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防災インタビューVol.103

防災の次世代を担う人材育成

放送月:2007年2月
公開月:2014年11月

池上 美喜子 氏

(財)市民防災研究所理事、東京YWCA副会長、地震対策、防災

大地震に遭遇する前に

大地震に遭遇する前に、まず必要なことは「身を守る」ことですが、住まいを安全にすることが地震対策の第一歩ですので、自宅の耐震診断を受け、必要な補強をしておくとよいと思います。特に1981年6月より前に建てられた家屋は要チェックです。1981年6月の建築基準法の改正により耐震基準が見直されたため、それ以前に建てられた家屋は要チェックということです。2004年の新潟県中越地震では、負傷原因の約4割が家具の転倒落下などによるもので、負傷者の約6割は60歳以上の人でした。寝室や居間など一日の中で多くの時間を過ごす部屋から重点的に、家具の転倒防止対策を立てましょう。現実に、立っていられないほどの大きな地震、震度5以上の地震が起きたら、頑丈な机の下に潜るなどして、まず身を守ることです。揺れている間に家族がいる隣室に行こうとしたり、ガスの元栓を閉めようとして動いたばかりに、けがを負うといった例も少なくありません。震度5以上の揺れが発生すると、ガスはメーターに内蔵されている安全機能、マイコンメーターが作動して自動的に停止するので、使用中のガス栓は揺れが収まってから閉めてください。ただし、震度5未満の揺れのときにはマイコンメーターが作動しないので、そのときには元栓まで立って行かれるので、自分で閉めなくてはいけません。ものすごい揺れで、そこまで行くのが大変というときにはマイコンメーターが作動しますから、そこまでわざわざ危険を冒してまで行く必要はないということを、しっかりと押さえていただきたいと思います。また、避難などのために家を離れるときには、地震で遮断されていた電気が復旧したときに、破損した電気コードから引火する恐れがあるため、必ずブレーカーを切り、ガスの元栓も閉めることを忘れないようにしてください。

次に「地域力が二次災害を防ぐ」というお話ですが、大地震発生直後は隣近所の救助と消火を行うなど避難せずに、自分たちの地域は自分たちで守ることが大切です。近隣同士の連携は被災地を狙った盗難、放火などの犯罪の防止にも役立ちます。普段から近所付き合いを密にしたり、防災訓練やお祭りに参加したり、市民同士でつくる趣味グループに入るなどして、日頃から地域の防災情報を収集しておくとよいと思います。また、支援の必要な高齢者をリストアップした防災マップを作成している自治体もあるので、必要に応じて市町村の防災担当部課に問い合わせてください。電気や水道などが遮断されても家に倒壊の危険がなければ、避難所ではなく自宅で過ごすほうが環境も激変せずに良いと思います。大災害の時の仮設トイレは数に限りがありますから、自宅のトイレやポータブルトイレに大きなごみ袋をかけ、さらに新聞紙を敷いた袋をその中に入れて使用し、使用後の袋には消臭剤をかけて口を縛り、ごみ収集時まで家に置きます。その他、外出時にはペットボトルの飲料水や軽食、IDカードとして名前、生年月日、住所、電話番号、血液型、緊急連絡先、服用薬、離れて暮らす家族の連絡先などを記入したものを、常に持ち歩くことをお勧めします。

防火防災功労賞について

東京消防庁が「地域の防火防災功労賞制度」を3年前から発足しました。これは東京消防庁管内で行われている取り組みをピックアップして、良い取り組みには賞を差し上げようという制度です。最近は企業1社、自主防災組織1グループでの取り組みは少なく、小学校や自主防災組織、消防署、地域の企業などが連携して、いろいろな取り組みをしています。今は「連携」がキーワードで、連携したほうが大きな取り組みができるので、そのような動きが最近、顕著にみられます。私は初年度から審査員をしていますが、年々応募数が増えまして、審査員泣かせといったところです。その中で今年、賞を取られた数例をご紹介したいと思います。

一つは「東京駅周辺防災隣組」で、これは東京駅、有楽町周辺地区の帰宅困難者対策地域協力会が発足して、周辺にある約4千の企業のうち62社が「東京駅周辺防災隣組」に登録をしたという例です。全国初の外国人対象の帰宅困難者避難訓練の実施をしたり、隣組の活動はNHKテレビ番組の「難問解決!ご近所の底力」において取り上げられまして、波及効果を促しています。これはビジネス街らしい防災、事業所間の共助をテーマに頑張っている例です。

