江戸時代から続く「水神祭」が行われました。

かつて漁師町として栄えた羽田をしのぶ、水神社(大田区羽田6-13-8)の例大祭「水神祭(すいじんさい)」が、5月11日、羽田空港近くの多摩川河口で行われました。
この祭は、漁業の大漁と船の海上安全を祈願して江戸時代から続いているもので、戦後は毎年5月11日に行われています。

強風が吹きつける中、午前10時に榊(さかき)で飾られた船「えさ政丸」が、水神社の宮司や大田漁業協同組合(羽田六丁目・村石幸光組合長)の関係者、来賓者ら約30人を乗せ、玉川弁財天近くの多摩川沿岸から出発、約2キロ先の海上に立つ「御神酒上げ棒(おみきあげぼう)」と呼ばれる柱に向かいました。

約10分で御神酒上げ棒に到着し、船上で宮司が祝詞(のりと)をあげて神事を行い、御神酒や塩、シジミなどを海上にまき、続いて参列した漁業関係者らが拍手を打って、大漁と海上の安全を祈りました。
例年は、海の神様である香川県の金毘羅様から取り寄せた高さ70㎝程のお札と地元「羽田水神社」のお札を御神酒上げ棒に取り付けが行われていますが、強風のため、後日取り付けることとなりました。
組合長の村石さんは、「航行安全と大漁になるようにと水神祭でお祈りしました。」と話していました。

海に向かって祈願する様子2

大漁を祈願しシジミを撒いているところ

羽田の地は、江戸時代から漁師町として栄え、昔は羽田の各町から大漁旗や提灯で飾られた船やお囃子を乗せた船が川の中ほどに出て、櫓(ろ)を漕いでいた若者たちが裸になり川に飛び込んで先を競って泳ぎ、拝み棒にお神酒を供えてまた泳いで船に戻ってくる、という勇壮な祭だったといわれています。
しかし、昭和37年、沿岸の埋め立てなどで漁業権を放棄。また後継者不足から漁師の数も当時から比べてずいぶん少なくなり、今では祭の規模こそ小さくなりましたが、「漁師町羽田」の名残を伝える伝統行事として、地元の人々に受け継がれています。
大田漁業協同組合によると、この祭は昔、1月・5月・9月の年3回行われていたそうで、どんなに荒天でも中止されたことがなったということです。

現在でも羽田では、シジミやアサリ、ハマグリなどの貝類やアナゴ、ボサエビなどの漁が続けられています。
羽田の海産物は地元の料理店などにも提供され、ご当地グルメとして人気を博しています。

この行事の後、水神社ではお祭に来た人たちに、アナゴ、エビ、シロキス、かき揚げなどの天ぷらが振る舞われました。