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防災インタビューVol.117

安全保障と防災

放送月:2015年6月
公開月:2016年1月

渡部 恒雄 氏

東京財団上席研究員

非伝統的安全保障 ~テロや自然災害に備える~

伝統的な安全保障の課題とは「国と国が戦争にならないように」ということです。例えばある国が軍拡をしていて、その軍拡に対して軍事で対抗しながらバランスをとるとか、例えば相手の国がミサイルや戦闘機で攻撃してきたら、どう防ぐかというのが伝統的安全保障の課題です。それ以外のものを「非伝統的安全保障」と言っています。どういうものがあるかというと、まずテロです。相手が国ではなくて民間組織によるもので、かつて日本でも経験したオウム真理教のテロの場合がそうです。これは戦争ではなく、相手はテロ組織です。そして最近、非伝統的安全保障の中で重視されているのが、実は災害に対応するための災害支援で、安全保障の中に入っています。特に災害は規模が大きくなってきていて、フィリピンなどの台風の被害や、東日本大震災の津波の被害などがそうですが、通常の災害対策では対応できないような大規模の災害が起こった際には、安全保障の一分野として軍隊も動かしながらやるしかないということで、実はそういう概念が今出てきています。

私の祖母をはじめ高齢の方は、「関東大震災でやっと生き延びた」「東京大空襲は大変だったけれど、生き延びた」とよく話されます。関東大震災と東京大空襲の両方を生き延びた方は結構多いと思いますが、関東大震災は災害で、東京大空襲は戦争です。しかし、被害にあって逃げている人たちにとっては、どちらも一緒です。火事があって、崩れてくる建物から必死で自分の身を守って逃げるのは、災害でも戦争でも同じ部分があるわけです。違いがある部分ももちろんあります。例えば国の対応はだいぶ違って、敵が攻撃してくるのであれば、それを防がなくてはいけません。しかし、それと同時に国がやることはいっぱいあって、火事を消し止めたり、逃げている避難民を誘導したり、あるいは逃げた人たちに水や食糧を補給したりするのは一緒です。現に東京大空襲の時は、日本はすでに戦闘能力はなく、全然役に立ちませんでした。従って、とにかく自分たちで身を守って逃げるしかなかったわけです。これは地震でも同じです。

このような、実際の対応が同じ部分は一緒に準備ができるわけです。そういう発想は、結構重要で「戦争は起こらないかもしれないけれど、災害は起こるかもしれない」と思う人も多いかと思います。もちろん大国同士の戦争というのは、あまり起こりにくいのは間違いないのですが、常に備えておかなければいけないという点では、災害も戦争も同じです。国が準備をするのももちろんですが、区や市町村など、地域住民に直接サービスをしている基礎自治体や地域コミュニティも、何かがあったときにどうするかをきちんと考えておかないといけないと思います。

地域でやるべきこと、国がやるべきこと

第二次世界大戦の時にも、防空演習をいうものをコミュニティでやっていました。空から空襲、空爆をされたときにどうするかという演習を地域ぐるみでやっていたわけです。今も多分、災害対策を地域ぐるみでやっていると思いますが、これは非常に重要なことです。

一方、国がやるべきことが一つあります。これは安全保障上、非伝統的安全保障でも伝統的安全保障でも、国が考えておく必要があることで、「リスクヘッジ」だという話です。「リスクヘッジ」とは何かというと、最悪なときに備えて何かしら準備をしておくことです。ヘッジとは、最悪になっても最悪にならないようにダメージを少なくするための措置ということですが、都市の機能を分散しておくという、バックアップ機能と同じようなものです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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