地震計は何に役に立つのか
どのような地震計がどのくらい使われているかについてお話ししてきましたが、今度は、どのように役に立っているのか、少しまとめていきたいと思います。地震計はその目的によって、それぞれ使い分けられていますが、それぞれどれもが防災には無くてはならない存在になっています。例えば、地震情報ネットワークです。これはいつ、どこで、どの程度の地震が発生したかをいち早く知らせる目的で使用されています。1995年に発生した兵庫県南部地震では地震直後、どの程度の地震がどの地域を襲い、どのくらい被害が出ているかというのはすぐにつかめませんでした。時間を追うごとに被害の情報が入ってくる形で、死傷者の数もどんどん増えてきて、建物が倒壊している、それから燃えている、そういった情報が後から後から入ってきましたが、その対応がなかなかつかず、救援活動についてもかなり難航して、多くの犠牲者を出すことになってしまいました。
緊急地震速報システムの利用も地震計の重要な活用の方法の一つです。これは地震計ごとにリアルタイムで地震の大きさ・距離・方向などの震源地情報を計算できるようになり、実現した技術です。皆さんもご存じのように、今では震度5を超えるとNHKや各テレビなどで震度が放映されることになっています。学校でも訓練で使われたりしているかと思います。イッツコミュニケーションでもケーブルテレビを通じて、震度5を超えれば多分、通報されるというようなシステムになっていると思います。
そのほかでは地震発生機構の解明という面で、大学研究機関による地震観測網を作って展開をしています。地震がなぜ、どのように起こるのかを研究することが非常に重要で、そのために地震計が使われています。多分、究極は地震予知だとは思います。地震予知というのは現在では難しいということになっていますが、これから地震計で観測することで、いろいろな新しい現象が見つかってくれば、少しずつ地震予知に向けて研究が進んで、分かってくることがあるかもしれません。
地震計の将来
それでは地震計の将来について少し考えてみたいと思います。地震計は日本では、イギリスの地震学者ニルムにより、1894年ごろに作られたと言われています。既にお話ししたように、そのころのものはバネにつるされた重りを機械的に拡大して記録するものでした。本格的な地震計、強震を測る地震計ですね、大きな強い地震を測る地震計は1950年代に入ってから、東京大学や民間のメーカーなどが一緒になって、スマック型と呼ばれる地震計が開発されました。最近のような地震観測網の体制ができたのは、やはり兵庫県南部地震以降になります。この地震計、将来はどのようになっていくのでしょうか。
私どもを含めた地震計メーカーは、より良い性能の地震計、それから価格の安い地震計など、それぞれ特色を持った地震計を開発してきています。例えば、より小さな地震が測れる、または大きな地震が測れる、できるだけコンパクトにする、電気をできるだけ消費しないで観測することができるとか、いろいろ目指した開発をしてきております。ですが、まだまだ地震計も数が少ないと私たちは考えています。地面の観測については、ある程度整備されてきていますが、地中やビルなどの構造物への展開、設置というのは、まだまだ数が足りないと思っております。将来、皆さんの家庭に1台地震計が付いて、それがインターネットを介して集まって、地震情報を共有することができるようになるかもしれません。私たちの家庭や学校やオフィスに地震計がついてくると、身近にあるということで、地震を意識する機会が増えると思います。さらには防災に対する意識、一人一人が自分でどう対処するか、ということがやはり大事です。一人一人が生き延びてこそ減災、被害を軽減することができるのだと思います。
私は今回、地元のコミュニティーの防災セミナー、青葉コラボレーションフォーラムに参加させていただきましたことがきっかけで、ここに出させていただきました。青葉コラボでは地震計ではないのですが防災用の啓蒙教育グッズ、”ぶるるシリーズ”というものを紹介しました。これは名古屋大学の福和先生に、いろいろご指導いただきながら、いかに建物が揺れるか、揺れ方についてどう違うかを皆で体験して、目で見て分かるようにしたものです。防災を考える際に、そういうところから入っていこうということで、製品を作って販売したり、普及活動もしております。
このようなことを通して皆さん一人一人、地震に対する意識が高まる、そして少しでも地震災害が軽減されるような、そういう世界ができることを願って、私たちはこれからも地震計開発について進めていきたいと考えています。