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防災インタビューVol.22

「まち」は住んでいる人の自画像

放送月:2007年9月
公開月:2008年4月

齊間 孝一 氏

東京空気調和衛生工事協会

移動距離 地球1周半

私は、現在は社団法人東京空気調和衛生工事業協会に勤めておりますが、元は東京都の都市計画局で、建築指導課長ですとか臨海副都心開発などの仕事をさせていただいておりました。

簡単に私の過去の移動距離を申し上げますと、地球1周半になります。地球1周半というのは、地球は大体4万キロということですが、フランクフルトと成田が1万2千キロございますので、1周半というのは大したお話ではありません。

行った場所で申し上げますと、カナダのバンクーバー、アメリカはロサンゼルス、サンフランシスコ、昨年台風で大変なことになりましたがニューオーリンズ、ボストンなど、ヨーロッパではロンドン、パリ、スイスの各都市、スペイン、ドイツ、ハンガリー、チェコ、ブダペスト、プラハなど、いろいろな町に行ってきて、防災だけではなくて、本来「まち」とはこうあってほしいという、いろいろな勉強をさせていただきました。

アハンブラ宮殿(スペイン)キリスト文化とイスラム文化が一体となっている宮殿。

現役時代には、1994年にノースリッジ地震が起きました時に調査団として、建築構造で有名な岡田恒夫先生とチームを組んで調査に行ったり、あるいは海外の視察研修ということで、東京都にお金を頂いて視察研修したこともございますし、自分のポケットマネーで、観光旅行で行ったこともございます。

今日は防災というテーマですが、私の仕事を通じて感じておりますことは、防災ということはすごく大切なことですが、それをさらに大枠で考えて、「まち」そのものをきちんとご理解いただきませんと、防災について深い理解ができないということになります。その辺のお話をさせていただきたいと思っています。

都市は何次元で考えればいいのか?

今日のテーマも、根底のテーマは防災ということですが、防災をきちんと進めるためには、私たちが住んでいる「まち」そのものをきちんと理解したいと思います。そうでなければ防災そのものもきちんと進まないという意味において、ちょっと整理したいと思います。

そこで、キーワードになるのが「まちの次元」という言葉です。これは、ちょっと堅苦しい言葉に聞こえますが、別に堅苦しいことでも何でもありません。それは、「私たちが住んでいるまちは何次元でしょうか」ということです。よく3Dシアター、三次元の映画、立体映画が三次元ということをお話ししますけれども、私たちのまちは三次元なのだろうかということです。三次元というのは、分かりやすく言いますと縦・横・高さで3つです。それでは、縦と横と高さがあれば建物ができるのでしょうか。それだけで建物はできません。その建物をどれくらい持たすかということになりますと時間軸が入ってきますので、これで四次元となります。時間を意識すれば建物ができるかということになりますと、例えばイタリアのローマ、あるいはパリ、アメリカ、どこでもいいのですが、その文化の差というのが必ずあるわけです。日本には日本の文化があります。その文化というものをきちんと意識した「まちづくり」が必要であるということになりますと、これで5つです。それと気候。例えば日本列島は地震が発生しますが、ルーブル美術館があるパリには地震がありません。地震がないから、無造作に高価な美術作品、あるいは過去の遺跡とか、全部置いてあります。日本の建物は、地震を考えない設計というのはできません。気候も砂漠気候、温暖気候、あるいは日本は雨が多いというような気候を考えない設計もできません。これは、広い意味での環境ということです。それが6つ目ということですが、これがあれば建物ができるかというと、まだ足りません。一番重きを置きたいのは、情熱です。「自分のまちをこういうふうなまちにしたい」というような住民の思いが、仕事をしているプロの方にとっては「自分の仕事は社会にこういうことを貢献する」という情熱がなければ駄目だと思います。住んでいる方も「ここに住み続けたい、良いまちにしたい」という情熱がないと駄目です。情熱のこもっていないまちというのは、行ってみればすぐ分かりますが、砂漠のような潤いのないまちということになります。私が簡単に考えましても、三次元、時間、文化、環境、それと情熱が必要です。そうしますと、町というのは最低でも七次元であると思います。それ以外に、それぞれ皆さんにとって重要だと考えるものを足していきますと、それは七次元よりも、もっと大きくなるので、都市の次元は最低でも七次元だということです。

