、災害時のような緊急を要するようなタイミングの時に理解を求めるのは難しいことだと思います。

まずは被災者である当事者自身が、これはお手伝いをしていただくものなのかそれとも自分でやるべきことなのか、そういった考え方を持つということが大切です。皆さんも本当に大変な状況を突きつけられて、少しでも余力も残したいでしょうし、得られる支援は最大限活用しようと考えてしまうので、災害が起こってからそれを考えることはできません。ですから、災害が起こる前にいかに、こういったことを考えておくかというところがすごく重要です。「受力」なんて言葉で表現されることもありますが、こういったことを日頃から考えておくということが、防災活動の中にも含まれてくるととてもいいことなのではないかと思っています。

うまく取り組まないと、災害時にたくさんのボランティア支援を得られた時に、逆に、ボランティアの力をマイナスに働かせてしまうというような結果を自ら生み出してしまうことに繋がってしまうのかなと感じているところです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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