阪神淡路大震災に学ぶ教訓

阪神淡路大震災の教訓は山のようにありますが、中でも次に挙げる4つのことだと思います。1番目は「油断大敵」という言葉です。2番目が「用意周到」、3番目が「臨機応変」という言葉。4つ目がこれはひょっとして聞き慣れないかもしれませんが「自立連携」という言葉です。
- 油断大敵
まず「油断大敵」という言葉ですが、想定外のことが起きてしまうことで被害が大きくなる、ということです。うまく危険に対応しようと思ったら、「いつかこういうことが起きるかもしれない」と心のどこかで思っていると、それなりの対応ができます。阪神淡路大震災の時に、たくさんの方が亡くなられたり、生き埋めになられたのですが、神戸の人たちは、グラグラッときてドーンときたときに、地震だと思わず飛行機が落ちたのかとか、ダンプカーがどこかに突っ込んだのかと思った人がすごく多かったそうです。地震があった時は、まだ朝が早くて暗かったものですから、もう一度布団に入って後から見に行こうと思っていると、突然上から大きな梁だとか天井が落ちてきたというケースが多く見られました。ところが東京から来た人は、常に地震が来るかもしれないと思っていたため、グラグラッとくるとすぐ地震だとわかり、自分の逃げる道を確保しないといけないから玄関の扉を開けに行くという行動をします。玄関の扉を開けて外に出て、後ろを振り返ると後ろでドーンと天井が落ちていて、命拾いしたということが多くあったそうです。その二つの違いは何かというと、地震が来るかもしれないと思っていた人と、地震など神戸に来るものかと思っていた人の差です。この差が、行動の違いを生んでしまったわけです。例えば、地震保険に入っていた人は神戸ではほとんどいませんでした。その当時神戸で5%くらいです。それはなぜかというと、要するに地震が起きるはずがないと思っていたわけです。結果として地震保険に入っていないと、地震後の家を建て直そうと思っても資金が得られないということになるわけです。家が壊れて、いつまでも家を再建できずに大変な苦労をすることになるわけです。「大きな地震がいつか来る」と日常的に考えていると、自分の家は本当に大丈夫か、自分の家が建っている地面・地盤が本当にいいのかどうかを気に留めるようになります。本来だと、自分の身の回りにある危険を本当に正しく知っておかないといけないのですが、そういう危険の点検を日ごろからしていなかったのが、今回、被害が大きくなった原因だったと思います。ですから、危険を知る、前もってどんな危険があるのか確かめておく、というのが非常に重要です。 - 用意周到
次に、「用意周到」というキーワードですが、例えば保険に入っていないといけないとか、家の手入れをちゃんとしておかないといけないとか、そういうことは全部「用意周到」ですよね。事前に準備をしておかないといけない、非常持ち出し袋を用意しておくということなども、「用意周到」ということに当てはまります。地震でたくさんの人が亡くなりましたが、多くの人は家が壊れたり、大きな家具が倒れて下敷きになって亡くなったのですが、逆に言うと、前もって家を丈夫にしておく、あるいは家具の転倒防止を図っておく、あるいは家の中の整理整頓を心掛けておけば助かったかもしれません。まさに用意周到というのはとても大切です。 - 臨機応変
それから3つ目が臨機応変。これが一番難しいと思いますが、ケース・バイ・ケースというか、災害の起き方はいろいろです。「ぐらっときたら机の下にもぐれ」と教えられたと思いますが、阪神大震災のときに、机の下にもぐって亡くなった人がたくさんいます。それから、「ぐらっときたら火の始末」とも言われますが、火の始末に行って亡くなった方もたくさんいます。地震の強さが震度6くらいまでだったら、人間はなんとか動くことができますが、震度7で、上から何十キロという大きな梁がドンと落ちて来ると、台所の食卓なんか、真っ二つに割れてしまいます。ですから地震の大きさによって、机の下に潜っていいときと、潜って悪いときとある。それから、頑丈な家だと下に潜るということもいいけれど、非常に壊れやすい家だったら、机の下に潜った程度では身を守れない。だから、状況によって取るべき人間の行動は違う。いつもワンパターンで丸暗記した行動を覚えておくと、それが命取りになるので、「臨機応変」に行動することが大切です。 - 自立連携
最後の「自立連携」というのは、助け合いが大切だということです。自立というのは、独り立ちをしながらみんなと助け合うということです。阪神淡路大震災によって、「ボランティア元年」と言われましたが、自立連携も大切だということが阪神淡路大震災の教訓だと思います。