この都市の次元を「文化」というところできちんと研究された方もいらっしゃいます。(参考:「かくれた次元」著者:エドワード・ホール–みすず書房)

一つ一つの我々の日々の行動では、そういう次元というのは表に出てこないで隠れているということです。実際には隠れていますが、きちんとそれを意識して生きていくこと、あるいはまちをつくっていくこと、住民としてどういう行動をするかを考えていくこと、あるいはいろいろなイベント、フォーラムを開催するときに、主催者の側がどういう次元を意識して、それを開催するかということで、まちの様相が全く変わってくるということです。今、何で次元の話をするかといいますと、防災とはまちづくりの一部だということです。ちなみに、それを全部くくって、次元を生かすも殺すも、最終的には人が防災をするということですので、最終的にはその人その人の価値観や生きがい、どういうところに情熱を注ぐかということにかかわってきます。これが次元という意味です。

防災対策は危機管理の一部

私は現役時代から、危機管理ということについて大きな関心を持っておりまして、東京都職員研修所の職員の時には危機管理についてのリポートをまとめました。このリポートは今でも閲覧することができると思いますが、要するに防災というのは危機管理の一部だということです。

例えば、一般の方には耳慣れない言葉ですが、BCPという言葉があります。これは「ビジネス コンティニュイティー プラン」と言いまして、事業継続計画ということです。まだ8%ぐらいの会社しかBCPを作成していないということですが、これは実は通常の災害対策だけではなく、例えば東京の直下地震の後、企業がその後きちんと生き残れるか、残れないかという存亡をかけた計画なのです。BCPもそうですが、危機管理という範疇の中では、テロの問題や昨今のIT時代の情報流出や医療過誤問題に対する対策など、さまざまな危機管理があります。その中の一部に、自然災害ですとかを対象にした災害があるということでして、防災ということは、広い意味での危機管理の一部ということが、私の基本的な理解です。

地震だけではなく災害ということになりますと、分類の仕方というのはいろいろあるかと思います。短期的な災害は、例えば地震。これは何秒単位の話です。火災も、初期消火がうまくいくか、いかないかで、大変な問題になります。また洪水の問題やニューオーリンズなどでも相当な豪雨があったり、台風が強力化しているという問題があります。長期的には地球温暖化もありますし、これは災害と言っていいかどうか分かりませんが、心の危機ということなど、危機管理の対象事象としては、当然に、さまざまなものが入ってくるわけです。

もう1つお話ししたいのは、災害とは何だろうという観点からみると、自然災害については、これはもう必ず発生するということです。自然災害は、発生を防止することはできません。それではどうするかというと、災害の被害をいかにして小さくするかということになります。これについては前にも申し上げましたが、災害だけに関心を持っていくのではなく、都市の次元というのは最低でも七次元あると申し上げたように、災害を防ぎ、被害を最小にするためにはどうするかということを、もっと考えることになろうかと思います。

この危機管理ということでは、いろいろな問題があります。つい最近ですと、飛行機のボルトが燃料タンクの中に突き刺さっていたという問題もありますし、どこの会社とは申しませんが、会社のいろいろな事故を隠したために、その会社が倒産あるいは相当に厳しく、社会的な糾弾を受けたということもあります。このように、危機管理というのは大変幅が広くて、危機管理の一部が災害対策、いわゆる防災ということを基本的な理解としなければいけないと思います。防災、災害対策ということだけを考えていたのでは、真の意味での災害対策は進まないというのが私の基本的な理解です。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。