1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. マンション防災
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.227

マンション防災

放送月:2024年7月
公開月:2024年12月

三橋 博巳 氏

一般社団法人 マンション防災協会会長

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

南極昭和基地 建物の防災対策

私が大学院生の時に、私の指導教授のところに南極昭和基地の建物の設計依頼があり、その時に初めて設計に参加したのが最初の出会いです。大学院を出て助手に残ってからも南極昭和基地の第8次からずっと設計に関係してきたのですが、設計者のうちの誰かが昭和基地へ行くという話になり、その頃1番若かった私が行くことになったのが最初の経緯です。

南極昭和基地の建物は、第1次から数えるとかなりの年数建っていて、2024年では64、5年も建っています。南極観測というのはそれぐらい歴史があって、私が行ったのは第19次のタイミングなので古い方の経験者の1人です。私が行った時は、ちょうどNHKが取材に来ていて、世界で初めて南極からの生中継を行いテレビ等でも放送されました。

南極の建物は設計条件が非常に厳しく、寒さもありますし、風も強く雪も吹雪もあります。このような気象条件はもちろんですが、建設期間も1か月以内に、吹雪が来ない間に建てる必要がある、あるいはヘリコプターで資材を運ばなければならないのでなるべく軽くしなければならない。また、素人でも建てられる構造にするという条件がありました。私が南極昭和基地に行った時も、建築の専門家は私1人で、あとは研究者の方々でした。みんなで建設したのですが、木造のプレハブ住宅みたいな形の資材を持っていき、組み立てて、また解体も簡単にできて持ち帰りもできるというようなシステムです。

南極というのは領土権がないところですから、建築基準法は適用しないので法律通りに作る必要がありません。なので、尚更安全なものを作らなければいけません。そしてなるべく軽くするということで、木造で作っておりますけれども、木造というのは燃えやすいですよね。南極では火災に対して水がありませんので、火災への対策、また風雪への対策も非常に大きな要素になっています。

南極は地震もありますが、人間が感じるような地震はないので地震の問題はありません。火災に対して、建物が50棟近くあるのですが、20メートル程度離して設置して延焼しないように設計したり、防火戸など色々細かな設計の話はありますが、防災対策、特に自主防災組織というのはマンションにもあるのですが、隊員で火災が起きた時のために訓練は年に何回も行って対策を立てております。

これからの防災

これからの防災のあり方についてお話ししたいと思います。

1つは、先ほども少しお話しましたが、本来、安全というのは当たり前であるということです。今、世の中では自然災害に対しても、犯罪の問題に対しても、様々なところで安全性能というものが必要条件となっています。建物の場合も安全というのは当たり前ですが、建物の法律を作ったとしても、安全性能がいいものと悪いものは当然あります。そのような安全性能を評価する制度を作って、いいものは社会に公表して、経済的な不動産マーケットなどで評価されるようにすれば、社会の中で評価されるようになります。車や電化製品も性能が高いものはコストのレベルが高めになっていますよね。建物というのは、専門的過ぎるということもありますが、一般の方には分からない部分もあるので、このような評価制度を作ればいいのではないかと思っています。

次に、マンションの居住者に限らず戸建ても含めて、我が家や我が町の安全を自分自身でまず考えてみる、意識を高めるということが大事かなと思います。実は、大学の防災計画の授業でも自分の家の安全がどうなっているか、あるいは地域の避難場所はどうなっているかなどを調査してレポート提出をする課題を行っています。自分の住んでいる家が、ご両親がどういう経緯で建てて、どういう地盤に建っているのかでさえ知らない人が多いということが分かったので、我々も含めて、やはり自分の家や自分の地域の地盤がどうなっているのか、また建物がどういう風になっているのかをしっかりと知っていく必要があるのではないかと思います。

そして、複合型災害はこれから非常に増えていくと思いますので、それに備える対策を、これは国も含めて地域あるいは所有者で取り組んでいくことが大事です。最近、特にタワーマンションと言われている高層マンションが多いですよね。極論ですが、そういうものを新しく作る場合には、地下空間を避難場所とするようなものを義務化した方がいいと思います。これは前から私自身いろいろな所で書いてきているのですが、地下空間を利活用していこうと。地震の時もそこに逃げ込めるし、あるいはそこに備蓄もできます。

以前、フィンランドのヘルシンキに行った時に何回か行ったのですが、50メートル程度の地下空間に約5,000人が使用できるシェルターがあります。そのシェルターが出来た時も見学していて私の研究所にもあるのですが、日本もこのような対策をしないといけないなと感じました。ヘルシンキの辺りは核の脅威がありますので、公共施設には全て50人~500人が入れる地下空間があります。お金はかかりますが、公共の施設も含めてそのような地下空間があったらいいのではないかと思います。

特に安全・安心を確保していくためにはやはり耐震性などのハード面、制度や法律などのソフト面、近隣や居住者とのコミュニティ、この3つをしっかりと捉えて構築していかなければいけないと考えています。

最後に、これから地球環境の問題も重要です。これからは宇宙時代になります。宇宙環境の宇宙防災学というものをもっと広げて取り組んでいく若い人達に期待したいと思っております。以前、宇宙不動産学という、不動産についての提唱はもう20年ぐらい前からしているのですが、宇宙空間の使い方についても、南極のように平和的な利用をしっかりやっていただきたいと思っています。そういう思いで南極に行って、宇宙的なスケールで考えることが出来るようになったことが、私にとって1つの大きな宝でもあります。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針