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防災インタビューVol.23

「まちづくり」に関わる「住宅の耐震化」

放送月:2007年10月
公開月:2008年5月

石川 永子 氏

墨田区まちづくり公社

復興から学ぶ防災まちづくり

京島での防災まちづくり活動と平行して、トルコ西部地震(1999)や新潟県中越地震(2004)の被災者から経験談を聞くなどの調査を行い、被災した地域の復興計画やまちづくりについて研究しています。よく言われることではありますが、防災まちづくりは、復興まちづくりから学ぶことが非常に多いと感じています。今までお話したような耐震化普及活動を続けている京島でも同様です。

古民家での勉強会(川口町)/京島文化祭での荒谷物産展と特産の錦鯉の展示

新潟県中越地震で震度7を記録した川口町という自治体がありますが、その川口町の一番端に荒谷集落という、現在15世帯ほどの小さい集落があります。地震で被害を受けて山を下りていく人多かったのですが、集落を活気付けて維持していくために「はぁ~とふる荒谷塾」をたちあげ、「本気でつきあえる仲間づくり」を合言葉に、農村観光開発を含めた活動を続けている集落です。

京島まちづくり協議会は、大勢で荒谷集落と行き来をしながら交流を続けているのですが、都会に住んで、防災まちづくりをしている私達としては、被災体験やそこから集落ぐるみで復興をとげた壮絶な話を聞いて、地震の恐ろしさや自分達が行っている活動の重要さを再認識し、これらの経験が活動の原動力ともなっています。というのも、「復興まちづくり」の過程では、住民の本音がぶつかり合いながら、真に住民が主体となって頑張っている、いわば、「まちづくりの最前線」だと思うのです。そういう体験談を聞きながら、復興過程の地域の活性化に多少でも役立てたらという願いながら、私達も自らの活動を振り返る機会となっています。

将来的には、普段からの交流の積み重ねの上に、NPO法人全国商店街まちづくり実行委員会がやっている「震災疎開パッケージ」のように、例えばお互いの地域で大地震が起こった際に、ある程度まとまって集団で安全な地域に行って、まちの復興計画を考える場となるような素地をつくれるような、そういった試みに発展していけたらと思っています。

中越復興市民会議の皆さんや、長岡造形大学の澤田雅浩先生などのご協力をいただきながら、復興から学び、まちづくりを時に酒を酌み交わしながら語り合うことで、お互い助け合う、心配し合う温かい交流の輪を育んでいきたいと思っています。

防災に生かす女性の力

住宅の耐震化や家具転倒防止対策の普及は、女性の力がとても大切です。

一見、何をやっていけばいいのか分かりづらいかもしれませんが、住宅の耐震化も家具の転倒防止も、もとはと言えば家の問題であり、したがって、「家の中のことは、奥さんが賛成しない限り何も動かない」というのは、世の旦那さん達の本音だと思います。

町内会の女性部会で家具転倒防止金物のサンプルを集めて、どれが使いやすいかを検討したりしましたが、奥さま方のハートを射止めるには「お得な感じ」というのが大事だと思っています。スーパーのお買い得品ではないですが、「大勢で買うと安くなる」といったように、共同購入を検討したりしながら、住宅の耐震化にも展開していけたらと思っています。

ユニバーサルデザインによる防災

防災を考えるということは結局、地域の潜在的な課題を掘り起こして考えることだと思います。よく「災害というのは、地域の課題・問題を顕在化するものである」といわれます。例えば、私達が活動している京島ですと、老朽化した借家の問題や、福祉と防災の連携方法などです。このような地域の課題を考えることが、結局はまちの防災力の向上に役立つのだと思います。

イッツコムでお聞きの方々がお住まいの地域は、木造密集地域ではない、道路等が整備された地域の方も大勢いらっしゃると思います。そうした時に、こうやって木造密集市街地の耐震化の問題ばかりお話すると「いや、うちのまちの参考にならない」と思われるかもしれません。しかし、どの地域も、程度の差はあれ、課題をお持ちだと思います。

京島は、東京都都市整備局が公表している「地域危険度測定調査」で、「地震時に最も住宅が倒壊する危険性が高い地域(建物倒壊危険度の結果による)」のひとつとされていますが、このような、一番、耐震化が必要で、かつ普及の難しい地域で悪戦苦闘して活動した話の中には、ほかの地域でも役に立つヒントが隠されているのではないでしょうか。例えば、高齢化や福祉問題と住宅の耐震化の関係や、借地借家の問題といったことです。

このように考えたときに、様々な分野でつかわれている「ユニバーサルデザイン」というキーワードを思い出します。ユニバーサルデザインとは、「だれにでもわかりやすい/使いやすい」デザインのことですが、例えば鉄道駅には「誰でもトイレ」など、どなたにもわかりやすい表示や機能がちりばめられています。

住宅の耐震化も防災も、「誰でもが使いやすい、誰でもが親しみやすい」そういうユニバーサルデザインの考え方を、地域活動のデザインや情報発信の仕方に応用していくことが大切だと思っています。とても難しいことですが、これからも実践を通して、地域の方々と共に取り組んでいきたいと思っています。

地元の大工さんたちとの連携

地域で普及活動をしていて、大切なことのひとつに、「まちの工務店の大工さんを、活動にどのように取り込むか」があります。地域内に住み活躍されている大工さんは、地域の住宅の特性を把握していて耐震補強の技術もあることが多いのですが、補強箇所の計画に関して、経験的な勘に頼るところが多いように感じます。結果的には、正式に設計事務所が構造計算したものと現実にはあまり変わらないこともありますが、助成制度で自治体から助成金を受けるには、簡易な耐震改修でも正式な耐震診断と設計が必要です。一方で、大工さんの経験にばかり頼るというのも問題がありますし、技術面での向上ができないという側面もあります。

そのようなジレンマと問題意識の中で、先程お話した、「耐震モデルハウス」では、墨田区の建築士事務所協会の専門家と京島の4つの工務店の大工さんが協力して、知恵を出し合いながら施工するというスタイルをとりました。普通、工務店というのは一匹狼というか、1つの現場に、大工の棟梁が何人も入って施工するのは、お互い誇りがあることからも、あり得ないことです。しかし今回は、「安全なまちづくりを考える」という趣旨のもと協力し、技術共有しながら、耐震モデルハウスをつくりました。このような活動を積み重ねることよって、そのまち全体の耐震工事の技術が上がるのと同時に、居住者だけでなく施工業者にも広く耐震化工事の重要性を知ってもらうことにつながると考えています。

耐震補強の普及手法は、正解が1つというわけではなく、難しい問題ですが、地域の住宅を熟知し、日常の修繕など多くの顧客を持っているまち場の大工さんが、補強工事をやりやすい環境をつくることも、居住者への普及活動と同じくらい重要なことだと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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