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防災インタビューVol.42

地震計のいろいろ

放送月:2009年6月
公開月:2009年12月

梶原 透 氏

応用地質計測(株)専務取締役

応用地震計測株式会社HP:http://www.oyosi.co.jp/

プロフィール

私は応用地震計測株式会社に勤務しています梶原と申します。私どもの会社は地震計の開発・製造・販売・保守などのサービスをやっている会社ですが、地震計については、もうかれこれ阪神淡路大震災以降、十数年携わってきております。日本の大事な防災の地震観測のシステムも幾つか手伝わせていただいておりまして、そういう意味で地震防災に非常に貢献させていただいているかと思います。

地震計とは

「地震計」という言葉を新聞やテレビ、ラジオなどで時々耳にするようになりましたので、地震計という名前そのものを聞いたことがないという人は、ほとんどいないのではないかと思います。しかし地震計を見たことがある人というのは、まだまだ少ないのではないでしょうか。一口に地震計といっても、目的によってさまざまな物があり、ここでは地震計について少しお話をしていきたいと思っています。

まず地震計という言葉から想像されるものは、地震の揺れの大きさや震度を測るものというイメージかと思います。今回はまず身近な地震計として震度を測る地震計、計測震度計からお話ししたいと思っています。「計測震度」というと耳慣れない言葉ですが、これは気象庁が定めた震度を計算するプログラムを内蔵した地震計で測定し、それから計算された震度の値のことを言いまして、2.5とか4.3とか、小数点一桁まで計算されます。この値を四捨五入したものが震度になるわけです。地震が発生しますと、テレビ・ラジオなどで発表される震度、例えば震度2とか震度3とか出てきますが、これは気象庁が設置、管理している地震計と、東京都や神奈川県などの自治体が設置、管理しているもの、それから防災科学技術研究所が設置しているK‐netと呼ばれる地震計で観測して、震度を計算した結果を基に発表されています。計測震度計は主に兵庫県南部地震以降に設置されたもので、地震の大きさを感知する計測部と処理部に分かれています。この計測部には、東西南北、上下方向に取り付けられた3個の加速度計が使われています。また処理部は、その加速度記録から計測震度を計算する機能と、その結果を表示したり通報したりする部分からなります。これらの地震計は気象庁や自治体の防災センターなどに接続されていまして、地震が発生すると瞬時に地震の大きさ、震度、最大加速度などの情報を通報して、地震がどこで、どの程度の大きさで発生したか、各地点の地震の大きさはどのくらいだったか、被害が発生するような強い揺れだったかどうか、ということが分かります。国や自治体はその情報を基に、救助とか復旧のための体制をとりますので、この震度の情報は非常に重要なものなのです。

ここ横浜市にも、高密度強震ネットワークと呼ばれる地震観測システムがあります。多分、地元の皆さんはもうご存じのことと思います。これは約150台の計測震度計が市内の消防署を中心に設置されています。この情報はホームページでも公開されていますので、誰でもインターネットを通して見ることができます。横浜市のホームページから検索できると思います。

地震観測ネットワーク震度計 左:計測震度計N-Seis 右:防災科学技術研究所 強震ネットワーク・K-NET02

地震計の種類

次に、地震計の種類などについて少し説明していきたいと思います。地震計には、先に説明しました震度を測定するための比較的大きな地震を測定するものや、逆に人には感じないような小さな地震を測定するものなど、測定したい内容によって幾つかの種類があります。どんなものがあるか全部お話はできないのですが、今回は面白そうな地震計についてお話ししたいと思います。

先日、北朝鮮で地下核実験が行われましたが、この地下核実験を見つけたのも地震計です。この地震計は広帯域地震計と呼ばれるもので、私たちが感じないような非常に小さな揺れ、しかも大変ゆっくりした動きを測定する地震計です。そのため、街中のような場所では電車や車が通ったりする振動で測ることができません。だから、この広帯域地震計は非常に静かな場所に設置されているわけです。この広帯域地震計の中でも有名なものは、長野県の松代にある気象庁の精密地震観測室のもので、これは地下核実験のニュースの際に、テレビなどでも放映されたことがありますので、皆さんの中にも見られた方がいらっしゃるかもしれません。この地震計は昔の防空壕として掘られたトンネルの奥の方に設置されています。この地震計が広帯域と呼ばれるのは、非常にゆっくりした揺れから、やや速い揺れまで幅広く観測できる、という意味で付けられたものです。この非常にゆっくりした揺れというのがどのくらいのものかといいますと、通常私たちが感じる地震というのは「カタカタカタ」それから「ユッサユッサユッサ」と揺れてくるのですが、その揺れが一往復するのを周期と呼びますが、大体1秒間に1回から数回程度の揺れになります。ところが広帯域地震計が観測する地震の波は、その周期が数十秒から百秒程度の波になります。感じとしては、船に乗っていて、波で船が揺られるときに、行ってから返ってくるのに百秒かかるというような揺れになります。このくらいの波になりますと地面を遠くまで伝わりますので、地球の反対側で起こった地震も観測することができます。

その他、変わった地震計では、月震計と呼ばれる地震計があります。地球の地震は地震と呼ぶのですが、月で起こる地震は月震(げっしん)と呼ばれています。アポロ計画で月に人間が降り立った際にも地震計が持参されており、月でどのような地震が発生しているか観測されてきました。多分、次は火星だと思います。近い将来、番組をお聴きの方が作った地震計が火星で使われる日が来るかもしれませんね。

その他、緊急地震速報も地震計が作っています。平成19年10月より一般に情報提供が始まりました緊急地震速報も、この地震計のデータから作って配信されています。これには気象庁が全国に設置した地震計と、防災科学技術研究所が設置している高感度地震観測網、Hi‐netと呼ばれる地震計が使われています。これらの地震計は初期微動、P波と呼ばれる地震を観測すると、即座にその振動から地震の大きさ、それから距離、方向などを計算します。そしてこれを基に気象庁では各地点の地震の大きさや、その地点に到達する時間を予測して、各地に地震が来るより先に通報します。このシステムが緊急地震速報です。残念ながら震源地近くでは通報が間に合わないことがあるのですが、地震到達の数秒でも前にこの地震が来ることが分かれば、それだけでも机の下に隠れるなど対処することができます。この緊急地震速報は利用の仕方によっては非常に有効な情報と言えるのではないでしょうか。

緊急地震速報を提供する地震観測網 左:文科省 防災研Hi-net地震計網 右:気象庁 ナウキャスト地震計網

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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