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防災インタビューVol.117

安全保障と防災

放送月:2015年6月
公開月:2016年1月

渡部 恒雄 氏

東京財団上席研究員

都市の機能のバックアップ

テロや戦争はあるかもしれないし、ないかもしれませんが、一番ありそうなのは災害です。その際に、首都圏に機能を集めすぎていて実際にやられたら大変なことになります。東日本大震災の際は大丈夫でしたが、首都直下型地震が起きたり、首都圏がテロで攻撃されたとしたら、どうしたらいいのでしょうか。日本の国としての機能をうまく分散させておかないと、いざというときに機能が維持できなくなります。以前に首都機能移転という話もでていましたが止まってしまっています。これは、コミュニティが考えることではなく国が考える話ですが、現在東京に集中している機能をバックアップしていく必要があります。経済的な問題もあるので、首都機能全部を分散させると経済的にマイナスになってしまうので、現在はほとんど首都圏に集中していますが、そういうことも考えて事前に国が対策を取っていかないといけないと思います。

HA/DR ~人道支援と災害救助~

「HA/DR」という言葉について、お話ししたいと思います。「HA」というのは何かというと、ヒューマニタリアンアシスタンス、つまり人道支援です。「DR」のほうはディザスターリリーフ、これは災害救助です。ですからこのHA/DRというのは、人道支援、災害救助のことです。HA/DRというのは世界的にも、非伝統的安全保障の用語にもなっており、今安全保障関係のシンポジウムがあると、「HA/DRの協力をどうしますか」という話になって、日本もASEANという東南アジアの国との協力の中で、またNATO北大西洋条約機構というヨーロッパとアメリカとカナダでできている安全保障機構において、「日本もHA/DRで協力しましょう」という話に今なっています。ネパールの地震の際にも、日本は素早く協力しています。

このように、世界中の国でそういうことが起こることを前提に常に備えていて、自分たちも助けてもらう代わりに相手にも必ず助けに行くという体制ができています。これは大変安心感があります。また、この安心感が安全保障という部分でも非常に重要になっています。日米同盟において日米安全保障のガイドラインを強化して機能を高めようという話もあります。これ自身はそんなに悪いことではないのですが、あまり日米が強くなりすぎると、中国が心配するということもあり、それはそれで「安全保障のジレンマ」となります。本当は日米同盟において、別に中国を攻撃しようなんて考えていないのですが、何となく外から見ていると「俺たちを囲い込んでいるんじゃないか?」という誤解を受けたりしてしまうので、それに対してちゃんと、「そうではない」ということを伝えて、信頼醸成をする必要があります。

軍同士が信頼醸成をするためには、一緒に行動して、手の内を見せあいながらやっていくことが必要です。そのための一つが、人道支援災害救助です。こういうものであれば、相手も国ではないし戦争でもないので、より協力しやすいですし、協力した相手にも非常に感謝されます。現に今アメリカと日本、アジアの他のASEAN諸国や中国、韓国などでも、一緒に行動して救援をしています。このように、HA/DRというのは、自分たちの国を助けるだけではなくて、よその国をも助けるというものですが、それをやることによって、実は安全保障上不要な対立や警戒感などを、うまく削いでいくというようないい効果もあります。

実際に軍事演習などをやるときにも、災害協力を考慮して多国間で軍事演習をやっているのですが、例えば日米と中国が一緒にやっているケースも結構あります。軍事演習というと攻撃的な話になりますが、平和的に訓練ができるということはとてもよいです。

HA/DR、要するにこれは軍事力を使って災害救援をするということで、しかも国際的に皆で協力して多国籍の枠組みを使ってやるというのが今一つのトレンドになっているわけですが、まだまだやらなくてはいけないことがたくさんあります。ネパールの地震もそうでしたし、日本の東日本大震災もそうです。これからも、恐らく地球上の温度が上がってきて、気候変動が進んでいきますし、大型の台風、地震や津波などの頻度が増えてくると思います。

しかも大規模な災害の場合は、東日本大震災で見たように、一つの国だけでは対処できないものも多くなってきています。またそれとともに、安全保障を考える人間というのは最悪を常に考えていますので、災害につけこんでテロリストが活動したり、災害のタイミングで国際紛争が起こるということも可能性としては考えて、そうならないようにベストを尽くして、頭を使って、われわれが平和に安全にそして災害があってもできるだけ被害を少なくするように対策を考えていきたいと思います。そのためには、ますます世界中の主要な国がみんなで力を合わせて、災害支援HA/DRをどこの国に対してもやっていくことで、国家の信用も出てきますので、まずは、HA/DRを推進していきたいと思っています。

今特にイスラム国という過激派集団が問題になっていますが、中東の中でもHA/DRをやっていくための枠組みをつくるという動きもありますので、できればアジア太平洋あるいはヨーロッパなど、比較的まとまりがいい所で枠組みをつくって、アフリカや中東にも広げていくことも大事だと思います。現にこれは災害だけではないんですが、国連PKOという平和維持軍を送って、紛争を解決して、しかも紛争の後に再発しないように活動していますし、日本も自衛隊をアフリカなどにも送っています。彼らは、災害があったときもきちんと対応していますし、道路を直したり、飲み水が確保できるようにしたりというような、地域の復興や開発のための援助もやっています。貧しいままであったり、災害にやられたままであったりすると、また対立が続いて紛争が起きることにもなるので、少しでもその地域が豊かになるように彼らは活動をしているわけです。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

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