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防災インタビューVol.197

AI技術で未来を予測する防災 ~Spectee~

放送月:2022年2月
公開月:2022年5月

村上 建治郎 氏

株式会社Spectee
代表取締役

FMサルースで放送された音源をお聞きいただけます。

バーチャルで災害体験 ~デジタルツイン~

「AI防災革命」の中で、未来の防災についても触れているのですが、その中の一つに「デジタルツイン」という技術があります。これは災害対応のみで使う技術ではないのですが、いろいろな情報を解析して、現実空間と全く同じような空間をサイバー上に作るというもので、われわれが普段活動しているリアルな世界を完全にバーチャルな空間の中に作り直して、その中で「こういうことが起きたら、こういうことをやろう」というようなシミュレーションをするというものです。現実に起きているものと全く同じようなことがバーチャルでも体験できるということで、これを「デジタルツイン」と呼んでいますが、デジタルの世界に現実の世界と全く双子のような世界ができるという意味です。例えば、これができるようになると、洪水が発生したときに、デジタルツイン上で洪水を完全にシミュレーションして災害対応を考えたり、防災訓練をしたりすることもできるようになります。今までの防災訓練では、なかなかリアルなものを体験することが非常に難しく、何かが起きたことを想定した上で避難する訓練などをしていましたが、これがバーチャルな空間であれば、本当に津波を起こしたり、建物が倒れたりする様子を体験できます。かなり現実に近い形でシミュレーションして、どういうふうな対応をしたらいいかを考えることができますので、この「デジタルツイン」という技術がすごく伸びてきています。われわれもこの技術に取り組んでいるのですが、今は、災害が発生した直後に、「この10分後どうなるか」「30分後はどうなるか」、これをデジタルツイン上に再現して実際にどうなっていくのかを予測するということをやっています。それをやることによって、災害対応の現場の方が、「この先こうなっていく」というのが見て分かるような感じになっています。そうすると避難誘導する場合においても、より確実に行えるようになってきます。

「デジタルツイン」によって予測をすることで災害時の対応をより確実にしていくことを目指していますが、予測というのは、本当に未来を予測するというものと、何かが発生した瞬間に、その先を予測していくものと2つの種類があります。ずっと先の未来を予測するというのは、なかなか難しいことで、いつ地震が起きるかというようなことについては、なかなか正確なことは分かりません。しかしながら、地震が発生した後に、この先どうなっていくのかを予測するのは、現在では、いろいろなAIの技術を用いることで、できるようになってきています。「デジタルツイン」では、それを目指しています。

未来を予測する防災

われわれは、Specteeというサービスを通じて、いろいろな防災情報を提供していますが、今Specteeが一番力を入れているのが、まさに「予測」というところです。先ほどもお話ししたように、予測には2種類あって、ものすごく先の未来を予測するというものと、災害が発生した直後の状況を予測するというものがあります。例えば天気予報を見てみると、1週間後の天気を予測するのはなかなか難しいのですが、明日の天気でしたら、かなりの確率で当たります。1時間後の天気でしたら、恐らくほぼ間違いなく、今気象庁は当てることもできます。そういったような形で、何かが今起きていて、この先の1時間後を予測するということは、AIを使って大量なデータを計算して予測することはできるようになってきています。

Specteeは、今をいかに可視化するか、リアルタイムに見える化していくかということをこれまでSNSの情報やいろいろなデータを組み合わせてやってきました。今度はそれだけではなく、この先の30分後にはどうなるか、1時間後にはどうなるかを示していきたいと思っています。例えば1時間後の被害が分かれば、1時間あったら避難できますので、非常に有効です。リアルタイムにその予測値を出して、この先の状況がどうなるかを予想していくということを、Specteeは、今まさに取り組んでいます。

災害対応というのは、年々変わってきている中で、これからは「未来を見ていく」ということが、非常に重要なキーワードになってくると思っています。日本では、災害対応というと、建物の耐震を強化したり、堤防を作ったりというようなハードウェアの強化をやっていますが、アメリカやヨーロッパの災害対応においては、ハードウェアの強化というよりは、AIなどの新しい技術を活用して、災害の被害をリアルタイムに予測をして、いかに住民の避難につなげるかというようなことを考えています。多少の被害は容認してでも、できるだけリスクを少なくするためにAIなどの技術を活用して防災を考えていくというのが、海外での動きであって、そのためのベンチャー企業などもたくさん出てきています。日本はまだまだそういう考え方には至っておらず、地震は避けられないので、地震が起きても倒れない建物を作ろう、津波や河川の氾濫に対応するために堤防を作ろうというようなハード面での強化に力を入れています。そのおかげで、多少の地震がきても建物は壊れないようにはなってきていますが、一方でソフトの面、AIなどの技術を使った防災は非常に遅れています。ソフト面を強化してAIなどの技術をどんどん活用していかないと、今後の災害において想定外のことも起こると思いますので、その際にも対応できるように、ソフトの強化が非常に重要になってくると思います。実際のところ、堤防を作ったり、耐震強化する予算に比べたら、ソフトウェアの開発の方が圧倒的に安いので、今後はもっとソフトウェアの方にも目を向けていく必要があると思っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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