仮設住宅
避難所生活の期間はなるべく短い方がいいということで、国の方も法整備を含めて色々な取り組みを行っています。東日本大震災では、7か月近く避難所生活を送られた方々がいらっしゃいましたが、早い方ですと1か月~2か月程度の間に応急仮設住宅に移るという方々もいらっしゃいました。
ここでひとつ基本的なお話をさせていただくと、仮設住宅にはいろんなタイプがあり、報道などでも見かけるプレハブタイプの応急仮設住宅というようなスタイル、さらには東日本大震災で、非常にクローズアップされたのですが、応急仮設住宅の建設までに時間がかかるので、民間の賃貸住宅(アパートや公営住宅など)を見なし仮設住宅という形で仮設住宅に位置づけるというスタイルがあり、いずれも、様々な難しさがあります。
例えば応急仮設住宅・プレハブタイプですと先ほど申し上げた通り、建設までに時間がかかるため避難所生活が長くなります。例えば、体力的に弱ってしまう、精神的な負担が高まってしまうといった負担を抱えて新たな住まいに移るというポイントがあります。また大規模災害であればあるほど、この仮設住宅がたくさん建設されますが、建設場所の都合で団地が分かれることがあります。そうすると、どの団地に入れるのかを抽選で決められることになり、今まで避難所生活の中で顔見知りだった人たちと別れて、見ず知らずの人たち同士が新しい団地で住み始めるというようなことが起こります。そのような状況になると、隣近所の付き合いもなく新たに人間関係を作り上げていくようなところからスタートするわけですから、当然その仮設住宅の中のコミュニティにつながるまでにも、非常に時間がかかります。健康で、お仕事を中心に生活されている方々は、それでもなんとかやっていけるのですが、例えばお年寄り世代では、仮設住宅の中で繋がりのないまま家に閉じこもってしまうことによって、色々な不安要素が想像できます。
一方、みなし仮設住宅というのは、民間のアパートなどに移り住むわけですが、ここに被災された方がみなし仮設住宅として暮らしているということが外からは見えません。ここで、例えば何か支援を必要とするような出来事が起こったとしても、なかなかSOSが出せない、発見することができないというような問題もあったと思います。
在宅避難者
仮設住宅以外にも、難しい問題はまだまだ多くあります。その中でも大事な切り口として、東日本大震災発災時に新たな問題が生まれました。避難所生活から応急仮設住宅、あるいはみなし仮設住宅に移り住んでいくという流れの中で、仮設住宅に入りたくないという方や、抽選がはずれてしまい入ることが難しい方など様々な諸事情があり、避難所から被害を受けたご自宅にそのまま戻るという在宅避難者と呼ばれる方々が実はたくさんいらっしゃいました。
例えば、障害をお持ちのご家族がいらっしゃる世帯が、周囲から色々な声や目を向けられる避難所の中で生活を送ることがとても難しいと、避難所から出て半壊のお宅で生活をしていたということがありました。また、仮設住宅に移りたいけれども、遠くの場所に移ることができないので自宅の方に戻るという方々もいらっしゃいました。このような方々はこれまでの法律の中では支援の対象になっていませんでした。
そういう状況下でも、トイレやお風呂が使えず、2階部分だけで生活をされている方、水道が通っていないため公園で水を汲んで長らく自宅生活をしている方などに対して、いわゆる人間として当たり前に保証されなければならない人権をも犯しているのではないかというような声が上がりました。弁護士を中心にこのような方々も支援が必要ではないかという動きが出てきて、現在では在宅避難者というような呼ばれ方で支援が展開されるようになりました。
東日本大震災後、その後の災害でもこの在宅避難者と呼ばれる方々を見逃してはいけない、見過ごしてはいけないという声があり、今は避難所や仮設住宅だけではなく、在宅で大変な生活を送っている方々へも支援をちゃんと向けようという動きに発展していったので良かったことだなと思っています。