1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報
  4. 防災インタビュー
  5. まちづくりと建築土木
  6. 安全保障と防災
  1. ホーム
  2. 東急沿線の地域情報
  3. 安心・安全情報

防災インタビューVol.117

安全保障と防災

放送月:2015年6月
公開月:2016年1月

渡部 恒雄 氏

東京財団上席研究員

オペレーション友達 ~災害協力をする軍隊~

東日本大震災の時に、ハワイに本部を持つアメリカの在日米軍が、自衛隊と一緒になって「オペレーション友達(友達作戦)」というのを展開して支援してくれました。それまでは、アメリカの軍隊は戦闘するのが本業であって、災害対策というのは本業ではないと考えられていたのですが、ここにきて災害対策の重要さを実感したようです。日本の自衛隊はもともと災害対策を非常に重視して活動しており、自衛隊にとっては非常に重要な任務なのですが、アメリカや他の国の軍隊も災害対策は大切であることを実感し、いろいろな国と協力し合うという動きができてきました。「オペレーション友達」というのは、そういう意味で非常に重要な機会になったと思います。

また、自衛隊の機能や米軍の機能として、どちらかというと戦争をするというネガティブなところだけを見ている人たちがいますが、最終的な目的は住民の命を守ることであり、そのポジティブな機能が注目され出したのが、東日本大震災の際の彼らの活動でした。災害から命を守るという活動を目の当たりにすることができたわけです。私も東北の出身なので、津波の被害にあった被災者の友達の所にお見舞いに行った時に、そこのお父さんに「今まで自衛隊や米軍について、あまりちゃんと考えてこなかったけれど、感謝したほうがいいぞ」と言われました。市民にも軍隊の災害支援の活動の様子が見えてきたということです。このように、軍隊の機能として、災害支援というのは非常に重要なもののひとつです。

安全保障という発想で災害対策をしていくことで、自衛隊や他の国の軍隊の協力を得て、災害対策をしていくという考え方が災害を受けた側にも浸透することと、安全保障のための軍隊や国際紛争の解決の手段である軍隊が、お互いに災害協力をすることで、軍と軍のわだかまりや警戒感を取り除いて、より平和的に持っていくことができるので、この二つの方向性が、今同時進行で、世界で動きつつあります。ここをプロモートできないかなと思いつつ、私はいろいろ講演活動をやっています。

大規模災害の犠牲になっている人たちを、軍隊の機能であるいは自衛隊の機能できちんと助けられるように常に備えておけば、それをやることによって感謝もされるし、相互理解も深まって、紛争や対立の種をなくすことにもなります。災害対策においては、敵がいないので前向きに進めていくことが可能です。例えばこれがテロ対策や紛争予防ということになると、どうしても人間相手に銃を向けなければならないケースが出てくるので、なかなか平和裏にはいかないのですが、災害対策というのはそこが違っていて、いいところだと思います。

安全保障における世界の課題

安全保障の分野で、今の世界の課題は、現在非常に経済的にも軍事的にも強くなっている中国と平和的にどうやって共存していくかということです。特に日本の場合は、尖閣問題をめぐって日中関係が悪化した状況が続いているので、中国との和解が一つ課題になっています。覚えている方もいるかもしれませんが、日中関係がまだ良かった頃ですが、四川大地震があった際に、自衛隊が中国の大陸で一度活躍したことがあります。かつて日本は中国大陸で侵略をしたわけですので、これはなかなかセンシティブな話です。それに対して悩んだ末に、中国側が「四川大地震は大変な事態だし、日本の自衛隊に来てもらうことによって和解にもなる」と思ってくれたのだと思いますが、実際自衛隊員が援助にいきました。彼らは非常に規律正しく、しかも被災者の方に大変礼儀正しく接して、非常にいい関係をつくったということがかつてありました。このように災害対策において、何かあったときにお互い助け合うというのは非常に大切なことであり、日本に何か問題があったときは中国が助けにきて、中国に災害があったときには日本、あるいは日米で助けに行くという関係をつくることが重要だと思います。

先ほど、安全保障と災害対策というのは、実は意外に近づいていると話をしましたが、今ちょうど国会でも安全保障法制の話をしています。このことは、われわれ市民の命を、災害やテロや戦争などから守るためにベストの法律は何なのか、あるいは自衛隊のあり方、国と国の関係のあり方、そういうのをどうしたらいいかということを考えるいい機会になると思います。今われわれもそうですし、子どもやあるいはお孫さんの時代までずっと平和で安全な生活ができるようにするためにはどうしたらいいかということも考えるいい機会になるのではと私は思っています。そのためにも、戦争を経験した方たちの話を聞いたりしながら「自分たちの身を守るにはどうしたらいいか」「国を守るにはどうしたらいいか」ということを常に一生懸命考えることが大事ではないかと思います。われわれ、東京財団でもシンクタンクとして、さまざまな情報をホームページなどでも発信していますので、ぜひ参考にしながら、皆さんにもいろいろ考えていただければと願っています。

※今回のインタビュー記事は、「FM salus」が過去に放送した「サロン・ド・防災」の内容を、一部改定して掲載しています。

会社概要 | 個人情報保護方針