もう一つは江東区大島西中学校が「防災に立ち向かうアスリートを育成する」ことを企画立案して、総合学習の中で防火、防災、救命の基礎的な知識と技術を体得したという例ですが、将来の防災を担う中学生が主体となって企画立案した消火訓練、倒壊建物からの救助訓練、応急救護訓練などを実施しました。中学生を中心に、消防署、消防団、東京消防災害時支援ボランティア、町会、災害協力隊などが訓練指導などを積極的に行っています。ここのキーポイントは「地域が学校を守り、生徒が地域を守る」ことをキャッチフレーズにやっていることです。今後も2年生には消火救助訓練を、3年生には命の大切さと救命処置を、年間計画に定着させていく方針だということです。

三つ目が墨田区の太平1丁目町会で毎年9月1日に、関東大震災の惨事を忘れることなく後世に語り伝えるために、当時の非常食すいとんを味わう集いを40年間継続しているという例です。ここでは車椅子、リヤカー、担架、おんぶひも、避難住民識別カードを常備管理しており、消火器の設置場所を書いた防災マップを各家庭に配布しています。家庭から50メートル以内の範囲に消火器を設置しているということなので、大変素晴らしい町ではないかという気がしています。小学校単位で組織される地域防災活動拠点会議は22の町会と自治会から成っていますが、年に2回実施して、区、消防署、支援者を確保するために青年団体が入って連携しています。この青年団体の防火防災部員は20~40歳代の青年層で編成され、全部員18名が救命講習を受講して、防災訓練では率先して住民指導に当たっています。

四つ目は、上十条5丁目町会で、災害の多発期の12月、1月、2月の各10日間ずつ「全員夜警」をキャッチフレーズに、毎回約800名が参加して実施しています。毎年2回、町会内の児童約100名も「子ども夜警」を実施しています。

五つ目は、石川ガスケット株式会社の千住工場の取り組みです。これは千住工場、消防署、千住大川町西町会、グループホーム千住大川が合同で、地震発生を想定した初期消火、応急救護、炊き出し訓練に重点を置いた防災訓練を実施して、安全で安心して暮らせる町づくりを目指している例です。毎年夏の足立区の花火大会の消防特別警戒では町会と連携し、千住工場が動力消防ポンプを配備しています。このように地域の企業が率先して自分のところにある資機材を提供して、安全安心町づくりに貢献している例がたくさん見られます。荒川に面した地盤の低い地域で、道路狭窄、木造密集地、地域の高齢化も顕著な所ですので、災害時の応援協定を締結したことにより、会社全体の防火防災に対する意識が高まり、社員の応急手当てなどによる救命功労など、善行の相乗効果があったということです。

六つ目が国分寺市の高木町自治会防災部の例ですが、これは塀づくり憲章を策定するなどの施策を展開して、ブロック塀などの重量塀を生け垣に替えて半減させたという例です。また、防災子ども広場、ファミリー広場をミニ運動会形式で実施して、より実践的な防災普及を目指して、家族の誰もが緊急時に対応できる知識、意識を育てているということです。また、町歩きによって危険な場所の点検や防災施設の確認を行って防災マップを作成し、全戸に配布しています。「防災まちづくり通信」を1981年より年間6回発刊するなど、住民に正確な情報を提供しています。

七つ目が世田谷区の桜ケ丘1丁目町会です。長年の夜警活動に加えて「災害時高齢者助け合いネットワークづくり」を進めています。これは援護者と要援護者が1人対1人であることから、災害時の行動を効果的にするために、援護者は要援護者を定期的に訪問して、お互いの信頼関係を築いているということです。これがとても大事なことです。私たちは、人の顔が見える関係が災害発生後とても大事だと言っておりますが、これを実践している例です。個人情報保護を順守して、要援護申請者の承諾書を基に登録制として情報管理の徹底を図っています。

そして八つ目。これが、私が一番強調したいところですが「深川の災害時支援ボランティア」の例で、聴覚障害者が災害時支援ボランティアに登録して、助けられる側から助ける側に回ることによって防災意識の向上を図っているという例です。これは、たまたま私が以前に関係したグループですが、積極的に防災訓練、区民祭りなどで防災広報を行って交流を深めているということです。手話通訳者もボランティアとして登録しており、手話カードを作成して、カードを活用した訓練を実施するなど、確実に防災の輪を広げています。

このように、自主防災活動の維持、強化を進めていくためには、教育、PTA活動、福祉活動、環境保護活動、青少年健全育成活動、防犯活動、地域のお祭りなどの自主防災活動など組み合わせて、日常性を大事にしながら、しかも楽しみながら実践していくことが大切だと思います。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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