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防災インタビューVol.22

「まち」は住んでいる人の自画像

放送月:2007年9月
公開月:2008年4月

齊間 孝一 氏

東京空気調和衛生工事協会

より良い建築主の必要性

性能というのは必ずしも技術者だけが責任を持って表示するということではなく、高い水準の性能を表示するためには建築主が、やはり良い建築主でなければならないということを申し上げたいと思います。良い建築主というのはどういうことかということを説明する良い例として、建て主の要望が生かされやすい注文住宅のほうが、分譲住宅よりも倒壊リスクが高かったということです。これがどういうことかと言いますと、注文住宅は建て主さんによっては、いろいろわがままを通すわけです。結果的に南側をうんと明るくするとか、柱を抜いてしまうということが起こるわけです。そうしますと、注文住宅のほうが耐震性能の劣る結果になる傾向があるということになるわけです。それでは困るので、良い建築主になることの必要性について、もう少しお話しさせていただきます。

良い建築主になるというところをもう少し具体的お話しさせていただきますと、まず法律には限界があるということです。これはどういうことかと言いますと、世の中の動きのほうが先に来まして、その中でこういうことはルールとして決めたほうがいいだろうということで初めて法律ができるわけです。硬い言葉で言うと垂直的限界といいますが、このように、法律にはそのような限界があります。もう1点の限界は、法律ができた後、それを本当に理解する人が少ない、法律がきちんと理解されていないという意味で、水平的な限界というものがあります。これは建築基準法だけではなく、ほかの法律全般に言えることですが、そのような限界があるということです。

それと、もう1点は建築基準法に限ったお話ですが、建築基準法の規定というのは、あくまでも最低の基準だということです。よく「基準法を満足しているからいいんだ」という話を耳にしますが、これはあくまで最低の基準ということです。ですから、耐震性能についても同じことです。基準法確認が下りたとしても、それはどんな地震でも大丈夫ということではないわけです。そこで良い建築主というのは、「建築の基準よりも1.2倍にしてください」「2倍にしてください」ということが言える建築主です。例えば「原子力発電所というのは、基準法の基準よりも耐震性能を2倍、3倍にすべきだ」ということを国民は言いますが、そういう意味で、良い建築主、良い国民というのは、きちんと自分のエゴではなく、自分の価値観で物を言わなければいけないということです。良い建築主というのはそういうことです。そういう建築主がいて初めて良い建物ができるということです。

モーツァルト像(オーストリア・ウィーン市内)日本の都市では音楽家像が少ない

「まち」は住んでいる人の自画像である

一番初めに申し上げましたが、建物の集合体が「まち」ですので、良いまちをつくるには、良い住民、良い国民がいなければいけないわけです。これをほかの人の言葉で表現しますと、「まちというのは、そこに住んでいる人の自画像です」ということです。自画像には自分の思いがその形となって表われているといわれます。よく「40歳過ぎたら自分の顔は自分で責任を持て、親には責任をなすりつけるな」という話がありますが、「まちもそこに住んでいる人の自画像だ」ということです。そういう意味で、良い建築主が、良い建築物やまちをつくっていくということです。

良い建築主となるために ~インフォメーションとアウトフォーメーション~

インフォメーションとアウトフォーメーションという言葉がありますが、これは良い建築主になるためには、建築主も良い情報を得なければならないということです。その情報をインフォメーションと言いますが、その意味は、フォーメーションがイン、つまり、形が入ってくるということです。

情報というのは、私に限って申し上げますと、私が新聞や本を読んだときに、そこから入ってくる情報というのは、私が今発信できる情報の水準に応じた内容の情報しか入ってこないということです。新聞を読んでも全部の情報が入ってくるわけではなくて、私が関心を持っている情報しか入ってこないということです。私の水準が高いレベルにあれば、高い水準の情報も入ってくるということです。これがインフォメーションとアウトフォーメーションの関係です。

サッカーではフォーメーションが一番大事ですが、そういうインフォメーションとアウトフォーメーションはイコールであるということです。発信できる情報の水準が低いのに、入ってくる情報の水準が高いということはあり得ないということで、インフォメーション イコール アウトフォーメーションです。これはまちづくりについてもそうですし、こと防災、あるいは耐震改修とか、耐震についても全く同じです。これはすべてのことに言えることでして、自分自身の生き方についても同じです。情報にはそのような性質があるということです。

これからの建物を造るために

ホルンと筆者。民族色を大切な観光資源にしている街。

いろいろ申し上げてきましたが、これだけはお話ししたいということがあります。一番最後にお話しした良い建築主、あるいは良い市民、良い住民が良いまちをつくるということに関連してお話ししますが、1つはこれから造る建物をどうするかということです。建築基準法というのは最低の基準ですから、どれくらい強い建物を造るかということが1つありますが、現在の技術力では限界があります。

1つは免震とか制震。制震は、地震のエネルギーを制御するという方法。免震は、地震のエネルギーが建物の中に入ってこないように免除する、地震のエネルギーから免れるということです。そういう工法が技術的には確立されているわけですから、それを採用するかしないか、きちんと判断して、新しい建物を造っていくことが大切です。これは良い建築主、あるいは良い住民の耐震に関する判断の1つの事項ということになります。それともう1つは、これから造る建物だけではなく、専門用語ではレトロフィットと言いますが、今まで建っている昔の立派な建物をどう耐震補強をするかというときに、7次元のまちづくりを考えなければならないということです。これは昔の我々の先祖が造った建物をきちんと時間軸で残すということになりますので、どれくらいお金を掛けるかということもきちんと判断をする、そういうことをきちんとしていかなければいけないということです。

「利は義の和」

これは防災に限らない話ですが、私が常に思っていますのは「利は義の和」ということでして、会社であれば利益を上げるのは当然ですが暴利はいけないということで、義ということが大切になるわけです。正義の義、仁義の義ですが、「利は義の和」ということで、いろいろなイベントをする、防災事業を進める、まちづくりを進める、そういうときに自分の名前を高めたいとか、そういう欲望ではなくて、義の和として行動していくということが、結果として防災も推進する、耐震補強も進めるということになるのではないかと思っています。

それを一言で言うと「誠」です。誠というのは字を見ていただくと分かりますように、言うことと、なすことが横並びで一致しているということ。それが誠です。ですから誠がない行動は、やはり必ず見透かされてしまうということです。それは厳粛な事実だと思っていますので、物事というのは誠実に進めていくということが一番大切だと思っております。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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