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防災インタビューVol.49

災害看護の現状と今後の在り方について考える

放送月:2009年8月
公開月:2010年7月

小原 真理子 氏

日本赤十字看護大学小原教授

自分自身も被災者として

被災地にはたくさんの病院があり、その中で病院によっては、その病院自体が破壊されたり、看護師自身もけがをしたり、病気になったりするということがあります。大半の看護職は、自分の家族がけがをしていないか、無事なのか、という不安を抱きながら、自分の守らなければいけない患者たちの安全確保のために使命を果たしています。被災病院の看護師は、そういう活動をする中で達成感もありますが、また反対にストレスな状況でもあることは事実です。その中で、いろいろなエピソードがありますが、1つには、師長とスタッフの人間関係がもともとあまりよくなかったのが、その被災によって修復されることもある場合と、また反対に、関係性が悪かったのがそのまま尾を引いて、「あなたたちは大変だったけれど、よく頑張ったわね」というねぎらいの言葉でもって、ある程度看護職は救われるところがあるのですが、自分は師長から、そういった言葉は言われなかった、ということで、ますます関係性を悪くしたりすることがあります。いろいろな関係性の在り方が、看護職のストレスを倍化させてしまう、ということもあるようです。
ですから、そういった被災時のことも踏まえて、私どもは病院の防災マニュアルの作成については、設備的な点や体制づくりも重要で、すべて網羅していかなければなりませんが、その中で「お互いに助け合わなければいけない」「お互いにねぎらうこと」というのもマニュアルの中に落としこんでいくことが、病院が復興していくためには大変重要だと思っています。
ある看護師は、被災した時にたまたま実家に帰っていて、道路が寸断したために病院に戻れなかった際に、看護部長から「あなたはそこでおうちの方をお世話していていいんですよ」と言われました。2週間後にやっと病院に戻れた時に、皆大変な時期を一致団結して乗り越えて、皆ハイパーテンションになっていて、自分はそこに居なかったためにそこに入っていけず、その気持ちを言えないままずっときてしまったということで、いろいろなセミナーの時にそれを語って涙を流していた看護師もいました。ですから、そういったいろいろなエピソードを、ある程度大切にして、そういうこともマニュアルに落としこんでいくことは必要ではないかと思っています。

日本と海外の災害看護のかかわり方の違い

私は日本の被災地だけでなく、発展途上国の復興支援にも関与したことがありますが、その中で、看護師たちの災害看護のかかわり方について違いがあるように感じられるところがありました。まず日本の看護職の場合、特に災害拠点病院と言われる病院の看護師たちは、参集制度があって、災害時に例えば「震度5強の地震があったら全員参集する」という、病院としての1つのルールがあります。災害看護で研修に来ていた外国の看護師たちに、そのようなルールがあるかどうかを聞いてみると、「ある」と答える看護師はあまりいません。というのは、病院の防災マニュアルの中にそれが示されていないということだと思います。それなので、被災時に病院に来なかったからといって責められるわけでもないようです。ただその看護師たちは、自分は何もしないというわけではなく、自分の地域の中で、けがをしている住民に対応しており、自分が行ける状況になれば勤めている病院、診療所には行くけれど、何が何でも何時間もかけて日本人のようにそこに行く、というのはないようです。日本では、病院の仕組みとして求められているということもあるとは思いますが、日ごろからの看護職としての使命感なども関連していると感じることはあります。
国によってだいぶ違いますし、宗教によっても違います。宗教を持っている方々の強さがあります。特にイスラムの方たちは、一緒に仕事をして感じましたが、アラーの神に祈ることによって、自分の安定を得ていて、アラーの神を恨むということはないのです。スマトラでの20万人ぐらいの方が津波に流されたときも、神の与えた試練として受け止め、恨むということは聞いたことがありませんでした。

日ごろからの連携の大切さ

災害看護においては、被災した病院の中で自分たちの患者の安全を守って被害を少なくしていく、ということが非常に大切です。また被災地に救護班として行って、避難所などの地域に入って、被災者の生活の視点からの災害看護活動をすることも大変重要なことです。そのためには何が必要かといいますと、やはり日ごろから地域の方たち、特に自主防災組織の方たちと連携を取ことによって、災害時の対応をする際に、減災に結び付く行動ができるようになっていくのではないかと、今までの活動から確信を持っています。ですから、病院と地域の自主防災組織、そして私はたまたま看護系の大学ですが、そこの地域にある大学など、防災に対して、それぞれの専門的な知恵や技を持った三者が一体になることによって、その活動が防災、減災に生かされていけばいいのではないかと考えています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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