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防災インタビューVol.23

「まちづくり」に関わる「住宅の耐震化」

放送月:2007年10月
公開月:2008年5月

石川 永子 氏

墨田区まちづくり公社

木造住宅の耐震化普及 ~「地域力」の活用~

前回も少し話しましたが、木造住宅の耐震化を地域ぐるみで普及させる活動において、「地域力」を活用することがとても大切です。「地域力」というと難しく聞こえますが、要は「ご近所の底力」です。木造密集市街地は、防災から考えると「危ない」というイメージが先行しますが、実は「とても豊かだ」と思える地域資源もあります。例えば、人のつながりがすごく密だというのも防災にはとても大事な要素ですし、組織力があり、浸透力のある町内会の存在は大きいと思います。加えて、下町のまち工場が多い所なので、地域に根付いた活動をしている大勢の職人さんがいらっしゃいます。また、古い住宅をずっと修理し続けている、まちの大工さん達もいらっしゃいます。このような、地域コミュニティの力や、専門家の力を防災にうまく結び付けて、腕を振るってもらおうというのが、今回の「地域力の活用」の話です。

地域の力の総力戦 ~起振台による実演~

地域の祭りにて

はじめに、地震がきたときの被害を分かりやすくイメージしてもらうために、自作の起震台というのを作りました。小学校の校庭等で行われる防災訓練で見かける起震車は、下町の路地まで入れず、古い住宅に住んでいるおじいちゃんおばあちゃん達は、わざわざ見に来ない人もいます。しかし、小さな町なかの空き地や町会会館の前で、地元の人達が実演すれは、多くの人が地震について考えられるきっかけをつくれるのではないかと考え、名古屋大学の福和伸夫先生が考案された「ぶるるシリーズ」の起震台を参考にしながら、まち工場の職人さんたちが、職人魂を発揮して、起震台の設計・製作をして、組み立て式の起震台を完成しました。アルミ製で持ち運びしやすいように分解して車で運搬でき、幅約2.5メートル、奥行き約1.5メートル、高さ約2メートルで、1馬力のモーターで動きます。タンスの転倒実験をしたり、大工さんが制作した筋交い取り外し可能の住宅模型を揺らして耐震補強の重要性を伝えます。

金属加工職人や大工などが集まって試運転

町内会の防災訓練や地域のイベントで、家具転倒防止金物の有無を比較して「家具を固定することはこれだけ大事なんだ」ということを町の大工さんたちが自らPRしたり、地域の職人さん達の「総力戦」といった感じです。これはかなり派手なので、皆さん初めは全然興味はなくても、自然と「何だろう」と思って足を止めてご覧になるというのが、いいところかなと思います。

このような防災についての活動を長く続けるには、そこに住んでいる人たちが持っている長所を、うまく使いながら活動していくことが、とても大事だと思います。このような活動をこの地域の皆さんは、とても楽しそうにやっていらっしゃいます。

工夫を凝らした木造住宅の耐震補強

木造住宅の耐震化が必要なのは誰もが分かっているにもかかわらず、耐震化が進まないという現実があります。その理由のひとつとして、住まいの問題の中には、地震時の安全よりも、日常生活の中でより優先度や切迫性の高いと感じることがあるというのが、本音なのだと思います。

長屋の耐震補強の様子

例えば、木造密集市街地に多数あるような狭い住宅では、耐震補強のために筋交いを入れたりパネルを張ったりすることで、部屋の変な所に壁ができてしまったり、窓をつぶしてしまったりすることがあります。商店であれば、出入り口周辺の、外から一番見える所に壁ができて店内の様子が見えづらくなることにより、入りづらい雰囲気を作ってしまう等です。

「地震はいつ来るか分からないけれども、狭い間口にある窓から入ってくるせっかくの日差しが明日から入らなくなってしまうのは困る。」といった、声に耳を傾けながら、住宅の耐震化を考えていく必要があるでしょうし、実際に最近はこのような問題を解決する工法も多数提案されていきています。

私たちのプロジェクトでも、首都大学東京(現在は東京大学)の藤田香織先生の研究室にご指導いただきながら、実際に何棟か耐震改修工事をしましたが、その際には、まず徹底的に「そこにお住まいの方に日々どういう暮らし方をして、どの部屋でどういうふうに動いているか」をお聞きして、例えば「ここの壁は筋交いを入れてもいいよ」とか、「ここの窓は別につぶしてもあまり関係ないよ」ということなどを、居住者や大家さんと相談しながら計画をすすめていきます。ただ構造計算だけで考えていくのではなくて、お住まいになっている人の暮らし方を耐震計画の中に取り込んでいくことが重要です。

前回の耐震モデルハウスの例でもそうですが、下町の木造密集市街地には、道路に面した壁の全面が窓や入り口になっている家が典型的です。しかし、壁や柱を入れることができない場合、門型の開口フレームや鋼製のブレース等を入れています。居住者の住み心地をなるべく悪くしない方向で耐震化が進むように、模索しているところです。また、このような補強工事で入り口の辺りに補強したブレ-スなどが入っていて、近くを歩いていると外から見えるようになっている施工例も何軒かあり、このようなお宅には、モデルハウスのように町の人が見学できるよう協力してもらっています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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