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防災インタビューVol.3

災害から人を守るために

放送月:2006年5月
公開月:2006年11月

室崎 益輝 氏

消防研究センター所長

危機管理の在り方について

最後に防災対策全般といいますか、危機管理の在り方みたいなことについて少しお話ししたいと思います。防災のためにはコミュニティーがしっかりしていないといけないとか、家の手入れをしっかりしていなければいけないということを申し上げたのですが、この「公衆衛生」というのは、これからの危機管理において、とても大切なことです。実は私たちが備えなければいけないのは地震だけではないのです。現代社会は犯罪が増えていますし、地球温暖化の影響で河川が氾濫するということもあります。それから、あってはらならないことですが、サリンのようなテロが起きるかもしれません。様々な危険が私たちの周りにあるということです。そういう多種多様な危険、マルチハザードに備えようと思ったらいろいろな問題に同時にかかわっていかなければならないわけです。体について考えてみれば、いろいろな部分で体調が悪くなると胃腸薬、風邪薬、心臓病の薬というように、いろいろな薬をいっぱい用意しなければいけない。それも必要かもしれないけれど、それよりはストレスをためないようにするとか、栄養に気を付けるとか、しっかりお風呂に入るということをしておけば風邪にもかかりにくいし、おなかも壊すことがないということになります。まさに防災における公衆衛生というのは健康管理と同じで、事前に隣近所の人と仲良くしておくと子供が誘拐されるのを近所の監視力みたいなもので防ぐということがありますし、コミュニティーがしっかりしていると高齢化社会の助け合い福祉の問題にも地域ぐるみで携わっていけるということがあります。そういうことを踏まえて多様な危険性に対して、福祉の問題だとか環境の問題だとか食べ物のリスクの問題とか、そういう問題に同時に取り組んでいくということが必要だと思います。それがまさに、これからの危機管理の中の本当に重要なことだと思います。要するに地震のことだけを考えていては駄目で、いろいろな違ったリスクにも、しっかり備えることが必要になってきていると思います。

「減災」に対する試み

先ほどの危機管理の重要なキーワードは「公衆衛生」だったわけですが、もう一つ最近よく言われるキーワードがあります。それは「減災」というキーワードです。減災というのは、災いを減らすということです。今までは防災、災いを防ぐという言葉を使ったんですが、今は減災という言葉をよく使います。防災と減災はどこが違うかと言われると、小さな災害、例えば寝タバコという災害は防げるんです。なぜかというと寝る前にタバコを消せばいいわけですね。小さな災害はまさに防災で対応できるのですが、巨大な地震だとかハリケーンという巨大な暴風雨が起こったとき、人間の力は非常に小さな力なので、とても災害を防ぐことができないということだと思います。人間は大きな自然に対して立ち向かうことはできないんだという悟りのような心境から、被害の軽減を考えてみたらどうかというのが「減災」という考え方です。これは非常に簡単で、被害の引き算をしていけばいいということです。減らす災い、被害の引き算はどうしてできるかというと、対策の足し算をしていくことです。いろいろな対策を足し算していけば、実際に被害を最小限にとどめることができるということなのです。実はこの対策の足し算には二通りの方法があるんですが、1つは時間ごとの足し算。時間というのは、起きる前の対策もあるし、起きている最中の対策もあるし、起きた後の対策もある。例えば住宅の話で言うと、起きる前は耐震補強をして壊れないように一生懸命努力する。でも、一生懸命やっても家が壊れてしまうかもしれない。壊れてしまうとジャッキを持ってきたり、ロープを持ってきて救出をする。災害直後の救助活動をしっかりやるということがその対策になっています。そのために必要な道具を用意しておいたり更に壊れた後は住宅を再建するために保険に入っておくという対策があります。それぞれの対策のどれがいいということではなく、そういうそれぞれの対策をしっかり取るというのが時間の足し算なんです。もう1つ人間の足し算というのがあるんです。行政も行政がやるべきことはしっかりやる。ボランティアの人たちも、ボランティアができることはやる。一人ひとりの個人も、できることはやる。みんなで自分のできることを行い、自分の責任を果たすことによって、それぞれの対策の足し算をしていくということだと思います。阪神淡路大震災で、自助、共助、公助という言葉がありました。公助というのは行政がやること。共助というのは地域社会がやること。自助というのは自分でやること。自分でやることはしっかりやりましょう。行政もやりましょう。みんなそれぞれの責任を果たすように対策を持ち合わせて、みんなで取り組んでいきましょうということも人の対策の足し算です。まさに対策の足し算という考え方が、これからの危機管理にとってはすごく大切になってきていると思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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