プロフィール
元日本大学理工学部の教授で教育と研究をしておりました。専門は建築防災学、そして不動産科学です。現在は一般社団法人マンション防災協会の会長をしております。
大学の助手時代に昭和基地の建物の設計をしていた関係で第19次南極観測隊越冬隊に参加しました。
マンションと共同住宅
今回のテーマがマンション防災ということですので、マンションとは、あるいは防災とはという視点で、少し「マンション」という用語についてお話ししたいと思います。
「マンション」という言葉は、マンションの区分所有法などで使用されていますが、建築基準法という、私の専門である建築関係の法律では「マンション」という用語は使われておりません。皆さんもご存知かと思いますが、共同住宅あるいは集合住宅という言い方をしています。また、「マンション」はアメリカでは大邸宅、戸建て住宅という意味で使用されています。イギリスでは「flat(フラット)」、アメリカでは「condominium(コンドミニアム)」など、賃貸住宅の呼び方が国によって異なります。
日本ではマンション学会などもあり、マンションの法律内では「マンション」という言葉を使っていますので全く問題ないかと思いますが、当初は「マンション」という言葉を使っていいのかという話を学会の人と話したことを今思い出しました。法律的な視点で語ったり、あるいは書いたりする場合は「マンション」という言葉は使いません。
また、建物、建築、建築物の3つの違いはわかりますでしょうか?建築物というのは、建築基準法では、名詞として「建築物」という用語を使用します。「建築」は建築するという行為として法律で定めされています。英語でいうと「architecture(アーキテクチャー)」。「建物」は「building(ビルディング)」ということで一般的には使われていますが、建築基準法では「建物」という言葉は使われていません。法律と一般では使用されている言葉の意味や定義が異なってきます。
付け足して言うと、「不動産」という言葉の語源はフランス語で「動かざるもの」を意味する「Immobiliers」で、英語では「real estate(リアルエステート)」です。また、日本では土地家屋調査士という言葉、固定資産税でも土地と家屋という言い方をしますよね。いずれにしても、「建物」というのは色々なネーミングで使われているということを知っておいた方がいいのかなと感じております。