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防災インタビューVol.83

災害派遣医療 ~災害派遣医療チームDMATの活動を通して考える震災対策~

放送月:2013年1月
公開月:2013年3月

近藤 久禎 氏

厚生労働省DMAT事務局事務局長

現在の被災地の状況

福島の方々で自分の自宅に戻れない方々が、まだ非常に多くいます。3県合わせて32万人の方がこの震災で引っ越し、もしくは避難を余儀なくされており、いわば難民が日本の中で発生しているような状態にあるのが現状ではないかと思っています。そして、それに対しての支援が非常に今、細くなってきているのではないかと思われます。

例えば市町村の保健師さんの活動を考えてみると、従来は自分の町や村のエリアで健康管理をしていればよかったのですが、現在はそれが非常に広くなってしまっているわけです。一つの村でも、福島、南相馬、郡山、会津、白河、いわき、場合によっては関東まで避難しているような所があり、それら全部を回らないといけないということで、非常に過度な負担がかかっています。その一方で、避難生活者にも健康上のリスクが非常に上がっています。そのような状況で、最前線に立つ町村の保健師さんたちが、非常に疲弊してきているのではないかと思っています。我々はそれをフォローするための活動を行っており、全国的に有志を募りながら、保健師の仕事である健康診断や健康相談を助けるための人材を派遣しています。また福島医大にかなり立派な被ばく医療や復興支援のための施設が出来上がりつつありますので、そこで本当の意味で最前線の町村の役に立つようなコーディネーションを今、我々はやっているところです。

被ばくによる健康被害については、私見としては今の被ばく線量で被害が出てくるということはあまり考えなくていいのではないかと思っていますが、出てこないかどうかということは誰も確実には言えないことなので、健康調査を続けていくのは非常に重要なことではないかと思います。ただその一方で、災害関連死によって七百何十人の命がもう既に失われているということも、決して目をそむけてはいけない事実です。そういう意味では「避難したことがよかったのかどうか」という議論も長期的にはしていかなくてはいけないと思いますが、ただ、今の時点でやるべきこととしては、災害の関連死と言われているような七、八百人を超える方々を、これ以上増やさないようにするための活動を今後、我々がやっていかなくてはいけないと思っています。

病院を移動することによって、あるいは避難することによって体力が弱ってしまうこともありますので、飯館村には、残ることを決断した老人ホーム、老健施設もあります。これは、動かすことによって、かなり多くの命が失われてしまうだろうという判断によるものだと思います。我々としては、どちらを応援するというわけではありませんが、残った方々も安心して暮らしていけるようなサポートをしていきたいと思っているところです。

今後の大震災の対応について

東日本大震災の後、巨大震災のリスクが全国的に高まっていると言われています。海溝間の地震と言われるような南海トラフの地震、もしくは首都直下の地震に関しては、むしろ東日本大震災以前よりもリスクが上がっていると言われています。また当然この神奈川県横浜市も首都直下地震の被害範囲に入っておりますし、また断層型の地震を考えると日本全国どこで地震が起きてもおかしくないということで、青葉区でも巨大な地震が起きるかもしれないという状況にあるのではないかと思われます。

そのような状況の中で今回の東日本大震災では、阪神淡路大震災に比べて外傷が少なかったという話もありますが、阪神大震災に比べて、はるかに高齢化した社会に起こった地震であるということが大きな特徴ではないかと思っています。

高齢者が避難所で生活すると、すぐに生活不活発病になってしまうということがあります。つまり昨日まで家では歩けていたのに、避難所生活が1週間、2週間たつと歩けなくなってしまうという状況が随所に起こってしまったということが、この東日本大震災の特徴ではないかと思っています。我々DMATとしても、このようなことを防ぐために、しっかり連携を取って対策をしていかなければならないと思いますが、地域の中でも災害弱者と言われるような方々を支えるための仕組みが必要ですし、全国的に言うと、リハビリテーション関係者の方々に早期に被災地に駆け付けていただくという仕組みが、まず必要なのではないかと思います。

また、日本の避難所は畳の生活が基本になっているので、ブルーシートを敷いて毛布を出して、そこに寝るというような形になっていますが、高齢化社会においては、このような状態では、すぐに歩けなくなってしまいます。そういう意味では、ベッドがあるような福祉避難所というのも公的に整備されてくるというように聞いていますが、それは福祉の話だけではなくて一般的なレベルまで広げていかないと、今後そのような災害関連死、生活不活発病の増加は防げないのではないかと思っているところです。

我々も災害急性期に現地に入って調査活動をしながら、まず指揮系統、調整系統を整えます。そして整えた調整系統のもとに、次々にそれぞれの支援が有機的に連携して入ってくるような災害対応を今、目指しています。それと同時に地域の備えとしても、自分たちが本当に避難するときに「あの避難所でどういう生活ができるんだろうか」ということを考えた上で、個々の避難所の質の向上を考えていかないといけないと思います。床の生活ではなくベッドなどを日頃から小学校に備蓄しておくようにしないと、実際には避難所での生活は難しいと思います。なかなか大都会では、そのような対策も難しいのかもしれませんが、高齢化社会を迎えている今の災害対策においては、そういうことも考えながら地域においても準備をしていくことが、非常に重要になると思っています。また、避難所のアメニティーということで考えると、トイレの問題も大きいです。避難所には和式のトイレが多く、仮設トイレもほとんどが和式だったということも、非常に大きな問題点だと指摘されています。仮設トイレもどんどん新しいものが出てきていますので、いつか必ず起きる災害に備えて、実際に自分がそこで生活することを考えながら、そういう視点で自分の地域をもう一度見直していただくことが、次への備えにつながるのではないかと思います。

※今回のインタビュー記事は、東急電鉄の協力のもと、「FM salus」が過去に放送した『東急建設 presents 「サロン・ド・防災」』の内容を、一部改定して掲載しています。