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防災インタビューVol.79

空洞探査、地雷除去の経験を生かした防災そして減災

放送月:2012年9月
公開月:2012年11月

冨田 洋 氏

ジオ・サーチ代表取締役社長

震災前にやるべきこと

今考えると涙が出るほど悔しいことがあるのですが、それは震災前に、もっと手を打っておけばよかったということです。例えば、吸い出しが起きている護岸に対して、事前にコンクリートを埋め込んでおけば、あのような被害は起きなかったと思います。また下水も、老朽化している所から優先的に新しい材料で組み替えておけば、あのように陥没も起きなかったはずです。地下鉄だってそうなのです。

東北で亡くなった方々の悔しい思いを無にしないためにも、震度5以上の地震が起きた際に、埋め戻し土を使った所は弱いという地中の危険を知り得た今、これを何としても生かさなければいけないと思っています。当然、東北でもわれわれもベースで継続的にやっていますが、一番は、これから来る首都圏直下型に備えていく必要があります。私の会社は大田区にありますが、大田区は23区の中で非常に燃えやすいということで、危険地区に指定されてしまっています。今までの調査のスピードの6倍、価格も半分ぐらいでできる、このスケルカの技術を使って、燃えやすいといわれている道路は大丈夫なのか、避難場所や病院を安全につなげるのかどうか、被災した際の避難ルートや学校の安全性、輸送路などを全部調べたらどうかと、大田区の区議会に提案をしました。震災の1年後に提案をして、7月から具体的にやっており、現在はいい結果が出ています。

震災などが起こった場合の避難の際に重要な道路は、救急車や消防車が通るための大切な道路でもありますが、そのほとんどが実際には陥没の危険性が非常に高い所でもあります。私はこれまでに道路の維持管理の観点で、日本中で空洞探査をやってきましたが、一番空洞がいつも多発しているのは、首都圏の地下鉄周辺です。これらの場所は、たくさんの人が利用するので、何か起こった際は大変な被害につながります。

まずはどこが危ないのかを知って、次にその対策を練るということが一番重要になってきます。

大災害が起こる前に

私は生まれが神戸で、阪神大震災で親戚も皆、被災しました。何よりも神戸は貿易でもっていた地域で、私の親類も汽船会社に関係していましたが、港が使えなくなって産業が死滅してしまいました。全部、荷が横浜や韓国へ逃げてしまって、一度逃げた荷は戻ってきません。被災して命がなくなるのもそうですが、産業が死滅してしまったら、仕事も暮らしもなくなってしまいます。その観点から言えば、東京の場合も港湾地域で重要なプラント、京浜工業地帯などもたくさんあります。横浜は貿易港としては40万人の雇用をしていますし、経済規模も3兆円を超えるだろうと思います。名古屋の経済規模も5兆円で、ポート・オブ・ジャパンと言われていますが、東海、東南海の震災が起これば、このゾーンに入ってしまっています。

これまでに私は港湾をいろいろと調べてきましたが、古い港湾は皆すかすかです。そこをとにかく早く応急手当てをして、老朽化している所は吸い出しを受けて液状化しているわけですから、コンクリートを流し込んで、これ以上流出しないように固めることが大切です。

それからもう一つは、そこへ行くルートを確保することです。そういうルートは埋め立て地ですから、もともと弱いわけです。道路をしっかりとさせることも重要ですが、落ちるという想定で考えていく必要もあります。これは超アナログなのですが、地下鉄周辺も落ちますので、そうなった場合は、そこでの病院、消防署、警察を、落ちるという前提でどうするのかを考えておく必要があります。

今回、災害被災地で一番活動を広範囲にやっていたのは自衛隊です。自衛隊はものすごいトラック、4WDのかなり大きいタイヤを持っているから、段差を乗り越えることができました。普通の街乗りの車は段差が越えられないので、走ることができません。ですから段差を回避するための鉄板なども用意しておくことが必要かと思います。また、あまり想像できないかもしれませんが、今回の被災地で一番問題になったのは停電です。夕方になると、外灯も切れてしまっているので真っ暗になってしまいます。そういう時に、道路に穴が開いていたら大変危険です。また停電になると信号も全部止まってしまうので、今回は全国の警察官が交通整理をしました。

減災のための備え

まずわれわれは「今はもう平常時ではない」という意識を持つべきだと思います。例えばついこの間も、たまたま日本には上陸はしませんでしたが、910ミリバールという想定外の台風が来ていますし、最近の雨は異様です。その上、東京都における空洞の発見数が、2003年、2004年ぐらいから急増してきています。これは下水の劣化から土砂が流出するというのもあるのですが、やはりゲリラ豪雨が多発してきているということもあります。2010年、2011年の地震発生率というのは、格段に多くなっています。

これはどういうことかというと、もう完全に日本は災害の世紀に入ったと考えるべきなのではないかと思います。そういった意味でも、必ず襲ってくる自然災害に対して、どう備えるかが重要になってきます。まずは日ごろから弱点を早く見つけて、被害が極小になるようにしていかないといけないと思います。防災といっても災害は防げませんので、減災が必要です。事前に防災を考えて、見つかった所を減災のために早く応急手当てをするということです。虫歯になったら、金歯を入れるよりは何か詰め物をするというぐらいの程度で、とにかくそこら中が老朽化ラッシュであり、自然災害の脅威が迫っていますので、これにどうやってわれわれは知恵を出して生き延びるかというのが何よりも重要です。

これに備えるためには、実際のインフラの管理者では判断ができません。これは市長または知事、そこがヘッドクオーターになってやっていかないといけません。これからは平常時ではなく、ある意味、戦闘状態になっていきますので、そういう時はトップダウンで指令が飛ぶように、危機管理官、防災をメーンにした組織体制づくりが大切です。かつてアメリカにFEMAというのがありましたが、大統領権限をもって災害に当たる、そういう体制づくりが必要です。災害は国全体というよりも、それぞれの地方自治体で起きますので、政令都市を中心にして、そういう体制を整えていくことが重要です。例えば首都圏で言えば、東京都を中心にして23区と連携して、いつでも協力し合えることが大切ですし、もう一つは情報の共有が重要だと思います。特に「ここは危険だ」という情報は、どんどん開示しておくことが必要です。

この情報の開示については、指示系統がまだまだしっかりしていないと思っています。これは伝えるべき、これは伝えないべきという判断ができる、しっかりとしたヘッドクオーターから指示徹底ができるようにしない限り、うまくいきません。東京電力の事故の際も、そこがしっかりしていない状況でした。われわれは軍隊活動と同じで、地雷除去で徹底してやっていますから、リスクマネジメントをしっかりしています。われわれも地雷除去をする際には、必ず医師と救急車を手配し、何かあったらどこに駆け込むかを決めておきます。また、何かあったときにはすぐに撤退するというような指示命令系統は、常に非常にはっきりしています。

これからは皆さん自身も、そういう意識を持って行動していくことが必要です。もう一つ重要なのは、人に頼らないということです。自分で自分の身は守る、そして危なかったら逃げる、こういうことが一番だと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。