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防災インタビューVol.3

災害から人を守るために

放送月:2006年5月
公開月:2006年10月

室崎 益輝 氏

消防研究センター所長

災害による被害を最小限に

関東大震災のような超巨大な地震は、あと100年ぐらい起きないと言われているのですが、実は超大型の関東大震災クラスの地震の前に、阪神大震災と同じタイプの直下型地震が、東京を中心として関東地域にたくさん起きるだろうといわれています。今後30年間に、そういう直下型の地震が起きる確率は70%と言われています。それは近い将来ほぼ起きると考えていいと思います。そうしますとそれは阪神大震災と同じような被害が起きると考えなければならないし、東京は神戸に比べると、より木造住宅が密集しているし、日本の重要な機能が集中しているので、同じ程度の地震が起きても、阪神大震災の何倍もの大きな被害が出るということを覚悟しないといけないわけです。ただ、そういう被害が起きるということで、恐れているだけではどうにもならないわけです。今からしっかり、どうやれば被害を防げるかということを考えなければいけないと思います。

例えば首都直下の地震が起きると1万人くらいの命がなくなると言われているんですが、その場合、必要なことは1万人の棺桶を作るということではないわけですよね。対策は、その1万人をどうやって5千人にするか、あるいは2千人にするか、千人にするかを考える必要があります。まさにそのための努力を今から始めないといけないということだと思います。そのための重要なキーワードは「予防医学」だと思います。家は壊れないようにしなければならないし、私たち一人ひとりの命が奪われないようにしなければいけない。そのためにできることをあらかじめやっていくということが大切です。

耐震補強の重要性を学ぶ展示施設 日本ミクニヤ(株)提供

そういうことで考えると一番大切なことは、まず家具の転倒防止です。阪神大震災では、大きな家具が身体の上にのし掛かって命を失ったわけですよね。だから、家具が倒れてこないようにするという取り組みが必要だと思います。一番理想的なのは家具は全部作り付けにしてしまうとか、押し入れや納戸に収納して、動く家具は寝室には持ち込まないようにすればいいのですが、なかなかそうもいかない。それならば、家具が倒れ込まないようにつっかえ棒やベルトで固定する努力をしないといけないと思うんです。

2番目には、阪神大震災の時には、最初の一撃というか地震の直後に5千人ほどの命が奪われたんですが、その7割は家が壊れたために亡くなっています。家が壊れないようにするか、壊れても一瞬のうちに倒れないようにすることが大切です。少し傾く程度なら助かるわけですから、家にそういう粘りを与えるような対応をしないといけない。それがよく耐震補強と言われていることですが、その取り組みをしないと大変なことになるということだと思います。

3番目には東京の場合、地震の際は火災が怖いです。火事を出さないようにする取り組みというか、安全なコンロやストーブを使うこともそうですし、避難所に避難するときにはコンセントを切って避難をする対応をしないといけないんですが、そういう火を出さない取り組みをしないといけないと思います。そういう取り組みを今からみんなが一生懸命努力してやれば、多くの命を守れると思います。

日ごろから心がけること

家具の転倒防止だとか住宅の耐震補強というのは予防医学ですが、予防医学だけでは充分ではなく、「公衆衛生」もとても大切だと思います。公衆衛生というのが地震対策でどういうことか、例えば家が壊れた話の続きで言うと、家が壊れたのは確かに古くなっていたこともありますが、実はシロアリが巣くっていて土台がボロボロになっていたとか、あるいは湿気で基礎が腐っていたということがすごく多いです。大昔は皆、大掃除というのをやっていたので、大掃除の時に床下に潜って、土台が少し腐っていたら大工さんに手を入れてもらうというようなことを随分していました。でも今は大掃除をしなくなったのでわからなかったというのがあります。また火災が起きたのも、家の整理整頓が行き届いていなくて、上から物がコンロの上に落ちてきたとか、逃げようと思ったら家の中が乱雑だったのでコンロをひっくり返したとかで、火事がたくさん起きているんです。それなんかは家の中の整理整頓をしていれば防げたことです。大掃除とか、整理整頓というのは、まさに住まいの作法、日常的な家との付き合いの問題です。防災という意味でそれはすごく大切です。

もう少しつっこんで言うと、人のつながりも被害の大小に関係しています。コミュニティーが確立されていない所、家族の関係も希薄になっている所では、災害があってもなかなか助けに来てくれないし、地震が起きた後に頼っていく所がない人がたくさんいます。これは日常的な人と人とのつながりがないから起こる問題で、地震対策のためだけでなく、日常生活から取り組んでいかなければならない問題だと思います。災害の際に命を守るためには、日ごろから地域の掃除に参加したり、近所の人たちと親しく付き合ったり、町づくりに一緒に取り組んでいくというような活動をして、日常的な暮らしぶりを変えていくことがとても大切だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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