災害公営住宅
被災後、仮設住宅から退去したら全ておしまいということではありません。仮設住宅から災害公営住宅に移る方もいれば、ご自分で新しくご自宅を再建させる自己再建をする方など、それぞれ次のステージに移っていきます。その中でも様々な問題や不安がたくさん起きています。
大規模災害であると、応急仮設住宅は抽選で入居する場所が決まっていくことがあるとお伝えしましたが、災害公営住宅も同様です。大規模災害であればあるほど複数の団地に分かれ、しかも広域に建設されることがあります。すると当然、交通の便がいいところ、あるいは元々住んでいた場所に近いところを選びたいなど、申し込みされる人によってそれぞれの希望に違いがあるため、公平を期すために抽選が行われます。私の知り合いで4回抽選に外れたという方もいらっしゃいます。仮設住宅の時にも何度も抽選に外れ、そしてまた災害公営住宅の転居にあたってもそういった経験をすると、なかなか想像しがたいのですが、抽選に外れる度に心労が重なるってしまうということもあったのではないかと思います。
そして、入居が出来てからもまた同じです。仮設住宅の時と同じように新たなコミュニティを作り上げていかなくてはなりません。
ただ、仮設住宅の時にコミュニティ作りや、自治会などの活動に関わった方々は、1度経験をして災害公営住宅に移ってからもそれが大事であるということを実感されています。いつまでも自治会活動ができていない復興住宅もあることはあるんですが、一方でスムーズに災害公営住宅の中で、自治会活動が立ち上がっていったという事例もありました。
阪神・淡路大震災の時から言われてきていることですが、1番避けなくてはならないのは、災害公営住宅の中で孤立し万が一の事態に遭遇してしまうこと、つまり孤独死が起こってしまうようなことです。こういうことを起こさないためにも、自治会活動と公的な取り組みとして、仮設住宅の時と同じように生活支援相談員と呼ばれるような方々が見守り活動や声掛け活動などを展開しながら孤独死されてしまう方を1人でも減らそうというような取り組みが、これまでずっとされてきていたと思います。
災害を長期的視点でみる
災害公営住宅について触れましたが、実は災害公営住宅に入居するという選択肢だけではなく、自立再建と呼ばれている、ご自身で民間の賃貸住宅に移る方、新たに家を購入したり、建て直しをされる方々もいらっしゃいました。
このような選択をされた方々も、被災を受けて様々な負担を背負いながら次なるステージに移っていかれましたが、残念ながら今の日本の災害救助などの法律の中では、建物を中心として支援が展開されていきます。
例えば、自宅がどれぐらい損壊を受けたのか、大規模半壊なのか全壊なのか、それによって支援内容が変わってきますし、仮設住宅に住んでいれば、様々な公的な支援が受けられますが、在宅避難をした人たちは、先にお伝えしたとおり当初はなかなか支援の目が向けられませんでした。
同じように災害公営住宅に移った方々には公的な支援が向きやすいのですが、自立再建した人たちはもう再建された人たちだと捉えられてしまい、例えば、生活支援相談員の訪問活動が行われなかったということもあります。そんな中、宮城県の被災地でも、戸建ての自立再建をされたお宅の中で、自殺されてしまったというようなことも実際に起こりました。この方々への支援の目というのが届いていなかったのではないかと、検証がされました。命を亡くしてからの反省では遅いのですが、それをきっかけに保健師などが、自宅を再建した方々のところまで調査活動を行うようになりました。ただ、犠牲があってそのような取り組みに繋がったわけですから、福祉の立場からすれば、本当にあってはならない展開だったと思っています。
ここまで、発災から時系列にお話をさせていただきましたが、宮城県の被災地では、今現在も災害公営住宅に暮らす方々がいらっしゃり、災害をきっかけに色々な負担を強いられ、背負いながら生きている方々がたくさんいらっしゃいます。既に被災前のような生活を取り戻している方も多いとは思いますが、中には誰かの支援がなければ生活をしていけないという方々もいらっしゃいます。いつまで被災者と呼ぶかということは、とても難しいお話ですし、今この方々を被災者と呼ぶべきではないとは思いますが、一方で、災害というのはそうやって、12年後、13年後も様々な影響を及ぼすのだと思います。
ですから、長期的な視点をしっかり持つということがとても重要なのではないかなと思っています。
防災活動というと、どうしても災害直後のイメージを持った訓練になります。もちろんとても大事なことなのですが、災害直後を乗り越えればなんとかなるかというだけでは、やはり足りていません。「その後どういう生活が待っているのか。」「場合によってはこんなことも起こるのかもしれない。」「ボランティアの方々のお力を上手に借りなければ、もっと辛く苦しい生活を強いられてしまうかもしれない。」など、もっと幅広く長期的な視点を持って災害を見ていかなくてはならないなと思っています。